見出し画像

【異聞】「天竺徳兵衛 蛙」〜新しい女〜

駅前の丸井の2階にある、サンマルクカフェの窓際のカウンターに座る。
窓の外のデッキを、母親らしき若い女性が、小さな男の子の手を繋いで歩いていく。何か気になるものがあるのか、男の子が駅の方へ向かって母親の手を引っ張る。
朝の通勤時間帯を過ぎて、駅前にはどこか緩んだ空気が流れている。
わたしはブレンドを一口飲んだ。
70歳を過ぎ、仕事も辞め、子供達は独立し、妻は先月亡くなった。年金やらなんやらで、幸い年寄り1人暮らすには不自由ないが、1日が無駄に長い。仕事ばかりしてきたせいで、これといった趣味もない。学生時代はレスリングに打ち込んだこともあったが、この歳から再開するものでもないだろう。
長らく、出版社で編集の仕事をしていたから本を読むのは好きだが、最近は老眼でそう長くも読めない。
なので、こうして喫茶店に入っても、外を眺めていることが多い。
ふと、視界に入る光景に違和感を感じ、物思いを中断した。違和感の原因はすぐわかった。ここから10mほど離れたデッキ上に、カエルがいるのだ。こちらに顔を向け、前脚を揃えてお座りのような格好で鎮座している。体全体の大きさはここからでははっきりしないが、頭の位置がデッキの手すりと同じ位置なので、体高は70センチほどか。両手で抱える縫いぐるみくらいはありそうだ。尋常な大きさではない。
身体の色は緑が混ざった茶色で、ガマガエルを大きくした感じだ。昔、筑波山に登った時、こんな感じのカエルのオブジェが登山道にあった。
周りに人もいるが、他の人には見えないのか、素通りしていく。若い男が気づかぬままカエルの前脚を踏み、驚いたカエルが脚を振った。その途端、男は足を掬われ、頭から地面に突っ込むように転がった。身を起こした男は何が起きたか分からないようで、辺りを見回している。
「ゲコ」
一声鳴くと、ペチャリ、ペチャリと腹を引きずってカエルはやや前進した。身体が大き過ぎて跳べないのだろうか。いや、そんなことはどうでもいい。あのカエルは一体なんなのだ。幻覚が見えるほどボケてはいないはずだが。
そう思ってカエルを見ていると、目が合った。金色の目がこちらを見つめる。カエルはゆっくり瞬きすると、キュッと体を縮めた。
まさか、そう思った瞬間、地面からカエルの姿は消えていた。次の瞬間、カフェの窓ガラスに衝撃音が響いた。カエルがひとっ飛びでガラスまで跳んだのだ。重い衝撃音にも店内の客は気にする様子がない。カエルはガラスに激突して地面に落ちるかと思ったが、そこは流石カエルというか、窓ガラスに張り付いた。ちょうどサンマルクのロゴの上にベタリと張り付いている。
カエルは頭をこちらに向け、わたしを見ると、「ちょっと出て来て」と言った。カエルが喋るものかと思う向きもあろうが、実際喋ったのだから仕方ない。しかし、カエルに命令されてすごすご従うのも癪だ。仕事をしていた時は、無茶な作家の要求を色々飲まされたものだが、相手は人間だった。
「早く」
今度は声に多少、苛立ちが含まれていた。
目の前のトレイにはブレンドと、チョコクロワッサンが載っている。チョコクロワッサンはまだ手付かずだ。カエルの声を無視して、チョコクロワッサンに手を伸ばすと、すかさず声が響いた。
