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ホールインワン−たった1分で読める1分小説−

「なぜだ。なぜプロになれないんだ」 
 男は、プロゴルファーを目指していた。だが何度プロテストに挑んでも合格できなかった。

「もう死んだ方がましだ……」
「おいらに任せてよ」
 そこに天使があらわれ、男があわてふためいた。
「嘘だって、死ぬのは嫌だ」
「なんか勘違いしてるね。僕はゴルフの天使だよ。僕の力でホールインワンができるよ」

 ホールインワンとは、一打目がカップインすることだ。
「ほんとか。そんな能力があるなら、プロどころかマスターズも優勝できるぞ」
「それは無理さ。その力は人生で一回だけさ」
「……たった一回か」

 男はプロテストに挑戦し続けたが、天使の力は使わなかった。一回こっきりなので、勝負所を見極める必要がある。
 天使も天使の世界では落ちこぼれて、男と気があった。二人は挑戦を続けた。

 そして、その勝負所がきた。やっとたどり着いた最終テスト。ここでホールインワンを出せば、確実に合格できる。
「頼むぞ、天使!」
「任せてよ」
 天使の手が光り始めた。

 その数時間後、男は意気消沈していた。
 天使がしゅんとした。
「ごめん……失敗して」
 天使の力で打ったボールは、一打で直接カップインをした。
 ホールインワンなのだが、それは隣のホールのカップだった。男の一打はOB扱いとなった。

「あー、恥ずかしい、恥ずかしい」
 天使が顔をまっ赤にして、身悶えした。そしてこう続けた。

「穴があったら入りたい」


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