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職業訓練に関わる社会資源とその問題(その3)

職業訓練に関わる社会資源とその問題(その3)
(「精神障がい当事者の就労支援あれこれ」シリーズ#37)

 精神障がい当事者への就労支援の「魅力と課題」を記すシリーズです。

 職業訓練に関する社会資源についてまとめています。今回は、障害者総合支援法における職業訓練施設である「就労移行支援」について、各種データをご紹介します。ちょっと短め。どうぞ。

9.データソースについて

 厚生労働省は毎年10月1日時点で、「社会福祉施設等調査」という調査を行っています(医療機関に対する「630調査」のようなもの)。直近では、令和元年の同調査の結果が発表されています。

 もうひとつ、障害福祉サービスのあり方は、厚生労働省の審議会を中心に、随時検討されているのですが、社会保障審議会障害者部会(第113回)に、厚生労働省障害福祉課が提出した資料(資料1)が、現状と課題を理解することに資する最新の資料の一つです。こちらでは、「国保連データベース(KDB)」が引用されています(KDBの生データは私たちはアクセスできないはず)。

 以下、前者を「調査」、後者を「資料」と記すことにします。

10.就労移行支援の事業所数と利用人数

 「調査」によれば、就労移行支援の事業所数や利用人数は、以下の通りです。

・事業所数(令和元年10月1日時点):3,399事業所
・実利用人数(同上):40,062名
・延べ利用人数(令和元年9月一か月):427,356名
・一人当たり利用日数(令和元年9月平均):10.7日

 また、「資料」によれば、以下の通りです。

・事業所数(令和元年3月時点):3,090事業所
・利用者数(同上):33,548名

 「調査」と「資料」とで、事業所数などに差があるのは、事業所の新設と廃止があり、集計したタイミングによって異なる数字が現れていると推測します。「調査」でも「資料」でも、直近2年ほどは、事業所数も利用者数も減少傾向です(それまでは順調に伸びていた)。

 私の現場は主に東京ですが、営利企業による新規参入がある一方で、小規模の事業所は撤退するところも出始めています。事業所閉鎖による利用者への悪影響(定着支援が途切れてしまうなど)がないことを願うばかりです。

11.従事者数

 「調査」では、従事者数も明らかにされています。

・従事者数(総数):13,884名

 事業所数は3,399か所ですから、単純に割り算すれば、一事業所当たり従事者数は4.08名となります。就労移行支援事業所は、定員20名程度で運営されているところが多いように思いますが、精神科デイケアでは、大規模なもの(定員50名)で、従事者は専任医師1名+専従専門職3名以上ですから、定員で比較すると、就労移行支援では従事者の配置は比較的手厚いと言っていいのではないでしょうか。

12.設置主体別割合

 「資料」では、事業所の設置主体別割合について明らかにされています。

・社会福祉法人33.8%
・営利法人37.1%
・NPO法人15.5%

 直近数年間では、営利法人の割合が一貫して増加しています。

 介護保険制度が整備され、高齢者介護事業が民間に開放された当時も、このような状態であったことが思い出されます。重大な不祥事などもありました(コムスン事件など)が、今日では介護事業の発展に民間営利企業は欠かせない存在となっています。障害者福祉ではどうなるのでしょう。今後の動向から目が離せません。

 もうひとつ、就労移行支援の本分であるところの、「一般就労への移行率」についてのデータは、また次回に。

(つづく)

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