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デイケアのカルテでの頻出フレーズ「ゆっくり過ごしている」について

デイケアのカルテでの頻出フレーズ「ゆっくり過ごしている」について
「デイケアの中のひとが語る、精神科まわりのあれこれ」#111

 精神科デイケアで働いていた(退職予定)心理士が、精神科医療や心理支援についてあれこれ語る大人気シリーズ。デイケアの「記録」(カルテ)のお話をしています。今回は「ゆっくり過ごしている」という定型文について。短めです。

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 患者様のデイケア通所は、週に数回の通所が、数年にわたる場合もあります。その中で、何かの活動に取り組んでいる時はさておき、その場に「いる」ことだけを目的に過ごす時間の長い患者様もいらっしゃいます。

 そのような時、カルテに何をどう記載するか、スタッフは悩むわけですよ。そこでよくやる手が、定型文のテンプレートを作ってしまうこと。「ゆっくり過ごしている」は、その代表例なのです。この定型文は、おそらく施設ごとにバリエーションがあると思われます。

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 二十年以上くらい前(私が管理職になる前)には、私の職場では、このフレーズが多用されていたのです。当時はまだ紙カルテだったので、手を動かす労力を少しでも省きたい、という思いからだったのでしょう。

 ただ、ある時、行政の立ち入り調査(いわゆる監査)で、こちらの事情を汲んでいただいた上で、「せめて5W1Hを書きましょうよ」と指導され、その後はもう少し丁寧に書くようになりました(「ソファーで閉室時間までゆっくり過ごしている」というように)。

 デイケアを含む、精神科治療では、作成するべき記録や書類(障害年金や自立支援医療の手続きにかかる診断書など)が多いのです。そんな背景から生まれる裏話でした。

(おわり)

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