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【シリーズ摂食障害Ⅱ・#2】 質問紙(EDI)に反映された摂食障害の心理的特徴

【シリーズ摂食障害Ⅱ・#2】 質問紙(EDI)に反映された摂食障害の心理的特徴
「サイコロジー・メンタルヘルス&日々のあれこれ」

 摂食障害への理解を深めていく連載のシーズンⅡでは、摂食障害と関連する心理面の特徴について、取り上げています。

 今回は、その全体像を示すつもりで、Eating Disorder Inventory(EDI)という質問紙に取り入れられている、摂食障害における心理面の特徴を示す項目をご紹介します。

1.EDIとは


 ある疾患の症状の有無や程度を把握するために、当事者や家族からの情報収集の手段として、質問紙やチェックリストが用いられることがあります。その中で、科学的に妥当な方法で開発・使用されるものは、そこから得られる知見も一定の公共性が保たれ、比較的信頼度が高いといえます。

 摂食障害に関する質問紙・チェックリストの開発も試みられており、その代表的なものがEDIです。EDIは、摂食障害を外形的なデータ(BMIや、排出行為の有無など)だけで判断せず、心理的特徴に関する内容も取り入れ作成されています。EDIは改良が重ねられ、最新版は第3版となっています。

2.EDIに反映された、摂食障害と関連する心理的特徴


 摂食障害と関連する心理的特徴では、どの立場でも必ず、「やせ願望」や「肥満恐怖」、「体重・体形への不満やとらわれ」に言及します。これらは、摂食障害と診断する上で必須ともいえる項目であり、EDIにもこれらは当然含まれています。

 その上で、EDIは、摂食障害と関連する心理面のスケールを9つ含んでいます。以下、列挙します。

EDIの心理面のスケール
Low Self-Esteem 自己評価の低さ
Personal Alienation 自己疎外感
Interpersonal Insecurity 対人関係での安心感の乏しさ
Interpersonal Alienation 対人不信感
Interoceptive Deficits 内的知覚の障害
Emotional Dysregulation 感情調節の不全
Perfectionism 完全主義
Asceticism 我慢強さ
Maturity Fears 成熟恐怖
               (日本語訳は「りらの中のひと」による)

3.実際の臨床で感じるものに翻訳しなおすことが必要


 摂食障害の治療とケアに関わる立場からは、EDIで示された心理的特徴のリストは、概ね納得できるものではあります。けれども、摂食障害当事者の方と接する時に感じるものとは、わずかな“ずれ”があるのも事実です。実際の臨床で当事者の方に感じるのは、「がんばる」ことへのこだわりや「過剰適応」「他者と比べ競わずにはいられない」といった心理なのですが、EDIであげられたさまざまな特徴を、実臨床において肌で感じる当事者の心理に翻訳しなおす作業が必要なのでしょう。この連載の続きで、それを丁寧に行っていくことになります。

(おわり)

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