「チョコクロ食おうとしてんじゃねーよ!」
「うるさい。用があるならそっちが来い!」
思わず怒鳴り返したら、一斉に周囲の視線が注がれた。
それよりも窓の外を見ろ!と思ったが、やはりカエルには気づかないようだった。
「店の中はエアコンがきつくて、皮膚が乾燥するんだよ!あんたが少しずつ水掛けてくれるならいいけど」
「やなこった」
カエルは、ズルズルとガラスを滑り落ちていった。
やれやれ、どこかへ行ったかと思ったのも束の間、今度は店の入り口に現れた。扉に何度も体当たりし、隙間に頭を突っ込んでもがいている。どうやら腹がつっかえているらしい。カエルは両前脚を扉にかけ、のけぞるように思い切り突っ張った。その途端、腹のつかえが取れ、勢い余って転がりながら店内へ入ると店員の足にぶつかって止まった。
カエルにぶつかられ、転んだ店員の背中によじ登ると、カエルは辺りを見回していたが、わたしを見つけると顔目掛けて飛び掛かってきた。
咄嗟に手でガードしたが、間に合わなかった。
わたしは半ばパニックになりつつ、カエルの脇腹を両手で掴んで何とか顔から引き剥がした。
映画「エイリアン」で、顔にフェイスハガーが張り付いた兵士の気持ちがよくわかった。
そんなことをわかっている場合ではない。カエルは腹を掴まれてくすぐったかったのか、ギャハハ!とカエルらしからぬ笑い声をあげると、背中へ移動した。重いが顔よりマシだ。
「席移動して。ここ、すっごい背中に風当たるから」
カエルは子泣き爺のように背中に張り付いたまま、肩に頭を乗せて命令した。
知るか。年寄りの暑がりを舐めてもらっては困る。エアコンはデカイ扇風機だと思ってる。風は直接浴びてなんぼだ。それにこの席は外も見えるし気に入っている。拒否の気持ちを込めて、再度、腹の皮を摘んでやると、ぎゃろ!と変な声を出して身をのけぞらせると、仕返しとばかり頭に噛み付いてきた。噛み付くといっても、歯はないのでどうということはない。しかし、頭から丸呑みする勢いで人のメガネを舐め回すので、北斗神拳よろしく、適当に目のあたりを突いてやった。手応えはなかったが、カエルはようやく口を離した。髪に手をやると、カエルの唾液でベタベタしている。心なしか、減った気がする。この歳になると髪の些細な増減に神経質になる。カエルは口の中に入った髪の毛をベッと吐き出した。あぁっ!髪の毛と唾液にまみれたチョコクロワッサンを見て思わず声が出た。カエルはスッキリしたように前脚で口の辺りを拭うと、まぁ、そういうわけだから、と言った。
人の髪の毛を無断で引き抜いておいて、どんなわけも通用するか。
「瀬戸川に連れてって欲しいんだけど」
瀬戸川は駅から歩いて10分ほどのところにある川だ。
それほど大きな川ではないが両岸には遊歩道とベンチがあり、桜の季節はそれなりに賑わう。
「そこが住処なら自分で帰れ」
「住処じゃねーわ!こんなでかいカエルいたら怖いだろ!」
その自覚があるなら、これまでの振る舞いを少しは反省して欲しい。黙っていると、カエルは話し出した。
それはこんな確認から始まった。
「あんた、わたしのことカエルだと思ってるでしょ?」
YES!
また髪を引っ張られた。

