見出し画像

others/Mr.Childrenが浮気曲だという解釈に異を唱えてみた(今更感)

othersは浮気曲?不倫曲?もしかしたら違うかもしれません。

1 浮気の歌?不倫の歌?


 この曲、最初聴いたときの印象は、おお、めっちゃ不倫・・・もしくは浮気・・・。でした。
 最近そのことが話題になっていて、今更感ありますけど別の解釈できないかなぁとふと思い立ったので、そのことについて書いていきます。

 ますは簡単に、othersの歌詞を振り返ってみます。

 「君の指に触れ 唇に触れ 時間が止まった 硬い氷は溶け 体中を滑る 2人の熱で」

 いや、官能小説!?っていうぐらいの大人の恋愛。カラオケで人前では歌えないことを確信した瞬間です。
 そんな官能的なことをしておきながら、「何が起こったの?」とすっとぼける主人公。脳みそまで溶けてしまったんでしょう。ぼーっと「窓の外の月を見ている」と。

 「まるで近未来の映画のよう アンドロイドが 感情なんかなく ただ互いのエネルギーを吸い合うように」

 感情がない夜の営み・・・。ただ腰を振り続けたフェイクを彷彿とさせますね。感情はないようです。ここで、おや?となります。

 「意味はあるだろう」とは思いながらも、「だけど深く考えられない」主人公は、「気まずさでビールを口に運んだ」そうです。ビールは喉越し!派(?)の主人公が、このときばかりは温くて重たい口当たりのビールを飲んでいるような情景が浮かびます。多分そのビール、行為の前に飲んでて飲みかけのやつで、もう気も抜けてキンキンに冷えた状態ではないような気がします。

 さぁ、次です!問題発生!!伏線回収!!
   「それはきっと彼のもの」
 
 彼???誰???

ここまで2人の関係性に微妙な空気を感じていた聴き手に、第三の男の存在を提示します。というか、主人公こそが第三の男だったんですね。なるほど。
「きっと」の使い方うますぎるやろって思いません?「それすら」とか「きっと」とか「もっと」とか「どうせ」とか、それ自体にさほど意味のない言葉に意味を持たせる天才ですよ本当に。
「きっと」の使い方で、主人公は「彼」のことをよく知らないということがわかります。存在は知っているけど、その人のこと自体は知らない。まさに他人なんでしょうね。others。

 彼が登場すること、その後彼女がそっけなく見送る描写、逃げるように彼女の元から走り去る主人公。これらの関係性から、これは浮気女とその浮気女に入れあげてしまった主人公の歌なのかなと、おそらくそれが解釈として自然なんだろうと思います。

2 別の見方ができないものか


不倫にはまるでそれが犯罪かのように強烈な拒否反応が示される昨今です。
せっかくの名曲。実は不倫じゃないよ、浮気じゃないよっていう解釈は成り立たないのだろうかと、考えました。今の桜井さんがわざわざ不倫の歌作るかな?不倫の歌をCMに起用するのかな?という疑問があったのも、この解釈を考えるきっかけになりました。

そこで出てきたのが、もう一つの解釈。

題して、「othersに出てくる彼、すでに亡くなっている説」

どうでしょう。一気にただの純愛系切なさマックスの名曲になりそうな予感しませんか?しません・・・か?ちょっと解説します。

3 「othersに出てくる彼、すでに亡くなっている説」

まず、冒頭、「時間が止まった」「硬い氷は溶け」という歌詞から、主人公が彼女とそういう関係(察してね)になったことについて、驚いていることや、あんなに頑なだった彼女がついに自分を受け入れてくれた感じ(硬い氷は彼女の心の比喩と解釈)があります。
彼にとっては、絶対にそんなことにはならないという確信があったけど、どうしても諦められなくて、ずっとアプローチしていた。それがついに叶った。冒頭シーンは、そんな風に解釈できそうです。

「何が起こったの?」と驚いているのも、よほどびっくりしたんだろうという感じ。

細かなニュアンスに注目すると、「しばらく何も考えたくない」は、「しばらく何も考えられない」ではなく、「考えたくない」という点がポイントなのかなと。ただぼーっと放心状態というわけではなく、難しいことはゴチャゴチャ考えたくない、彼女がどういうつもりなのかなんて今はどうでもいい、今はこの余韻に浸らせてくれっていうニュアンスでしょうか。彼女との関係が、結構難しいものだということがわかります。

