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武術的老子解説

原文

いにしえの善を為す士は、微妙玄通、深く識るは不可なり。
それただ識るを不可なるは、容為すを強いるゆえなり。
あたかも冬の川を渉るがごとし。
なお四隅を畏れるがごとし。
儼としてその客のごとし。
渙としてまさに氷が解けるがごとし。
敦としてその撲のごとし。
曠としてそれ谷のごとし。
混としてそれ濁りのごとし。
たれかよく静を以って濁りをおもむろに清くせん。
たれかよく安んじるを以って動をおもむろに生じさせん。
この道を保つは、欲を満たさす。
それただ満ちず、ゆえによくやぶれて新しきを成す。

解釈

いにしえの善を為す者は、はかり知ることができない。
それは型に当てはめて見ようとするからだ。
あたかも冬の川を震えて渡るようだ。。
細かいところまで気にするようでもある。
家に招かれた客人のようでもある。
まわりの氷を解かすようでもある。
忠義に厚い家来のようでもある。
様々なものを生み出す谷のようでもある。
混沌としてわかりにくいようでもある。
だれが静けさを保つことによって濁りをなくし清らかにしようとするのか?
だれが安らかにすることによって動きを生じさせるのか?
道に則り生きるものは、自分の欲を満たそうとしない。
満たさないがゆえによく新しいものを取り入れ、創造することができる。

コメント


技を完全な形にしようとしなければ、相手はその技の不完全さに対応できない。
こちらは、その愚直な技が遮られても、遮られることによって生じたその不完全な部分を足掛かりに別の技を生んでいく。
そこに生じた不完全な部分はお互いに意図して生じたものではなく、自然に生じたものであり、相手の予測が不可能なものである。
相手は予測がはずれ居ついてしまう。
居ついたところを別の技をかけられれば、もう反応のしようがない。
真の武術家は、不完全さを足掛かりに技を展開させていく。
不完全さを武器にする。
不完全な技を繰り出して、その不完全さで相手の心に執着をもたらす。
居ついたところを他の技で仕留める。
この不完全さこそが、完全に至る道である。




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