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【ショートエッセイ】"ありがとう"は一種類だけ

「ありがとう」にも2種類あるような気がしていた。
とりあえず口先だけであいさつのように言う「ありがとう」と、心の底から感謝の気持ちを込めて言う「ありがとう」。

たぶんぼくが普段使っていたのは、口先だけの「ありがとう」だったんだろうなぁ。
何だかやってもらって当然だけど、相手に悪い印象を与えないように・・・。

その裏には自分の思いが見え隠れしていた。
そんなことぼくならいつもやっている。
それができるまでに、どれだけ時間が掛かったんだ。
どうせ見返りを期待して打算的にやってたんだろ。

そう思っておきながら口先だけで「ありがとう」って言っていた。
社会のルールとは言え、何やってんだろうって感じだ。

ある日のことだ。
仕事が溜まってしまって、同僚に手伝ってもらうように頼んだら、
"それ、もうやっといたよ"って言ってくれた。

ぼくは心の奥底から叫ぶように、"ありがとう"を言った。
なんとしても感謝の気持ちを伝えたかった。

同僚はぼくがあくせくと仕事をしている様子に気が付いていて、何も言わずにぼくの仕事をやってくれていた。
本当に嬉しかった。

同じ言うのなら、感謝の気持ちを込めて"ありがとう"を言いたい。
それは相手に左右されることじゃなくて、自分次第なんだろうな。

理由は何にせよ、やってもらったことに素直を"ありがとう"を言えばいい。
ぼくは心の底から"ありがとう"を言えることを知った。

そう、理由は何にせよ、やってもらったことに変わりはない。
"ありがとう"を種別していたのは、ぼくの邪な心のせいだったんだろうな。

今は"ありがとう"は一種類だと思っている。



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