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短編小説🍸映画BARローマの休日(12)

映画BARを出る頃には、僕はかなり酔っていた。あの男とゆきが楽しそうに喋って、男がゆきの手を握ったところで我慢ができなくなり、とっきーにお会計を頼んで1人で店を出てきてしまった。

「ちょっと、待ってよ」

ゆきが追いかけてきた。

「なんで急に出ちゃうの。置いて行かないでよ。」

「あの男と今夜は過ごすのかと思ったから。」

ぶっきらぼうに答えると、ゆきは黙ってこちらを睨みつけていた。なんで睨むんだ。睨みたいのはこっちだ。

だんだん腹が立ってきて、ゆきの手を強引につかんでとにかく2人になれるところを探して歩き回った。酔いのせいか、足元がおぼつかない。それでもゆきの手を離さず、歩き続けた。

5分ほどお互い黙ったまま歩き続けたところで、目の前にコインランドリーが現れた。時間は夜の10時をまわっており、人は誰もいない。

さきほどの男とゆきが親密そうにしていたシーンが頭をよぎる。ゆきは俺の女だ。怒りがこみあげて、ゆきの手を引きコインランドリーへと入った。

「こんなとこ入ってどうするのよ。」

戸惑うゆきの口を塞いだ。ゆきは抵抗したが、だんだんと力をゆるめた。ゆきは俺の女だ。僕の中で何かが壊れる音がした。

(13)へつづく


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