「アンドロイド」のくだりは、彼女の心がここにあらずという感じ。また、彼女自身が感情を持てなくなってしまったようにも受け取れるのではないかなと思います。いくら浮気でも、全く心がなくそういうことになるのか?っていう。女心はわかりませんが、「アンドロイド」の表現は、彼女の心が空っぽであること、行為の相手は誰でも良かった、寂しさを埋めたかっただけ、そんなニュアンスも感じます。まぁ、浮気でも当てはまりそうではありますけどね。

「意味はあるだろう」自分に対する好意からそうなったわけじゃないことはわかってる。でも何か意味はあるんだろう。なんだろう。どういうつもりなんだろう。めっちゃ動揺してるんだけど。このことについて考えたいな・・・。

「だけど深く考えられない」

ムリ---。今はムリ---。主人公の心の叫びが聞こえてきます。冒頭と違って、このときは、「深く考えられない」状態になっています。したくないのではなくて、できない状態ですね。
で、「気まずさでビール口に運んだ」と。

浮気した経験のある方に聞いてみたいのですが、浮気をしている側(この曲の彼女)ではなくて、浮気相手(主人公)になっている側って、浮気でもなんでもいいからあの子とそういうことしたい!!って思ってて、急にそういうシーンになったら、気まずくなるもんなんですか?気まずくなるぐらいなら最初からそんな浮気になるような恋しなくないですか?ここは、おっしゃー!!浮気でもなんでもここまで来たぜー!あとは押せ押せでものにするぜー!!ヒャッハー!!!!じゃないんですか??まさか彼女の彼に気を遣って気まずくなったりしませんよね?どういう感情なんですか?

彼女の浮気相手だって考えると、なんかそこが腑に落ちないんですよね。何を感傷に浸ることがあるんだろうなって。なので、浮気ソングとして捉えているもう一人の僕は、「何ウジウジ物思いに耽ってんだよ。」って思ってます。この部分。

そう考えると、主人公が、よく知りもしない「彼」であるにもかかわらず、負い目を感じるという状況を具体的にイメージすると、彼は「すでに亡くなっている彼女にとって最愛の人」で、彼女は彼の死を受け入れられずに感情を失ってしまい、でもそんな彼女に本気で恋をしている主人公は彼女のそばにいてずっと見守っていた、いつか自分が彼よりも大きな存在になって彼女を支えたい・・・。そんな解釈が生まれてきたわけです。いやー、亡くなった最愛の彼ってめちゃくちゃ高い壁だと思うんですよ。彼女の心の中にしか存在しない彼ですからね。

主人公は、彼女の心が自分にまだ向いていないとわかっている。それなのに、彼女とエネルギーを吸い合ってしまったわけです。嬉しいけど嬉しくない、みたいな。ちゃんと彼を乗り越えてから、そうなりたかったっていう動揺でしょう。そんな難しいこと、深く考えられないし、気まずくなってビールを口に運んだりもするでしょう。きっと美味しくなかったと思いますよ。祝杯とは言えない感じが出ています。

「テーブルの上の灰皿」「アメリカ史紐解く文庫本」「それはきっと彼のもの」

さっきも触れましたが、「きっと」なんですよね。後半で、「ベッドで聞いていたブルース 誰の曲かも君は知りはしない」というのも出てきます。

聞けばよくない?彼女に。へぇー、アメリカ史好きなの?灰皿めっちゃセンスあるねどこで買ったの?とか。

聞けないんですね、きっと。重たいんですよ。彼の話題は、主人公と彼女にとって。

ああ、もし彼のものだったら、彼女に残っている彼との記憶が甦って、きっとまた彼女は悲しそうな顔をするだろう。その瞬間に、僕の存在は消えてしまって、彼女は彼の世界に行ってしまうんだろう。うん。聞けない。きっと彼のものだろうけど、彼女に確認するのはやめとこう。

ただの浮気でここまでなるかなぁって感じがします。主人公も自分が浮気相手だってことがわかっているんだから、ある程度開き直って話題にするぐらい別に難しいことではないような気がするんですよね。でも、あえて聞かないんです。

ここまで聞き手に考えさせる「きっと」の使い方。ね?天才でしょ?笑

ブルースに至っては、彼が好きな曲っぽいのに彼女はよく知りもしないって、興味なさ過ぎじゃないですか笑 でもこれも、「生前彼が好きだった曲、誰の曲か聞きそびれてしまったから、今となってはわからないの。」なんて言われたら怖いから、聞けない・・・。という可能性も・・・。

「「そろそろ行くね」って僕の 言葉を待っていたかのよう 無駄のない動きで君は そう僕に手を振る」

この描写めちゃくちゃ好きです(余談)。
一緒にいてほしいとか、もう少しいてよとか言ってくれる雰囲気すらない。ちょっと期待したけど、無駄のない動きで別れを告げられてしまった。彼女の心に、僕はいない。そう悟ってしまう主人公なのでした。切ない。

