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【シリーズ摂食障害Ⅲ・#2】 低体重と社会生活における制限

【シリーズ摂食障害Ⅲ・#2】 低体重と社会生活における制限
「サイコロジー・メンタルヘルス&日々のあれこれ」

 摂食障害の症状が、当事者の社会生活に与える影響について、各論に入る前に、まず、摂食障害による低体重に対して、社会生活における制限を医療がどのように考えるか、という点についてご説明しておきたいと思います。

1.低体重の解消には、労作制限による消費エネルギー抑制も大切


 低体重であること自体が、オーバーウェイトと同じように私たちにとって大きな健康リスクになります。体重と死亡率との関連は、BMI24付近を底に、やせ・肥満ともに死亡率が上昇する「U字カーブ」を描くことが知られます。

 体重の増減は、時々の食事量や飲水量、排泄の状況など、さまざまな要因の影響を受けるものですが、大まかには、摂取エネルギーと消費エネルギーとのバランスによって決まります。よって、低体重の解消には、摂取エネルギーを増やすとともに、労作制限などによる消費エネルギー抑制が必要となる場合があります。そして低体重の解消に向けた労作制限は、当事者の社会生活の制限に直結するのです。

2.摂食障害におけるプライマリケアのガイドライン


 摂食障害治療において、低体重の度合いと必要な労作制限との関連は、「神経性食欲不振症のためのプライマリケア・ガイドライン」(2007年)にまとめられたものが知られています。このガイドラインは、必ずしも摂食障害についての知識が充分でない他科(内科や小児科など)の医師が、当事者を初診する際に適切な医療的判断を行うことができるよう、初期介入段階での診断と治療などの一般原則をまとめたものです。

 このガイドラインの中で、やせの程度と労作制限の目安や、緊急入院の適応となる身体所見(やせの程度を含む)が示されています。ただし、実際の医療行為は、各医師の裁量に基づき行われるものですから、必ずしも全ての医師が全ての患者に対し、厳格にこの基準通りの対応をしている訳ではないことを、念のため付言します。

3.ガイドラインにおける労作制限や緊急入院判断の骨格


 このガイドラインでは、標準体重からの逸脱の程度(どのくらい下回っているのか)によって、段階的な労作制限を提示しているところに特徴があります。逆に言えば、低体重からの回復具合により、段階的に労作制限を解除し、少しずつ社会生活・日常生活に戻っていくよう促すものになっています。

 緊急入院の判断については、やせの程度とその他の身体所見を組み合わせて判断する、ということが示されています。

 これらの詳しい内容は、次回に示します。

(つづく)

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