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君たちはどう生きるか、感想

「君たちはどう生きるか」を見た。
この映画は自分がその感覚で見ることが大切で、必要で、今はそうでなくてもそのうちに効いてくると思う。

ぜひ知らない他人の感想を読む前に、劇場の静謐さの中で見ることができるうちに、あなたが見てほしいなって私は思う。よろしくね。

以下、つらつらと思ったこと。










人はそれぞれ自分の星を持ちながらぶつかりあう

私たちは心にそれぞれ1つずつ、大きくて小さな星を飼っているのだと思う。自分が神さまで、私の常識が全てにおいて優先される、私の世界。
今作でその象徴は家であると思う。しかし形として家に見えるだけで、本当は心だ。心は私と共に歩き、私と共に生きる。
それぞれの、その無数の星がざらりと散らばって、ときどき擦れたり壊れたりする。重なることもできるし、できないこともある。私はこれを制御できない。

現実世界は「現実」だから、私に優しくないし、理不尽だし、伏線回収もない。
ワクワクすることも猛烈に引き込まれることも、正直それほど多くない(※人によるけど)。

星も、私に優しくないし、理不尽だ。けれどそれは自分で選んだ道であり、宿命で、私のためだけにあるもの。

星は、空想とも言える。
アオサギが突然喋りかけてくるような突拍子の無さや、たまらなく塔に惹かれるような、そうせずにはいられないような猛烈な焦燥感。日常なんて簡単に食うことのできる強さと、それからどうしても逃れられない醜さを持っていて、それが主人公、眞人にとってのアオサギであり塔だったのだと思う。


悪意に満ちて、毎日間違えて、だけどたくさんの人がいるこの世界

この世界は綺麗ではない。戦争があり、憎しみが生まれ、人が生き、死んでいく。どんなに思ったことも叶わないし、どうしようもないことが明確で、曖昧だ。正解はない、ただ私が見るものだけがある。たくさんの“私”が見たものが重なっている。

眞人が見たものはどれも明確で、どれも不確かだ。
眞人の聴いた声は明らかに幻聴で、しかし確かにアオサギの声である。
色々なものは曖昧だけど、受け取った瞬間に実態をもった本当になってしまう。


きっと全ては愛で、いつでも呪いだ

全体に通ずる生々しさはきっと、命の話だからだと思う。
冒頭、人力車(?)を降りるひとの危なげな足取りと重さに見入ってしまった。無遠慮に手をお腹に導く姿は徹夜明けに見る朝日のようだ。命は重くて、明るくて強い。
重さは呪いに転じ、呪いは願いに転じるのだろう。
わらわらが月に飛ぶシーンが優しくて痛い。



水、境界、炎、家、高く飛ぶこと、覗き屋のアオサギ、本物、心、空想、現実

水は心、アオサギはその案内人なのだと思う。
水面に映る逆さまの世界は、境界に透けた内側であり、下の世界。それを覗いては飛ぶアオサギ。アオサギは必ず水に呼ばれている。涙や、水や、血も。
アオサギはある意味で鏡で、滑車で、心に対する呼び水のようだ。

炎の美しさと気高さにも目を奪われる。
それに焼かれるペリカンもわたしである。

眞人が自らを傷つけたのは、物語を上書きするという意味で創作とも言える。語ることは嘘で、嘘が語るのは本質なのかもしれない。

海の波が本当に波であった。あの瞬間の唐突さときらきらと、ざっと押し寄せて一気に引いていくところ、足の指に当たる砂、何もかもが飲み込まれる大きさ、水のかたまりのやわらかさ。海に対する解釈の完全一致だった。ありがたい。


継承

血を引くもの、のあたりは少し驚いた。
傲慢さであり、ただのエゴで、静かな祈りのようだった。落ちてきた星は本当に落ちてきたのだろうと思う。だからこそ、願ってしまうのかもしれない。


創作をすること、アニメーションという表現

クレジットに並ぶスタジオカラー、Production I.G、ufotable……に、じんときてしまった。スタジオジブリはアニメ作品を作り、作り切って、つなぐのだと思う。

丸の内ピカデリーのドルビーシネマで見たのだけど、入口のディスプレイは青色だった。
あの青色のエンディングを見て、出てきたところで柔らかく光る青にまた泣いた。



「アオサギと少年」であり、「君たちはどう生きるか」である

「る」の丸がとても小さくて、少し「ろ」のようで好きだ。


私が見るもの、あなたが見るもの

この映画はわたしにとって星で言えば5、100点満点で言えば5億点。しかしあまりしっくりこない。

たぶん私は、私の人生がスタジオジブリと重なっていることが嬉しいのだと思う。この記憶を、光を持ってずっと歩いていくんだろうと思う。ジーナの庭のように明るいところを夢見ながら。


友人にお前は好きだと思うよって言われて、わたしも僅かな反応を見ながら私は好きだろうなと思ってて、実際に見たら好きとか超越してた、うまく言えないけど一生引きずると思う

みすきーで呟いたやつ





「君たちはどう生きるか」、良かったです。





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