----------------------------------------------------------------

カエルの話はカフカの「変身」のようだった。
要するに、朝起きたらカエルになっていた、というのだ。
ただし、それまでの経緯は穏やかではなかった。
数日前の朝、カエルになるまでは市内の私立校に通う女子高生だったらしい。カエルが言うには、自分はクラスの女子の中心的な存在で、けれど1人、目障りな人物がいたらしい。
「休み時間も本読んでるタイプでさ、いるでしょ、そういう陰気な女」
確かにいる。ついでに私見を付け加えさせてもらうなら、わりとそういうタイプは嫌いじゃない。
「あのね、今ね、おっさんのタイプの話してんじゃないの。アンダスタン?」
また髪を舐められそうになったので、我流北斗神拳で牽制してやった。これ以上、抜かれてたまるか。
「陰気なくせに何故かわたしにはやたら上からくる女でさー。わたしが赤点なのも首にじゃらじゃらしたネックレスつけた男と一緒にいんのも、おめーになんか関係あんのかっつーの」
カエルはしばし黙ったあと、突然結論を言った。
「で、まぁ、色々あってさ、数日前、川に突き落としてやったのよ。いや、突き落としたっていうか、事故っていうか、むしろなんなら自分で落ちたんじゃね?っていうか」
言い逃れが完全に犯罪者のそれと同じだ。
「怖くなって逃げたんだけど、そんな深い川じゃないし、死んではないと思うんだけど…で、次の朝起きたらコレよ。あり得んくない?むしろわたしの方がかわいそくない?」
「河合則内?」
「誰だよ、そいつ」
カエルは目を瞬かせた。
「なるほど、まぁ話はわかった。犯罪者は事件現場に戻るって言うしな」
「誰が犯罪者だよ!安否確認だよ!」
「だとしたら遅すぎるだろ!何日経ってると思ってんだ!」
「この姿見ろよ!普通、2、3日引きこもるだろ!ショックで!」
「グレゴール・ザムザを見習え!」
「でもあいつ、結局死んでんじゃん!」
「くっ…」
まさかカエルがカフカの「変身」を読んでいるとは思わなかった。
「あんたさ、わたしのことバカだと思ってるでしょ?わたしだって引きこもってる間に色々ググったり読んだりしたのよ」
「へー」
「で、まぁ今日、頑張って出てきたわけ。いつまでも引きこもってても仕方ないし。でも川までは遠くてさ。身体もうまく動かないし」
「……」
わたしはここでずっと気になっていた疑問を口にした。
「ところでなぜわたしにしか君は見えないんだ?」
つっつっつ。カエルは喉を鳴らした。同時に、前脚を振った。自分では人差し指を振ったイメージなんだろうが、実際には前脚で思い切り人の頭を叩いている。今はカエルなのだという自覚をそろそろ持って欲しい。
「それなんだけど、子供には見えてるみたいね」
なるほど。やはり大人より勘が鋭いのだろう。
さっきの男の子も、もしかしたら、このカエルに気づいて母親の手を引いたのかもしれない。
「親はどうなんだ?引きこもっている時、親とは話さなかったのか?」
「親ね、声は聞こえてるみたいだったね。姿はわからないけど。どのみちうちの親、あんま家に居ないし、放任だから。2〜3日娘の姿が見えなくたってどうってことないのよ」
そう言うとカエルは肩から身を乗り出し、水の入ったグラスを咥えると、頭を振ってグラスごと背中に放り投げた。どうやら意地でも背中に水をかけたいらしい。水が飛んだようで、後ろの客がこちらを睨んでくる。グラスを拾って一応頭を一応下げたが、とんだとばっちりだ。
「あんたがかけてくれないからよ。乾燥は女子の敵なの」
以前、国語辞典の編纂に関わったこともあるが、「女子」の定義がこんなに複雑になっていたとは知らなかった。
「でね、大人でもいるのよ、あんたみたいに見える人が。基本的に、わたしのことが見える相手は、わたしにも見えるんだけど、子供以外だとまぁ少ないわね。でも、数が少ないからこそ、見える相手になんとなーく、共通点があることに気づいたの。あんたさ、さっき事件現場に戻るとか言ったじゃない?それって案外、あんた自身のことだったりするんじゃないの?」
言っていることがよくわからない。
とにかくわたしはカエルをおぶったまま、川へ向かうことにした。最近、ニュースを見ていないが、女子高生が1人いなくなったら、騒ぎになっているだろう。だから多分、カエルが言うように死んではいないのだろう。だとしたら、何のために川へ行くのか。
それは、川に着いてみたらわかった。
カエルに指示されたように、川にかかった短い橋まで行くと、向こうからまさに"首にじゃらじゃら"何やらぶら下げた茶髪の男が歩いてきたからだ。でかいカエルも剣呑だが、こういう輩も友好的とは思えない。少なくとも、背中にカエルをおぶった状態では出会いたくない人種だ。
男はわたしに気づくと、立ち止まり、様子を伺うように見つめてきた。わたしも何となく立ち止まり、川を眺めるふりをして、男の視線から逃れた。背中でカエルが「代わりに来たって言って」と囁く。
何の話だ、聞いてない。

