横文字の摩天楼

13年ぶりに、ある人と再会を果たすべく、久しぶりの阪急電車に乗る。
線路沿いの古びた家、高層マンションが目の前を通り過ぎていく。
この箱の中ひとつひとつに、それぞれの生活がある。

やたらと綺麗な大阪・梅田に到着した。こんなに整った場所だったっけ、と思い、少し早く着いた私はその迷宮に足を踏み入れる。

どんなに手を伸ばしても届かない天井。
プラスチックの芝生の上で陣取って座る人びと。
転倒防止のガラスを通して見える大阪のビル街。
コンクリートの隙間でのみ生きることを許された草たち。

京都の低い建物に囲まれて生きていると、大阪が都会だったことを思い知ららされる。

思いがけず、スペインでの暮らしを思い出した。高くてせいぜい3階建ての複合住宅か教会の鐘楼くらいしかない村から大阪に帰ってきた時に、山より高い建物だらけで身をすくめる思いをした。

再会したその人は、相変わらず強気で、黒髪が美しくて、昔のように私の知らない場所を案内してくれた。
13年前も、不慣れな私に大阪は吹田のいろんなところを案内してくれた。

彼女の片手には真紅の色をした、スマホがあった。13年前も同じ色のガラケーを使っていた。

私が2年ほど過ごしたスペインの村で一番高い山より高いビルを、見上げることなく私たちは横から見晴らす。
そこから眺める景色が、その人のいつも眺める景色。

このコンクリートジャングルのために一体どれだけ山が削られたのかと嘆く私もいれば、眼下に街ができていくのが面白い、と彼女はいう。

何語なのかよくわからない、でも検索する気にもあまりならないような横文字の名前がつけられたビルが、また作られようとしている。
それを好きさというひともいる。

まったく同じものを見ているはずなのに、全く違う像が結ばれている。
世界はなんだか、おもしろい。



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