【小噺】目が痛い鰈たちを診察する「どうぶつのお医者さん」の一日

【小噺】目が痛い鰈たちを診察する「どうぶつのお医者さん」の一日

 今日も、どうぶつのお医者さんは、診察を求めるさまざまな生き物たちであふれていました。

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 本日最初の患者さんは、さかなの鰈(かれい)です。

「先生、目が痛いんです」

「ああ君はメイタガレイだものね。それなら、目薬出しておきますよ」

 でも、海の中で、どうやって目薬さしたらいいのでしょう。

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 次にやって来たのは、へびのコブラでした。

「先生、五十肩だと思う」

「ええ?君、肩なんかないじゃないか。大方ギャンブルに現を抜かして、借金のカタに取られてしまったのだろう。それでは診られないよ。帰りたまえ」

 先生にかかれば、猛毒をもって大地の王者として君臨するコブラも形無しです。

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 次にやって来たのは、何と、百足(むかで)でした。先生の評判を聞きつけて、一晩かけてたどり着いたようです。

「先生、腰痛です!」

「…それで、どの腰のことなんだい?」

「わかりません…」

 仕方なく先生は、足の一つひとつの触診を始めました。待合室から遠巻きに見守っていたほかの患者さんたちは、今日これからの診察は無理だよねと、みな帰ってしまいましたとさ。

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 どうぶつのお医者さんに、明日は、どんな患者さんがやってくるのでしょう。

Fin.


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