見出し画像

職業訓練に関わる社会資源とその問題(その7)

職業訓練に関わる社会資源とその問題(その7)
(「精神障がい当事者の就労支援あれこれ」シリーズ#41)

 精神障がい当事者への就労支援の「魅力と課題」を記すシリーズです。

 職業訓練に関する社会資源についてまとめています。今回から、障害者総合支援法における就労継続支援A型についてです。ではどうぞ。

1.就労継続支援A型は、とてもユニークな仕組み

 就労継続支援A型は、B型が「非雇用型」といわれるのに対し「雇用型」と呼ばれることがあります。A型事業所の利用者は、一般雇用の労働者と同じように雇用契約を結び、最低賃金など労働法が保証する労働者の権利(と責任)のもとで就労します。それと同時に、障がい福祉サービス事業としての就労支援を提供し、一般就労への移行を促す、という側面ももっています。就労継続支援A型は、一般就労と福祉的就労の両方の性格を持った、ユニークな存在といえます。

2.就労継続支援A型とは

 まず、障害者総合支援法とその施行規則から、就労継続支援A型をみてみましょう。

 既述のとおり、就労継続支援は「通常の事業所に雇用されることが困難な障害者につき、就労の機会を提供するとともに、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、その知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の厚生労働省令で定める便宜を供与すること」(法第5条14)と定義されており、施行規則ではそのA型を「通常の事業所に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が可能である者に対して行う雇用契約の締結等による就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援」(施行規則第6条10・一)としています。

 就労継続支援A型について、ここまでのポイントをまとめると、

・対象は「通常の事業所に雇用されることが困難な障害者」であり、「雇用契約に基づく就労が可能である」こと
・支援の内容や目的は、「雇用契約の締結等による」、
「就労の機会の提供・生産活動の機会の提供」
「就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練」
「その他の必要な支援」である

ということになります。

3.就労移行支援や就労継続支援B型と比較した補足

3-1.利用期間の定めについて

 就労移行支援は、利用期限に定めがありますが、就労継続支援は、A型・B型ともに利用期限の定めはありません(既述)。

3-2.雇用契約の締結について

 就労継続支援A型の最大の特徴は、利用者が(福祉サービス利用の“契約”を結ぶのに加え)雇用契約を締結するところにあります。このことは、利用者にとってだけでなく、事業者側にとっても大きな意味を持っているといえます。また、そもそも「障害者を雇用する一般企業」と何が違うの?というあたりも大切なテーマかと思います。ちょっと複雑なお話になるので、次回以降に詳しく触れたいと思います。

4.就労継続支援A型の賃金

 厚生労働省から発表されている「令和元年度工賃(賃金)の実績について」によれば、就労継続支援B型事業所における工賃の平均額は、

・月額:78,975円
・時間給:887円

となっています。

 上の数字を単純に割り算すると、就労継続支援A型の、月の労働時間は90時間弱(週4日(月間16日)勤務では就業時間5時間半程度)、すなわちフルタイム勤務の半分強の就業時間ということになります。

 ちなみに、最低賃金の全国加重平均額は、令和元年10月改定で、874円から901円に引き上げられています(厚生労働省による報道発表資料参照)。就労継続支援A型の賃金は、ほぼ最低賃金相当額というのが現状です。

(つづく)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?