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「棚の間」武村賢親

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琳琅 第3号に掲載されている作品です。 クレプトマニアの妻に振り回される夫。
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#クレプトマニア

琳琅 第三号より、「棚の間」武村賢親

7  クリニックを出て西口公園の方へと歩みを進めながら、私は榎田さんの言うところの心的ダ…

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8  ネット通販の大頭で全国の書店数が年々減り続けている。これもまたワイドショーのニュー…

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3年前
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9  欲求のすり替えに挑む本番当日は、考えうる限りの万引き対策を路子に施した状態で家を出…

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10 「不安感やストレスの原因を見つけて解消する。再発したどの患者さんも日常になんらかの…

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11  残暑ふるわぬ今夏とはいえ、クールビズの時期を過ぎて通常のスーツで四分近く走り続けれ…

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3年前
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12  返す商品は事前にトートバッグからかごへと移しておいた。日用品棚と調味料棚を区切る…

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3年前

琳琅 第三号より、「棚の間」武村賢親

13  レジで用を済ませ、興奮冷めやらぬまま出入り口を抜けると、そこには家にいるはずの路子の姿があった。スマートフォンも財布も持たず、ただまっすぐに私を見つめて立っている。 「家にいろと言っただろう。なんで出てくるんだ」 「だって、心配だから」  そう言って路子は私の手から提げられているビニール袋に視線を落とした。酢豚のパックと紹興酒のラベルが透けて見えている。 「これは夕飯のおかずと、晩酌用だ。ヨーグルトもシイタケも、ちゃんと返してきた」  いや、ちょっと待て。