----------------------------------------------------------------

近くで見ると男は背が高かった。180cmくらいあるだろうか。痩せて、手足が長い。やや猫背で、カーゴパンツのポケットに手を入れて、わたしを見下ろしている。
「あ?なんて?」
男は唾を吐いて、わたしの言葉を聞き返した。
わたしはカエルに言われたことを繰り返した。
男は上を向いて鼻の下を擦ると、白いシャツをパタパタさせた。
「てか、誰だよ、てめぇ」
もっともな質問だと思うが、もっとも答えにくい質問でもある。わたしはふと、先程カエルが言っていた"見える人間の共通点"の話を思い出し、男に聞いてみた。一か八かの気持ちだった。
「このカエルが見えますか?」
わたしは背中を指して言った。
男は答えなかったが、その表情から見えていることがわかった。ということは、どういうことか。
なぜカエルと男はこの橋で待ち合わせていたか。
突き落とした女のことに違いない。
わたしは鎌をかけてみることにした。
「わたしは彼女の親戚でね。話は彼女から聞いてるんですよ。それでねぇ、彼女はもう関係ないからと。"それ"は全部おたくがやったことでしょと」
「そんな理屈が通るかよ。死体が見つからねぇのにそのままってわけにいかねぇだろ。それに親戚だ?嘘をつくならもう少しまともなのにしな」
鎌にひっかかってくれた。
やはりそういうことか。
川に突き落としたのカエルだ。だがそのあと、この男が何かをして女を殺した。だからこの男にはカエルが見えている。
なぜ死体が見つからないのか、それはよく分からないが、とにかくそれを話し合うために今日、会うことにしたのだろう。
しかし、だとするとなぜ警察が動いていないのか。ニュースになっていないのもおかしい。
その時、肩の上でカエルが言った。
「タイプの女が来たよ」
振り向くと、黒のロングヘアの女が近づいてくるところだった。前髪を切り揃え、眼鏡の奥のからこちらを窺うように見ている。
「んだよ、本人が来たじゃねぇか。代理ってのはやっぱ嘘だったんだな。てことは、お前、いよいよ誰なんだ?」
男がこちらを睨む。
どういうことだ?
あの女がカエルが突き落とした女か?
その女は2人に殺されたのではないのか?
仮に、死んでいなかったのだとして、なぜ、その女とこの男が繋がっている…?
男がわたしを見るとせせら笑った。
「どうやらわかってねぇようだな。「男はつらいよ」見たことねぇのかよ」
「男はつらいよ」、優秀な妹にごろつきの兄…。まさか…。
背中でカエルが呟く。
「わたしもさ、気づかなかったよ。兄妹どちらとも、知り合いだったなんて」
なるほど。つまりこういうことか。カエルは、そうとは知らず、年上の男友達の妹を、いじめのターゲットにしていた…。
しかし待て。
では"死んだ"のは誰だ?
なぜ、この兄妹にはカエルが見えている?
カエルが見える者の共通点、誰かを殺したことがある者…。
頭の上で再びカエルが呟いた。
「鈍いねぇ。そろそろ気づいてよ。自分から言うの、ダサいじゃん」

