誕生日に真冬のコートを着る

4月は目前というのに、未だに真冬の上着が手放せない。
春を感じるのはせいぜい花粉症の鼻炎くらいで、
新入生とか新学期とか新社会人とか、「新」のつくものからも縁遠くなってしまった。
見渡せば、春服を寒そうに抱き抱える人とすれ違うけれど、
お洒落は我慢より機能性重視のOLにはまだ真似できそうにない。
変身ヒロインになれないまま25歳になったけれど、でももうそんなことはどうだってよくなっていた。

少女の頃思い描いていたキラキラは、正体さえ分かってしまうと案外大したことはなくて、
髪を巻いて、好きな服を着て、鏡を見て「よしっ!」って言える自信、ただそれだけなんだけど、
寒がりだし、朝起きれないし、「ちこくちこく〜!」も毎朝やればただのだらしない子だし、キラキラに遠い理由はいくつも挙げられる。
でも、キラキラに近づく方法がいつも分からないでいた。

美容院の予約の前日はホットペッパービューティーにかじりついてどんな風にオーダーしたらいいのか頭を悩ませて、当日の朝はちゃんとメイクする時間をとって、ウキウキした足取りで美容院を出ると、「ちゃんとかわいい私」がお店のガラスに映る。
やっぱ前髪あるほうが似合うし、伸びたらこまめに切らなきゃなーとか、アイロンの使い方教えてもらったりとかして、自分が不器用なだけで美容師さんはちゃんとかわいくしてくれるんだよな〜とほっとする。

なんとなく(上手くはないけど)髪を巻けるようになったら、手持ちの服どれ着てもかわいくて浮かれちゃって、かーんたんなことに訳わかんないくらい長いこと悩んでしまったけど、
簡単なことに辿り着くための苦労もかわいいものなので、よしとしてやろう。

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