短編小説:サルビア
「誠くんのお母さんってどんな人?」
もうすぐ入籍予定でプロポーズ済みの彼女、愛美は何の抵抗もなく、スマートフォンの画面から僕へと目線を移し、そう言った。「顔合わせが初めましてなんてドキドキしちゃうよ」そう言って屈託のない笑顔を見せる愛美と、母の偽物の貼り付けた笑顔が重なる。「母は良い人だよ、愛美のこともきっと気にいると思う」おそらく嘘ではない言葉を並べるも、愛美は納得していない様子だった。「良い人って、曖昧すぎる表現だな。礼儀に厳しいとか、料理が上手とか、細かい情報とかエピソ