琳琅 第三号より、「棚の間」武村賢親
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レジで用を済ませ、興奮冷めやらぬまま出入り口を抜けると、そこには家にいるはずの路子の姿があった。スマートフォンも財布も持たず、ただまっすぐに私を見つめて立っている。
「家にいろと言っただろう。なんで出てくるんだ」
「だって、心配だから」
そう言って路子は私の手から提げられているビニール袋に視線を落とした。酢豚のパックと紹興酒のラベルが透けて見えている。
「これは夕飯のおかずと、晩酌用だ。ヨーグルトもシイタケも、ちゃんと返してきた」
いや、ちょっと待て。