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精神科頻出フレーズ「活動と休息のバランスをとりましょう」とは?

精神科頻出フレーズ「活動と休息のバランスをとりましょう」とは?
「デイケアの中のひとが語る、精神科まわりのあれこれ」#68

 「活動と休息のバランスを取りましょう」。精神科の、とりわけリハビリ部門のスタッフが、患者様へのアドバイスとしてよく言う言葉です。

 この言葉は、ずばり、「もっと休みましょう」という意味。

 精神疾患をお持ちの方は、多くの場合、心身ともに、とても疲れやすくなります。発症前のように生活(活動)していると、あとあと強い疲れが出て、トータルでみるとパフォーマンスが下がってしまいます。だからしっかり休みましょうね、と。

 気分の波のある双極性障害(躁うつ病)の患者様は、軽躁の時には「まだまだ頑張れるのに!」と感じるものですが、ここで活動エネルギーを“前借り”してしまうと、のちに気分が抑うつ側に振れた時に、落ち込みが深く、長くなってしまいがちなのです。

 一部の発達障害の患者様には、作業場面で過集中(深く集中してしまい、周りがみえなくなる)の症状がみられる場合があるのですが、過集中も、のちのちの疲れにつながります。やはり適度な休息が大切だ、ということになりますね。

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 逆に、“活動と休息のバランス”を念頭に置きつつ、「もっと活動しましょう」と患者様にアドバイスする場合、精神科ではどのような言葉を使うでしょう。それは、「活動の幅をひろげましょう」です。

 精神症状が辛く、引きこもりがちの患者様を、デイケアなどにお誘いするとき、あるいは、うつ病で休んでいた方が、将来の復職に向け準備を始めていくときなどに、この言葉を使いますね。

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 あくまで感覚的なものですが、「活動と休息のバランス」というとき、「休みましょう」の意味でこの言葉を使うのが7割、「活動しましょう」の意味で使うのが3割、といったところでしょうか。

 デイケアを利用される患者様は、統合失調症の患者様が過半数を占めるのですが、最近(ここ10~20年)の統合失調症患者様は、概して心身ともにお元気です。活動を促すことよりも、活動し過ぎ(早すぎる就職活動など)を心配する場面が、多くなったように思いますね。

 それは、薬物療法の進歩による影響が大きいのではないかと思います。非定型抗精神病薬の単剤処方では、鎮静作用が少なく、患者様が“元気”に見える、ということでしょう。これは、定型抗精神病薬の多剤処方で過鎮静となるより、よほどよい状態といえるでしょうね。その分、「活動と休息のバランスを取りましょう」というアドバイスが、大切になります。がんばります(笑)。

(おわり)

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