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ヒルズ 挑戦する都市 −ヒルズの何がすごいのか−

23冊目

ヒルズ 挑戦する都市 (森 稔)を読みました。


知っているようで知らないヒルズと森ビルの歴史を知ることができ、森ビルがつくる「垂直の田園都市」について理解が深まりました。

以下まとめと感想です。

まず、「垂直の田園都市」という言葉について、本書でのまとめを引用しました。

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 要するに、住む場所と働く場所を1つにまとめることで、都会特有の通勤地獄から解放される。そして余暇が生まれるため、時間を豊かにするために美術館や映画館を創り、都市としての魅力を高めよう。ということなのですが、シンプルかつ合理的なアイデアだと思います。

以下は森ビル創業者、森稔氏の通勤時間に対する問題意識です。

首都圏では毎日民族大移動が繰り返されている。移動にかかる負担とエネルギーは大変に大きい。日々の通勤にかかる時間は平均2時間を越え、生涯計算すると、4年間以上通勤通学時間に費やすことになる。これでいいのだろうか。都会だから仕方がないと、諦めてしまっていいのか。
都市は本来、住み、かつ働くことだったのだ。

 ここで、ヒルズは富裕層志向の都市モデルで、普通の人には住めないよとの批判が想定されますが、

森氏曰く、「現時点でヒルズは確かに富裕層向けであるが、供給の拡大とともに垂直の田園都市モデルの価格は下がり、一般庶民も職住近接かつ文化的な暮らしを体験できるようになる。また、もし手ごろな価格で住めるならこういう街で暮らしたいと考えるならば、垂直の田園都市のモデルを普遍解として、徒歩圏で暮らせる街を創るために尽力すべきであり、今の家賃が高いことを理由に、諦めるべきではない」と述べています。

街を変えるのは、あくまでも人々の想い、願いなのである。

という信念によって成り立っていますね。


また、街をメディアに見立てる考え方は非常に共感できるものでしたのので以下引用します。

 メディアというと、皆さんは何をイメージされるだろうか。
一般的に新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、インターネットではないだろうか。私は街もある意味で、「メディア」ではないかと思う。街を歩きながら、私たちは無意識に様々な情報を得ている。看板やショーウィンドー、街を行く人のファッションや会話、様々な音楽、天候、緑、そして街の匂い・・・。「田舎の3年、江戸(都)の昼寝」という喩えがあるそうだ。田舎で3年勉強するより、江戸で半刻昼寝をしている方が勉強になる。と行った意味らしい。当時の江戸はそれほど突出した文化や情報の宝庫であったのだろう。江戸ならば、昼寝をしていても、様々な情報が入ってくるという意味も込められているのかもしれない。今はマスメディアやインターネットの普及で、都会と田舎の情報格差は縮まっている。しかし、人はやはり都市に惹かれ、集まる。「江戸」をニューヨーク、パリ、ロンドンに置き換えてもいい。海外の都市の情報など、いくらでもインターネットで得られる時代になったのに、やはり実際にその街を歩いてみたい、体験したいという欲求に駆られて、多くの人がその海外旅行に出る。これが都市の「磁力」だろう」。

<中略>

森ビルが通常の街とも既存のメディアとも違うことは、街の中にある情報発信ツールを森ビルのタウンマネジメント事業室で一元管理していることだ。これによって、街のコンセプトやブランディングにふさわしい内容や品質、オリジナリティを保つことができるばかりか、あるテーマで、町全体を埋め尽くすといった使い方もできる。私たちはこのプロモーション手法を「ヒルズジャック」と読んでいる。電車の中吊り広告が埋め尽くされることがあるが、それを街全体で、しかも様々なメディアを使って立体的に展開したもの、と考えるとわかりやすい。

 2000年頃からはインターネット広告の勢力が強すぎたので、オフライン広告はあまり注目されていませんでした。しかしネット広告が飽和状態になり宣伝効果がなくりつつある中で、今後はオフライン広告が力を持ち、森ビル的なメディアが優位に立つのではないでしょうか。


 (追加)本書で森稔氏が挑戦について語っていたので、そちらを紹介してこのnoteを終わりたいと思います。

 日本では、リスクをとって新しいことに挑戦する人は少ない。前例のないことを認める人も少ない。実績と信用がつき、まわりの評判を聞いて初めて賛同する人が増える。よくいえば慎重、悪くいえば臆病。日本はベンチャー企業が育ちにくい国である。
 新しいことに挑戦するときに重要な心構えは、「儲ける」ことを目的にするのではなく、「結果として共に儲かる」仕組みを考えることだ。自分だけ儲けることを目的にすれば、成長はどこかで止まる。まわりの支持や協力が得られないからだ。あるいは儲けるために道を踏み外す。
 トップの「信念」や「夢」、それを形にした「企業理念」、そして道を踏み外さないための「企業倫理」がしっかりしていないと、会社は伸び続けることはできない。企業理念はお題目ではなく、成長のエンジンである。
 率直に言って、私自身も、金儲けが目的だったら五十年間も頑張りきれなかった。新しいことに挑戦し続けることも、十数年もかけて「アークヒルズ」や「六本木ヒルズ」などの再開発に取り組むこともできなかっただろ
う。
 会社は社会のためにある。よりよい街や都市を考え、実現し、育てることによって社会に貢献することが、森ビルの存在意義である。新しいことに挑戦すれば、かならず予期せぬ障害に突き当たる。前例がないことは障害も多く、乗り越えるには大変なエネルギーがいる。そうしたときに出るエネルギーの量は、目標の高さ、夢の大きさに比例するように思う。
夢、挑戦、イノベーション、実績、信用……。いつの時代であっても、成長に必要なものは不変である。

また、若い頃の自分にアドバイスをするすればなんですか?との問いに対しては、以下のように答えています。

自分のレゾンレーデル(存在意義)を早く探し出すこと。


参考資料

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