----------------------------------------------------------------

正当防衛だと、黒髪の女は繰り返した。
最初に川に突き落としてきたのは向こうの方だと。
危うく溺れ死ぬとこだった。
だから呼び出して、兄と一緒にやり返しただけだと。
背中でカエルは黙りこくっている。
死んだのは、殺されたのは、背中のカエル、いや、カエルになる前の、彼女だ。朝起きたら、ではなく、死んだと思ったらカエルになっていたということか。
それにしてもなぜ、今日、ここでこの2人が会うと分かったのだろう。
「カエルになるとさ、人間の悪巧みなんてお見通しなんだよ。それにあんた、自分で言ってたじゃん。犯人は事件現場に戻るって」
わたしはカエルの頭を掴むと、背中から引っこ抜くように持ち上げた。カエルが脚をバタつかせて暴れる。
「あんたら2人とも、こいつが見えるだろ?」
兄妹は黙っている。
「このカエルが誰だかわかるか?」
何か勘づいたのか、眉を顰めて、女が一歩後ずさった。
「やってくれたねぇ、あんた。ガリ勉の上にブラコンだったなんて知らなかったよ!」
カエルがわたしの手を蹴って、女の顔に飛びついた。パニックになった女が暴れ、男が必死にカエルを引き剥がそうする。
そこへ、甲高い子供の声がした。
「あー!さっきのカエルさん!カエルさん虐めちゃやー!」
振り向くと、駅前に母親といた男の子だった。
男の子は母親の手を振りほどき、こちらに向かって駆けてくると、男にしがみついた。男の子に気を取られ、男が女から離れた隙に、わたしは女の足にタックルすると抱え上げた。レスリング、案外まだいけるかもしれない。
足を持ち上げられた女が、カエルと共に欄干から川へ落ちていく。
「てめぇ!」
男がポケットに手を入れたのを見て、咄嗟にわたしは男の子を背中に回した。男がポケットに入れた右手をサッと払った瞬間、右腕に熱を感じた。痛みはさほどない。大丈夫だ。
昔、癇癪持ちの女流作家にワイングラスを投げつけられて、顔についた傷より浅い。
わたしは男へ一歩近づいた。男は気圧されたように後ずさった。それを見てわたしは威嚇するように血の流れる腕を突き出した。男はナイフを投げ捨てると、何か喚きながら走って行った。
それと入れ違いに母親が悲鳴を上げながら男の子に駆け寄る。
母親が去り、橋に1人取り残されると、わたしは欄干に寄りかかって川を覗いた。
女を咥えて、カエルが川岸へ上がるのが見えた。
わたしは男が捨てたナイフを拾い、橋を渡ると堤防の斜面を降りて行った。
行手を遮る雑草をナイフで薙ぎ払い、川岸へ辿り着いた時には足がふらついた。依然、腕からは血が出ている。
カエルはまだ女の頭を咥えていたが、わたしに気づくとひと飛びでやって来た。
「まさかカエルになってまで川に突き落とされるとは思わなかったよ」
カエルの不平を無視してわたしは尋ねた。
「女は生きてるのか?」
「この高さで死ぬもんか。一応、わたしがクッションになってやったしね」
「そうか、この腹が役に立ったな」
わたしはカエルの腹を軽く叩いた。
「落として済まない」
「まぁいいよ。そろそろ水に入りたかったし。それよりあんた、その腕どうした?」
「男に刺されてね。まぁ問題ない」
「見せてみな。"ガマの油"を塗ってやるよ」
「そうか?じゃあせっかくなので塗ってもらおうか」
そう言ってわたしは腕を差し出す振りして、カエルの喉をナイフで刺した。皮膚を突き破った感触はあったが、そこから先の手応えはなかった。まるで、風船でも刺したようだった。カエルは一声もあげなかった。
わたしは喉から腹へかけて、カエルを切り裂いた。
すると血や内臓の代わりに白く濁った液体と共に、制服の女が出てきた。胎児のように丸まり、全身粘液で濡れている。わたしは女の首筋に手をやった。どうやら死んでいるようだ。いつの間にか、切り裂いたはずのカエルは消えていた。
わたしは制服の女をそのままにして、川に落とした女のところへ向かった。こちらはカエルが言ったように気を失っているだけのようだった。わたしは女を担ぐと、再び堤防の斜面を登り始めた。

----------------------------------------------------------------

アパートの部屋に戻り、女を着替えさた。
とりあえず服は妻のものにしたが、いずれ、わたし好みのものに替えよう。着替えさせた女の両手足を縛ると、自分の腕に包帯を巻いた。
それでようやく一息つくと、押し入れから"髪"がはみ出ているのに気がついた。
わたしは舌打ちしながら押し入れを開け、そこに転がっている妻を蹴飛ばした。新しい女も手に入ったし、コレは川にでも捨てるか(終)

----------------------------------------------------------------

ありがとうございます

これからも色んなアーティストの胸熱なドラマをお伝えしていきます。 サポートしていただいたお金は記事を書くための資料購入にあてさせていただきます。