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【シリーズ摂食障害Ⅱ・#4】 「やせ願望」「肥満恐怖」の裏側にあるもの

【シリーズ摂食障害Ⅱ・#4】 「やせ願望」「肥満恐怖」の裏側にあるもの
「サイコロジー・メンタルヘルス&日々のあれこれ」

 摂食障害への理解を深めていく連載は、シーズンⅡに入っています。摂食障害と関連する心理面の特徴について、理解を深めています。今回は、前回に引き続き摂食障害における「やせ願望」と「肥満恐怖」について取り上げます。

5.「やせ願望」「肥満恐怖」とボディイメージの障害


 摂食障害のやせ願望や肥満恐怖の背景には、しばしばボディイメージの障害が潜んでいる、とされます。ボディイメージの障害も、摂食障害の診断には重要な要素となります。

 私たちは、自分自身の“あり様”を、個人的ないしは社会的経験(鏡を見る、他者からのフィードバックを受ける、など)を通して、それなりに理解しているものです。そのうち、自分自身の体型についての理解をボディイメージといいます。

 摂食障害をもつ方は、ボディイメージが、客観的な評価からかけ離れ、どんなに痩せていても「まだ太っている」と認識する傾向にある、というのです。

 主観的体験としてのボディイメージを、科学的な方法で測定し説明することは難しいのですが、ボディイメージの障害は、「体型(身長体重)がほぼ同じ者どおしで並んでいても、自分の方が相手より、より太っていると認識してしまう」といった形で体験されているようです。

6.ボディイメージに影響を与える「内的な知覚」と「外的基準」


 私たちの体は、ゆっくりではありますが、日々変化しているのですから、ボディイメージも日々修正されている、と考えるのが自然でしょう。

 「最近、友人との会食続きで、食べ過ぎた、と感じる日が続いている」とか「ちょっと階段を上っただけで、体が重く息切れするわ」といった、体の内部から伝わる情報で、「最近また太ったな」と感じる(ボディイメージが更新される)のです。

 同時に、最近肥えたのでは、と友人に指摘されたり、体重計に乗ってみたら思いのほか数字が増えていてショックだった、という、外的な情報でボディイメージが更新される場合もあるでしょう。

 このように、私たちのボディイメージは、内外からの情報を受け、日々上書きされているのです。

7.「内的な知覚」のかく乱と「外的な基準」への過度の依存


 次回に詳しくご説明するのですが、実は、摂食障害をもつ方は、この「内的な知覚」がうまく働いていないケースがあることが指摘されています。

 内的な知覚がうまく働いていないにも関わらず、やせを追究しようとすれば、外的な基準に強く頼らざるを得ないことは、いうまでもありません。摂食障害をもつ方が、体重の変動を気にして日に何度も体重計に乗ろうとする方がいるのは、そういう事情からでしょう。SNS上の知人と、体重の増減を競い合うような関係になってしまうことを、治療者としてしばしば経験しますが、これも「内的な知覚」のかく乱と「外的な基準」への過度の依存という視点から理解できるかもしれません。

(おわり)

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