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「友人宅のエアコン温度勝手に変えられますか?」二項対立のない世界を求めて。つくるを民主化する森さんの未来図。

26.4.2021
武蔵野美術大学大学院造形構想研究科クリエイティブリーダーシップコース必修である「クリエイティブリーダーシップ特論」では、毎回クリエイティブ×ビジネスを活用し実際に活躍をされているゲスト講師を囲みながら議論を行います。この記事では、講義内容と私自身の気づき、今後の可能性についてまとめています。

2021年度「クリエイティブリーダーシップ特論第3回」となる今回は「RENEW」事務局長であり福井県鯖江市を拠点に「社会に自由と寛容をつくる」をテーマに活動を広げる森さんから「つくることの民主化」についてお話を伺いました。

森一貴さん
山形県生まれ、福井県鯖江市在住。「社会に自由と寛容をつくる」がテーマ。福井県鯖江市をフィールドに、誰もが変化していけるための小さな階段づくりを手がける。 半年間家賃無料でゆるく住んでみる、全国連携移住事業「ゆるい移住全国版」プロデューサー。職人に出会い、ものづくりを知る、福井のものづくりの祭典「RENEW」事務局長。
(引用:https://renew-fukui.com/tv/howto-renew/)

講義の第一印象から森さんを紹介するなら、
「情理のバランサー、推進力の塊。」(あくまでもchonri目線です。)

一例として、メインポートフォリオであるRENEWという活動。持続可能な地域づくりを目指しているわけですが、年齢や職業、もちろん性別を問わず幅広い方とゆるーくコミュニケーションを取り地域に馴染む一方で、元ごりごりにコンサルをしていた経験を活かし、目的に沿い一貫して最後までプロジェクトをマネジメントする。その推進力は底知れないなと。

今回はそんな森さんが語る2つのデザインの視点から話を広げます。

「偶発性を生み出す余白のデザイン」
「主客融解のデザイン」

「偶発性を生み出す余白のデザイン」が寄与する
持続可能なプロジェクト運営

RENEWの活動以外にも、「ゆるい移住」などフリーのプロジェクトマネージャーとして様々なサービスデザインを手がける森さん。

プロジェクトそれぞれにコンセプトや目的は違いつつも、「意図せず起きる偶然性」を大切にし、ちょっとした遊び心を持って醸成している。という点は全てのプロジェクトに共通しているなあという印象を受けました。

『形骸的ではない本質性を担保したプロジェクトの完遂と、プロセスの過程で生まれる新たな兆しの発見。どちらか一方だけになってしまってもつまらない。どうすれば両方を欲張りに得ることが可能なのか?』

SaaS系の新規プロダクトを扱う部署にいる私ですが、
不確定要素の多い中での成果の追求次のアクションに繋がるファインディングスの発見」このバランスをどう求めるか日々模索中でして...
純粋に疑問が湧きました。

お答えとしては『コアとなる核のプロジェクトの進行は自分が責任を持って遂行する。一方で、会社でいう新規事業部のように権力が及ばない"サークル"のような有志組織を作ることもある。』とのこと。

私は、上記を「仕組みで解決する」と解釈しました。
・新たな面白いコトを許容できる余白をあらかじめデザインしておく。
・様々な可能性の想起を促し、場合によってはその場で「こうだったらいいのに」を実践に移せる場を整える。
・その場で実践に移せることを多くの人がイメージ出来る状況を寛容する。

「プロジェクト推進における余白のデザイン」は不確実性の高い現代においてプロジェクト自体の価値の幅を広げるだけでなく、有志の関係者自身が発見した兆しからまた別の「やってみよう」の生成を担う。
という点でコアとなるメインプロジェクトの持続可能な運営にも寄与しているのではないかと思いました。

「主客融解のデザイン」

森さんが今後考えたいのは「主客融解のデザイン」とのこと。お言葉をお借りすると、主客融解のデザインとはつまり"友人宅のエアコンの温度を勝手に変えられるデザイン"だという。

こちらの表現、個人的にはかなりイメージがしやすく!

私自身もしかしたら家族内で実践していることかも。と思ったので少し話を広げてみます。

家族における「主客融解のデザイン」を考える

chonri宅ではホストファミリーとして海外留学生を受け入れることが度々あります。タイやメキシコ、カナダにイタリアなど国や期間は様々です。

"ホスト"とは名ばかりで実際は一人一人を家族のような存在として迎え、過度な気遣いはしません。ホストとして何かをあえて分かりやすく与えることはせず、あくまでも私たち家族のライフスタイルはそのままで相手のライフスタイルを理解し受け入れられるよう互いに対話を重ねることを重視します。

他にも、我が家はかなりオープンで人の出入りが激しい!

誰もいない家で友人が一人シャワーを浴びていたり、居候の妹の友人と祖母が二人だけでTVを見ていたり、母妹私の友人らが偶然に集結してしまい20人がぱつぱつに夜を過ごす等...家の中で家族以外の方がゆるゆると好き気ままに過ごしている環境は日常茶飯事です。

まとめると、chonri宅では
『迎える側のホストである私たち⇆迎えられる側の留学生や友人ら』

という二項対立は存在せず「生活を共有する個々人が集合している」空間に過ぎないのかなと。見え方として私たちは与える側ではあるけれど、与えられる側でもあります。それは手土産の様な形あるものではありません。

例えば、留学生と毎日を過ごしていれば彼らの国の文化や生活スタイルについて深い学びや気づきを得ます。その内容は今の自分の価値観を形作る、目には見えないけれど大変意味あるものです。

そんな家庭環境を踏まえ、「主客融解のデザイン」において大事なのは、主である側、客である側がお互いに与え合う存在であるということを認識している状態を生み出すことなのではないかと思いました。

そして、各々がありのままで向き合い、摩擦を恐れずオープンに意見を述べられるコミュニケーションをデザインすることが大切なのではないかと思います。じゃあ、それってどんなデザインなのだろう?
今後さらに深掘りたいポイントです。


「主客融解のデザイン」と資本主義

今回の講義では資本主義のあり方までは議論は広がってはいないものの、「主客融解のデザイン」は、資本主義に疑を呈する考え方にも繋がると思います。

私が好きな本の一つにジェレミー・レフキン著の「限界費用ゼロ社会」という本があります。

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ここでは共有型経済の社会システムの可能性について提言されています。人々が簡単にモノを作ることが可能になり、その費用が限界に達するような世界では物々交換など社会関係資本や協働の重要性が増すといった未来図が語られ資本主義からのパラダイムシフトへ妄想広がる、示唆に富む内容になっています。

もしかすると、互いが与え合う関係という点で「主客融解のデザイン」と限界費用ゼロ社会には共通する概念があるような気がして。
森さんが描く未来像や「社会に自由と寛容をつくる」が実現できた結果、森さんにとっての幸せな状態ってどんな状態なんだろう?と機会あれば聞いてみたいなあと思います。

最後に...

講義を受けての第一印象は「情理のバランサー、推進力の塊。」だった森さん。このnoteを書いているうちに少しづつその印象は変わってきています。

森さんが綴る文章からは人に対する想いやりが溢れ出ており、幅広い分野に対して深みある考えは哲学者の様だな、と。

『生き方・幸福論』は壮大でありながらも考えがいある人類共通の永遠のテーマだと思います。
今後森さんはセレンディピティの中でどちらの方向に舵を切るのか、どの様に人生を歩まれるのか、個人的にとても楽しみです。

26.4.2021

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