「スニーカーを履き」っていうのも秀逸ですよね。革靴ではない。スニーカー。恋に悩む、恋愛の仕方がよくわからない、でも彼女に対する情熱はめちゃくちゃある青年。多分走ったら速そう。きっと体育会系。スニーカーを履いてきたという描写があることで、主人公の人となりがなんとなく想像できます。すごいです。

「何が起こったの? このまま何も考えたくない 25時の首都高に輝く」

25時なんですよ。泊まっていけばいいじゃん!!!ってなりません?笑
夜中に彼女の家にいるような関係性で、硬い氷が溶けるほどの熱い夜まで過ごしておきながら、泊まらないんですよ!しかもそれを彼女が望んでいたことを主人公はわかっているし、それを受け入れてもいるわけですよね。泊まって行きなよって言ってほしかったなぁとか思いながらタクシーに乗り込むわけですよ。

こんなに彼女を思っている主人公だったら、もうこの際俺が本命の彼氏になってやるぜ!!ってなりそうなもんじゃないですか?そのまま朝まで一緒に過ごしませんか?それともここはさっと帰るのがモテる男なんですか??

でも、そうはならない。そうはできないんですよ。彼女の心には自分はいないことがわかっているから。無理に押すことは彼女を傷つけることになるって思っているから。

そこまで彼女を思いやって、一歩引いたところから彼女と接している主人公は、浮気相手にはならないんじゃないかと思うんですよね。「その一瞬を君は僕に分けてくれた」なんて殊勝なことを考える主人公ですよ。絶対良いやつですよ。だから、これは浮気ではないと思えます。

彼女とはもっといい仲になりたいけど、めちゃくちゃ難しいこともわかってる。そんな中、進展したんだか(身体の関係という意味では進展)進展してないんだか(心の距離は全く近づいていないことを突きつけられた)わからない状況になってしまって、「このまま何も考えたくない」ってなってしまう主人公。

二回出てくる「窓の月」は、天国にいる「彼」を表しているんじゃないかなと思います。ライバルである「彼」。彼女のこと、どうしたらいいと思う?君のことはあまりよくしらないけれど。君にしか解決できなさそうなんだ。何かヒントをおくれよ。そんな主人公の心の声が聞こえてきそうです。
「窓の外の月」は、1回目は彼女の家の窓から、2回目はタクシーの窓から見ているので、彼女も主人公が家を出て行った後、窓の外の月を見ているのかもしれません。空に行ってしまった彼のことを想いながら。。

タイトルの「others」も、他人という直訳で良いと思うんですが、彼女にとって主人公はあくまでも、「他人」なんですよね。
浮気相手って他人なのかなぁ・・・。っていうのも、思いました。

それから、主人公にとって、「彼」の存在が、絶対に越えることのできない大きな壁のように表現されていることにも、浮気ソングと考えると違和感があります。主人公にとって、彼女の中の「彼」の存在が大きすぎるし、主人公から見たときの彼女の自分に対する対応も、絶望的なぐらい脈なしな感じがするんですけど、本気の恋をしている「浮気相手」の主人公だった場合、ここまでの大きな溝を感じるのかなぁと思います。

いかがだったでしょうか。
ここまで書いておいてなんですが、まぁ普通に聞いたら浮気の曲かなとは思います笑
でも、浮気の曲だから好きになれないっていうの、もったいないと思うんですよね。主人公にとっては一途な恋愛だと思うし。曲も素敵だし。
なので、こんな解釈もできるかもしれないから、浮気の曲って決めつけて嫌いにならないでほしいという思いで書きました。
少しでも読んでくれた方の参考になれば嬉しいです。

4 おまけ

ビールが出てくるのに、レモンサワーのCMなんだ・・・。って思いませんか?笑
ビールのCMでいいじゃんレモンサワー関係ないじゃんって思いませんでしたか?笑
確かに、曲調はゆったりしていて綺麗なので、夕焼けの浜辺でオシャレな大人がレモンサワーを片手に語り合っているイメージがビッタリではありますけどね。

でも、そうか!と思いました。

これって、レモンサワーのCMですけど、曲を聴いた人はビールも思い浮かべるんですよ。歌詞に入ってるから。で、キリンと言えば一番搾りじゃないですか。
つまり、レモンサワーのCMにすることで、レモンサワーもビールも同時に宣伝できるんですよ!キリンの広報は優秀ですよ!

という、ものすごくどうでもいい話でした。おしまい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?