明日の食卓
瀬々監督のエンタメ極めますお金稼ぎます映画と、お金稼げなくてもいいからやりたいことやります映画の、これはどっちなんだろうなどと、くだらないことを思いながら観た。やりたいことはやれてる気はする(笑)
三人の、実は四人の母親の話だ。ダメな男が相変わらずここでもこれでもかと描かれる。そして子に向き合うのはその子を愛してやまない母親だ。
最近ニュースになりがちな、虐待の加担者とか傍観者ではない。ほんとうに子のことだけしか考えてないようなおんな達なんだ。
「どこにでもいるわたしたちと変わりないおかあさんだった」
主に語られる三人のおかれている状況は、経済的にも違うし、社会的にも違うし、母親の資質としても違う。いかに世の女たちがみなして「母親にむいていないものなのか」がわかる。誰も「理想の母親」なんかじゃない。「母親だからわかる」ことなんてのもない。母親はたいてい子と多くの時間を過ごすので他の誰かに比較するとより観察している時間があるというだけのことで、その観察力がにぶってしまえば、子のことなんてあっという間にわからなくなるのだ。それが示されただけでもこの映画は意味があると思う。母親信仰というのは相変わらず存在し続けているからだ。
「楽園」に似た閉塞感がある映画だけど、どの親子にも生きていれば「明日」が来るところがいい。生きていれば。そして一歩間違えればどの母親も子を殺めてしまう人になりかねなかったという見せ方も、よかった。緊張したけど。そう、この映画は肩がこるよね。
そして、答え合わせがない。こうしておけばよかったとか、こうすればこんなことにはならなかったとか、そういうのがない。
頑張る姉を応援しながらもその姉の金に手を出す弟(これも季節くん)をしょうもないやつだけどこれで勘弁してくれというのもまた母親なんだ。そういう何重もの構造が示されていて、紙一重の世界観がそこにはあって、わたしは好きな映画だ。
オノマチ劇場その三でもある。一見いいとこの奥様なんだけど実はそうじゃない。やくざの舎弟じゃない菅原さんが娘を大事に思うがゆえに一歩引いている父親を数分だけど好演していたけど、ああいうちょっとした場面で彼女の履歴がわかる感じが、この監督のうまさだし、好きなところなんだな。
まとまらんな、相変わらず。PCを買い替えてキーボードってすごいよねと実感する(笑)