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亡くなってからできること #創作大賞感想

戒名彫刻製版師かいみょうちょうこくせいはんしという仕事を知っていますか?

私は、知人がその仕事を始めるまで、まったく知りませんでした。その知人とは、私がnoteのアカウントを管理している「三毛猫かずら」というクリエイターです。

私は、もともと看護師をしていました。看護の仕事は、生きている人間を相手にします。患者さまが亡くなってしまえば、エンゼルケアと呼ばれる死後の処置はあるものの、そこでお別れです。それ以上、看護師にできることはありません。「死」は、看護師にとっては、人間の行きつくさき、誰にでも平等なゴールです。

でも、戒名彫刻製版師の三毛猫かずらと話すうちに、人が亡くなってからも関わる方はたくさんいるのだ、ということを感じずにはいられません。亡くなってしまったらそこで終わり……じゃない。まだできることがこんなにあったのか、と驚きにも似た気持ちでした。

お葬式をする方がいて、お墓を作る方がいて……お墓に戒名を彫るにも、レイアウトを決める人と製版師と彫刻をする人と石屋さんとお寺さんと霊園の方と……たくさんの方々がその人のために何か力を尽くします。

お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、私は5月に刊行した拙著『ナースの卯月に視えるもの』のなかに、戒名彫刻の職場を登場させました。それは、三毛猫かずらの影響です。人が亡くなったあとにもたくさんの方が関わって、その人のことを思う時間がある。そういう仕事がある。そのことに感動したからです。

そんな戒名彫刻の仕事に関わる三毛猫かずらが、お仕事のエッセイ漫画を描きました。

戒名彫刻製版師の「あるある」が、ひとりごとのかたちで紹介されています。なるほど、と思うものもあれば、へえ!と驚くこともあり。クスッとできて、少しほろりとする。そんなエッセイ漫画になっていると思います。

死んだら終わり。
そんな気持ちになることもありますが、自分が死んだあとにも、こんなにたくさんの人がまだ関わってくれる。そう思うと、いつか必ず訪れる「死」に対する恐怖が少しだけ和らぐような気がしませんか。生きていくことも、そして亡くなってからも、やっぱり人はひとりではない。そのことをじんわりと気付かせてくれる、やさしいお仕事エッセイ漫画です。ぜひ、読んでみてください。

#創作大賞感想

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