【短編小説】ほたてはナオミの夢を見る
死んでいるのに死にたくなるような、暗くて冷たい冷凍庫から取り出されたとき。ほたては、養殖場でのできごとを鮮やかに思い出していた。仄暗い海の底から引き揚げられた、あの瞬間。降り注ぐ陽光は、ほたての眼点を、炙るようにチリチリと焼いた。
蛍光灯も、突き刺すようにまぶしかった。いよいよ、食べられるときがやってきたんだ。クラクラした。ワクワクした。引き揚げられたあのときのように、無垢な夢と希望とが胸中に満ち満ちた。回転寿司店の厨房の、臨戦体制のようなあわただしさに、ついうっとりとし