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精神科医療における就労支援(中編)

精神科医療における就労支援(中編)
(「精神障がい当事者の就労支援あれこれ」シリーズ#29)

 精神障がい当事者への就労支援の「魅力と課題」を記していくシリーズです。

 精神障がい当事者の就労支援に関わる社会資源のうち、精神科医療における就労支援についてお話ししています。ではどうぞ。

7.デイケア等における就労支援プログラム(続き)

7-1. 動機づけへのアプローチ

 患者様は、就労に向け「焦っている」、または(理由なく)「自信過剰である」場合があります。「自分は、やる気さえ出せば、いつでもどのようにでも働けるんだ。早く働きたい」といった具合です。逆に、(理由なく)「自信がない」「諦めている」場合もあります。いずれにせよ、就労に向けた動機づけを確かなものとすることが大切で、デイケアを利用し、さまざまな活動や社会的経験をすることで、現実に即した動機づけを獲得することを目指します。

7-2. 情報提供(心理教育)

 就労を目指す上で、患者様が知っておくべき(と思われる)情報をお伝えします。この「情報」というのは、ハウツー的なもの(履歴書や職務経歴書の書き方、面接の受け方など)ではなく、働くことについての「基本的な理解」について扱うとよいでしょう。心理教育で取り上げる主な内容について、列挙しておきます。

・働く動機、働くメリット・デメリット
・一般就労における留意事項(契約関係からくる義務責任、労働者の権利)
・障害者雇用における留意事項(合理的配慮)
・一般就労・障害者雇用と福祉的就労との違い
・「職業準備性」の考え方
・就労を目指す方が利用できる社会資源
・就労支援機関や障がい者を雇用する企業の実際(見学)
・働く当事者の体験談

 この情報提供は、地域の就労支援機関と連携して行うとよいと思います(彼らは専門家。「餅は餅屋」です。ただ丸投げは推奨しません。こちらの事情や要望をお伝えした上で、一緒に創り出す感じがよい)。また、施設見学・職場見学・当事者講演は、患者様の就労に向けたイメージづくりにとって極めて大切だと思います(就労経験のない若い患者様が、働くイメージをもつことができ、それが動機づけを強化する)。

7-3. 基本的な職業準備性へのアプローチ

 就労を目指す当事者の方が取り組んでおきたい事がらを「職業準備性」といいます(過去記事はこちらを参照)。ピラミッド型の図で表すことが多く、底辺に近い事がらほど、基本的な(土台となる)準備性と見なされ、これらが整っていないと、ピラミッドの上の力量を発揮するのが難しくなる、と考えます。

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 ピラミッドの底辺に近い方は、就労支援機関のサービスを利用し始める以前に、医療の枠の中で取り組んでおくことが大切です。「体力や気力」はデイケア等に定期的に通所したり活動に取り組むことで自然と身についてくるものです。「安全感・安心感・信頼感」は、集団の中で安全・安心に活動する中で身につきます。健康や日常生活も、医療スタッフと振り返りながら自己管理できるようになっていくことが求められます。

7-4. 就労支援機関との連携・協働

 職業準備性ピラミッドの頂上に近い課題は、就労支援機関のサービスを利用しながら取り組むのがよいと思われますが、適切な就労支援機関について患者様に情報提供し、必要な場合はつないでいき(施設見学や面接に同行するなど)、連携します(就労支援機関の利用開始当初は、医療のデイケア等と併用するよう促すなど)。

(つづく)

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