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【連続note小説】日向食堂 小日向真司45歳

日向食堂から歩いて数分の所に工場がある。
何の工場かは真司も知らない。

その工場から昼食時にいつもの常連のお客さんがやってくる。
今日も二人の男性客がやってきていた。
歳の頃は30歳前後だろうか。

二人はそれぞれにあおいに注文をして、料理が出てくるまでのしばし会話をしていた。

「最近思うんだけど、残業のない日なんてないよな」
「全くだ。休日出勤も増えたしなぁ」
「この先、50歳過ぎてもこのまんまじゃ、やってられないよな」
「その頃は家族もいるんだろうけど、給料次第だな」
「あのけちの工場長がそんなに給料あげてくれないだろう」
「言えてる」
「なんだかお先真っ暗だな」

そこにあおいが料理を運んできた。
二人は黙ってそれを食べた。

食べ終えた男性たちが、また会話を始めた。
「まあ、おれたちの仕事も何かの役に立ってるのかもしれないしなぁ。」
「まぁ、いっかぁ、この店の定食が毎日食えるなら、あんなくそ工場でも働いてやるか」

真司の料理には不思議な魔法でもかかっているのか。
真司とあおいは、お互いの顔を見合わせて微笑んだ。

「ただ目の前に並べられた仕事を手際よくこなしてく
コーヒーを相棒にして
いいさ 誰が褒めるでもないけど
小さなプライドをこの胸に 勲章みたいに付けて
僕のした単純作業が この世界を回り回って
まだ出会ったこともない人の笑い声を作ってゆく
そんな些細な生き甲斐が 日常に彩りを加える
モノクロの僕の毎日に 少ないけど 赤 黄色 緑」

(Mr.Children「彩り」)

真司が生まれてから人生を全うするまでを連載小説として描いていきます。

<続く…>

<前回のお話はこちら>

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