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りんたRe

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日記や雑感です。 明日を思い出して。
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記事一覧

Dear, dear, dear people of the world.

"Do not come around Mt. Fuji during the holidays." The announcement was made. Every year in the summer, the "Fuji Skyline", a road around Mount Fuji, is opened to traffic, but this year it is not. Some of my acquaintances who live around Mt

魔法のない暮らし(テーマ 水)

朝風呂 仕事は不首尾だ。言ったことを違える人や、我を通して捻じ曲げる人が多すぎる。人ばかりでなく自分も力がない。 風呂。 湯を貯める。唯一リラックスできる時間。 普段防水のとても古いAndroidを持ち込んで、音楽を聞いている。もう、防水能力が維持されているのかだいぶ怪しい。諸々疲れていたので当たり障りのないピアノ曲、澤野弘之作曲のなにかを流していた。プレイリストはランダム再生だが、そのどれもが物悲しい。 業務上の返信ミスがないか気になり、ツイッターを確認した。それは

掌編「人」(課題 歌)300/300文字

「お前鼻歌下手だな」 ゴミ箱の隅に不審物と通報。珍しく生身の子供を発見。追い回し、移民局に渡す。車に戻り助手席に座るとコンビの最新アンドロイド警官M7が、ハンドルを握り歌っていた 「下手」 「まあ俺は元、人間だから」 「はは、冗談は上手。その曲は?」 「ブルース」 「音痴で懐古か」 「はは、人間らしいだろ」 「最新型だから?」 「ああ音痴も再現できる」 「それは先週強盗に殴られてからだろ?修理は?」 「いい。あれで、俺は人間だって気付いたんだ」 「最新鋭になると人間と区別が

ふたたび生命となるために

ふたたび生命となるために  お婆ちゃんは、井戸と東屋のある木造の平屋に住んでいる。一見雑草だらけの庭。毎日手入れに熱心だ。花の苗が植えられていて、季節ごと庭のあちこちで、色とりどりの蕾が膨らむ。生命に満ち、美しい。    この庭で、花が咲くことは決してない。    お婆ちゃんは蕾のうちに鋭利な鋏で茎を切る。郵便配達夫、蕾をもらいにくるパン屋の女将、街の人々に分け隔てなく配る。  やがてそれは、美しく花開き、街を彩る。  「なぜ庭で咲かせないのです?」取材の際にそ

掌編「船」(題 涙)299字

人類、数えて三度目となる愚かな大戦の終結 勝敗はない。急速な海面の上昇により戦争どころではなくなった。互いの利益よりも、種の存亡をかけ自然と向き合う 災害は国境線を消滅させた。海や多くの川を持つ国の境界が消えた。 10年後、海面が50センチ上昇。人類は残り少ない土地に身を寄せる。いくつかの政府が、荒れ狂う海流の調査の折に、戦争で沈んだ艦船を幾つも発見 モニターに映る、海底に横たわる船は、激しく揺らめく。内部から大量の水が噴出しているようだ。この不思議な現象は、温暖化以

掌編「私へ」

私へ 君と一緒に薬を飲んで入れ替わったこと、感謝してる あの後、私は君の酷い境遇を克服するためあらゆることしたよ。共感じゃなくて身に染みて、ほんとうに辛い状態だった。 おかげで私は、精神的にとても成長できた。 あのあと君は私の姿で才能を発揮して。凄いよ私がスポットライト浴びてる!フォロワー数やばくない?ほんとに私なのかな笑 元に戻ろうってメッセ、嬉しかった、覚えててくれて。 だけど戻ったら、その眩しさを維持できる自信ない。 スキャンダルで苦戦してるの、誤解だって

短編「月光生」

月光生 「つまり、自分が永遠でなくなるのが怖いと。お変わりありませんね。最近は、こういう薬が出ていて……」 痩けた頬に最低限の化粧だけをした医師が、視線を決してこちらに向けないままディスプレイに示したのは、半月状の種子だった。 今日ようやく診察にやってきたわたしは、しばらく人と話をしていなかったので、咄嗟に声が出なかった。「はあ」と言ったつもりが、嗄れた鳴き声のような音が出た。 「ちょうど試供品があります。試してみますか」 うなずいて、マニキュアが剥げて爪の根元が白くなった

