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【シリーズ摂食障害Ⅱ・#3】 摂食障害の「やせ願望」と「肥満恐怖」

【シリーズ摂食障害Ⅱ・#3】 摂食障害の「やせ願望」と「肥満恐怖」
「サイコロジー・メンタルヘルス&日々のあれこれ」

 摂食障害への理解を深めていく連載は、シーズンⅡに入っています。摂食障害と関連する心理面の特徴について、理解を深めています。今回は、摂食障害における「やせ願望」と「肥満恐怖」について取り上げます。

1.摂食障害の診断には「やせ願望」と「肥満恐怖」は必須


 摂食障害、特に神経性やせ症の心理面での特徴として、まず挙げられるのが「やせ願望」と「肥満恐怖」でしょう。これは、摂食障害の診断基準のポイントの一つともなっています。単にやせている(または食行動の異常や排出行為があるなど)だけでなく、そこにやせ願望や肥満恐怖を認めて初めて、摂食障害と診断される、というわけです。

2.「やせ願望」や「肥満恐怖」がなくても診断される場合がある


 ちなみに、明確なやせ願望や肥満恐怖がなくても、低体重であることその他の診断チェックポイントを満たしており、「痩せているのは不健康だから食べて太りたいのだけれど、食物を口にすると気持ち悪いので、食べたくても食べられない」などという場合がありえます。ある診断基準(DSM-5)ではこれは、回避制限摂食症(摂食障害の下位分類のひとつ)と名付けられており、非定型の摂食障害の一つと考えられています。

3.尋ねれば皆「やせたい」という今日、摂食障害の「やせ願望」とは


 今日では、痩身であることが美の絶対的な基準と見なされる傾向にあります。ファッションモデルや一部の審美的スポーツのアスリートなどでは、痩せすぎることへの警鐘が鳴らされるほどです(以前にこの連載でも触れました)。そんな社会的刺激を受ける若者たちは、「やせたいか」と問えば、十人中7,8人は「やせたい!」と言うであろうと、想像に難くありません。

 それでは、すでに一般的である痩身願望において、摂食障害を区別し特徴づけるポイントは何でしょうか。

4.体重・体形への自己評価の過度の依存がみられる


 そのポイントとは、摂食障害では多くの場合、「体重・体形への自己評価の過度の依存がみられる」ということになります。

 私たちは、自己評価や満足を、内的な、あるいは社会的なあらゆる場面からのフィードバックによって得ています。欲求や願いが満たされた、学業成績や仕事での業績が上げられた、誰かから褒められた、社交や趣味で楽しめた、などなど。ところが、摂食障害では、自己評価や満足が、体重・体形に強く(時に“それだけに”)支配されているのです。痩せていなければ、体重をキープしなければ(またはもっと落とさなければ)、それ以外の自分には全く価値がない、と考える傾向は、摂食障害の方に多く見受けられます。摂食障害の当事者が、治療や体重回復に、強く抵抗するのは、自分の唯一の価値を手放すことへの恐怖やためらいがあるからなのです。

(つづく)

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