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自宅ショップをしていた話し

私は、今までの人生の中で、何度か東京と長崎を行ったり来たりしている。

便利な都会の生活を手離し、不便さてんこ盛りの田舎へ移り住むことを決めたのには、「田舎でカフェを併設した自宅ショップを開く」という目的があったからだった。
住居兼店舗としての利用が可能なこと。
DIYでショップ作りが出来ること。
そういう条件を念頭にあちこちの物件をあたっていると…
中心部から少し離れた閑静な住宅地に、何やら良さげな中古一戸建てを発見!?築齢23年という古さのものだったが、予算や諸条件をほぼ満たしており、購入決定!

和室を洋室へ、1階の天井を取っ払う、壁を作る、などの大きな改装工事は業者さんに頼み、内部の細かい所や店舗用什器等はDIYで揃えていく作戦。

家のリフォームが終わり什器も完成すると、次は、カフェメニューの検討、手作り雑貨の仕入れ、委託作品の受け入れ準備。
飲食を伴うという事で、保健所へ食品衛生責任者の資格を取るべく講習も受けに行った。

ここまでの準備が整うまで約1年。
そして、待ちに待ったオープン!
当日は、開店時間前からお客さんが並ぶという順調なスタートだった。
4~500戸の住宅地にコンビニが1件あるだけという場所だったことや、自宅の一部を雑貨屋さんにするという物珍しさも手伝い「カフェ併設の雑貨屋さん」は、口コミですぐに広まった。

やがて、市外県外からのお客さんも来てくれるようになっていく。

全国の作家さん達から委託を受けて展示販売していた手作り品の評判も良く、リピーターの数も徐々に増えて行き、このまま順調にやっていけるかと思われたのだが…

①駐車場問題
これは、家を購入する時点でわかっていたことだったが、田舎育ちの私の中には、そう四角四面な感じではなく、何とか出来てしまうんじゃないか?的な緩い考えがあった。物件を探している段階で、使用目的ははっきり伝えてあったし、事前に「この地域って少しぐらいの路上駐車は大丈夫でしょうか?」と不動産屋に尋ねたところ「あ~それは大丈夫ですよ。この辺はみんなどこにでも停めてますからね~。それは全く問題ないですよ!」との返事だった。

しかし、考えてみれば、路上駐車黙認が通用するかどうかを、念押しする私も変だし、不動産屋が何を根拠に「大丈夫!」と断言したかもよくわからない。  
ともかく、田舎ならではの緩さを期待しながら、家の前に、ギリギリ留められる3台駐車でスタートし、それなりにやりくりが出来ていたものの、半年を過ぎたあたりから徐々に「これって…ちょっとマズくない?」という空気を感じ始めるようになっていった。
世の中は、人の商売を温かく応援する人ばかりではない。
これまでチラリともしていなかったパトカーの姿を頻繁に見かけるようになったり、回覧板に「路上駐車はご近所の迷惑になるのでやめましょう~」と、ひときわ目立つように書かれてくるようになった。

やっぱり、道路交通法は守らないと…ってことよね。
かと言って、近隣に借りられる駐車場もないし。

②客足の差が及ぼすリスク
昼食を取れないほど忙しい日があるかと思えば、見事に閑古鳥の日もあり。
お客さんの動向が毎日極端に違う。曜日や天気に関連していれば少しは予測も出来ると思っていたけど、それも全く読めず。
この客足のバラツキは、光熱費、カフェの仕入れや下準備に大きく影響した。食材の廃棄率が上がれば、当然のことながら利益も下がる。こだわり抜いて提供していたカフェメニューは、コーヒーを残して撤退するしかなかった。

③自身の制作時間の確保
週に2日の休みは、カフェの仕入れ、委託作家とのやり取りや在庫管理、売り上げの振込、事務処理、雑用等に追われて瞬く間に過ぎて行く。自身の制作のための時間が取れない。集中できる時間がない。

半年、1年と続けて行く中で、何度となく軌道修正を繰り返した。
・営業日を減らす。営業時間を短くする。
・リスクの高いカフェの営業をやめて手作り品対応のショップだけにする。
しかし、それでも、思ったようにうまく時間を使うことが出来ず、制作は滞るばかり。焦りだけが日増しに募っていった。

自宅ショップを始める前、私には、二足の草鞋をうまくこなしていけるという漠然とした自信があった。何よりも、どちらも自分が好きなことなのだから、大丈夫!という自信。

しかし、単なる感覚的な自信は、非常に軽くて脆いことに気づいた時には、もはや、抱え込んだストレスに耐えきれなくなっていた。

二兎を追うもの一兎も得ず。                     

悩み抜いた末に、自宅ショップそのものをやめる決心をした。

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それ以降、自宅は、自身のアトリエであり月二回の教室をする場となった。収入は減ったが、制作に取り組んだり、アーティスト同士で展覧会を開いたり、自分を高めていくための時間が大幅に増えた。

結果的には挫折とも言えるこのチャレンジだが、長年やりたいと思ったことを実行した中で得たものはとても大きい。
失敗から学び取るものは数多くある。良くも悪くも、無駄なことは何ひとつないのだと自分に言い聞かせて、また前を向く!

私は器用な人間ではない。作るか売るか、その2択であれば迷わず作るを取る。

あ~マネージャーが欲しい・・・

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