掌編 「午前三時半 BAR地下一階」 題「酒」

「あなたなしでは、いられない?…なんて。 古い歌だっけ。あったよね。確か。 ねえ、ね。聞いてる? ジンライム美味しいよ。 香りと、熱さね。喉に滲みるのがいいよね。胸が焦げて身震いするよ。これ、何かに似てる。 うーん…。あ、酔ってて聞いてないでしょ。もう眠いの?いつもそうだよね。じゃあ言うから。むしろ寝てていいから。 ねえ。一緒に飲んでると、身体中のすべて、細胞も脳も眼球も内臓も足の指先も指輪もね、すべてあなたになっちゃうような、あなたと一つになった気がするんだよ。この感覚、わ

言語結晶

人にあまり興味がないせいか、自分も人から覚えられたり認識されると思っていない。相手のこともろくに覚えていないし、相手もこちらをすぐに忘れる。最初からこうではなかった。軽薄に誰かを強く強く信じたし、予想外に裏切ってしまったこともある。自分が行いうることを人がしないと思うのは想像力が無さすぎる。ここ数年は裏切られてもよいと思う人だけを信じて、誠実に向き合うことにしている。痛みはある。痛くて良いのではないか。言わなければ誰も傷つくことも、不快な思いをすることもない。共感を求めない感

文フリ東京ありがとうございました!

遅くなりました。イベントに参加して来たのでご報告いたします。 今回私のブースにお越しいただきありがとうございました! 気にかけて下さった方や、ブース運営にご協力下さった方にも御礼申し上げます。 委託本もあって、ブースはとても賑やかでした。 開始直後に買いに来て下さる方がいたりと、今までにない体験ができました。 委託として置いた本は、私も全て読んでいます。とても好きな本です。買いに来て下さる方も同じ傾向の本が好き、ということで、楽しく交流することが

300字短編「呼び名」(オリジナル)

お題に沿って300字ショートショートを記す企画に参加します。 今回のお題は「散る」です。 呼び名 休日二度寝、午前九時、息子の拙い声と共に揺さぶられて起きた。 「お花見に行きたい」 と何度も言うので、連れて出る。 外へ出るとき、この子は最初だけ大人しい。 今のうちに、と急いでコンビニに寄っておにぎりを買って、お花見の時期を過ぎて人のいない公園に入った。 黄色い滑り台と、もう誰も見向きもしない葉桜と水色のベンチがある。 一緒に座って、薄く白いビニール袋か

300字短編「消えないほくろ」(オリジナル作品)

企画参加の短編ショートショートです。 「Tw300字SS」さま(@Tw300ss)の企画です。 午前9時までならぎりぎり間に合うかも知れない、ですが、今できたところです。遅れました。 欄外かも知れませんね。次は時間を守れたらいいな。 第30回のお題は「飾る 飾られる」300文字以内。 ここから本編です。 「消えないほくろ」 私は今日も、鎖骨の下に一つほくろを描く。 最初は偶然だった。小学生の頃にペンを逆に持っていて、たまたまここに一つ点を打ってしまった。痛

俳句と300字短編「給水塔の空」(オリジナル)

「Tw300字SS」さま(@Tw300ss)の短編ショートショート掲載企画に参加します。 先行して、ツイッター俳句企画 「せつない句会」さま(@setsunaikukai) へ投句した俳句があります。 その際の様子はこちら(ツイートへのリンクです) 春立ちぬ給水塔の空ひとつ / りんた この句を作る素、のようなものを、今回の300字SSに記しました。 第二十九回、お題は「氷」でした。氷雨、氷河、氷菓など、様々な氷のある光景がテーマです。 お題ツイートの詳細は

文字や文章についての雑感20160725

まだ小さな頃、周囲にあるいろいろなものの彩りを強く感じるような夏に、好奇心から山へ分け入って迷子になったことがある。最初は獣道なのか雨水の通り道なのかわからない道を進んでいたのだけれど、途中にある倒木を乗り越えた先の細いみちのようなものを進み、自身の腰ほどの高さまで伸びた雑草を踏み分けて分けて行きふっと疲れて、振り返ると道がなくなっていた。 少し戻ってみたのだけれど、足場が悪くて何度も転びそうになった。一歩、一歩と踏みしめることができる場所を選びながら戻っていたはずだけ