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【実録】愛してくれると、信じたかった。

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何千人もの女性を救ってきた女風セラピストは、私を幸せにはしてくれなかった。 彼が私に見せた、歪んだ性癖。 スワッピングに乱交パーティ、欲望渦巻くディープな世界で、私たちは…
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#男女関係

21. 早朝のナイトクラビング

≪ 20. 新たな始まり 「ハルくん、いないとダメ?」 広い玄関で、シンジの声が響く。 「え?いや、」 私は振り返る。 「コーヒー、飲む?」 彼は私を遮り、靴を脱いでリビングに向かう。 私は望んで、シンジに流されていた。 私がソファに座ると、キッチンから声がする。 「ハルくんはいないよ」 パートナー以外と外で会うのはルール違反。 そう、尊から聞かされていた。 2人で会っていいんですか、なんてバカ真面目な質問はできず、私は聞くタイミングを完全に失ってしま

17. 蛇男

≪ 16. 人は人を捨てられないのに。 初めてハプニングバーに行ったのは、遅い夏の終わりだった。 その頃私は、もうほとんどの時間を新宿で過ごしていたと思う。もう何度も尊の部屋に泊まって、一緒にテレビを見て、私が夕飯を作ったりした。 尊は、若い頃からハプバー通いが激しかったらしい。パートナーがいたつい最近まで、よく足を運んでいたと言う。クローズドパーティの仲間にも、そういう場所で出会ったようだった。 行きつけだった場所でハロウィンパーティのイベントがあって、それが私のハ

16. 人は人を捨てられないのに。

≪ 15. 午前4時、私たちの時間 ハル(海/尊)|女風で出会った私のパートナー。 シンジ|乱交パーティーの主催者。作曲家。 尊は靴を脱いで部屋に上がる。 玄関には仕事用の革靴がいくつかと、普段履きのスニーカーが出ていた。 2LDKの家の中は意外と物が多くて、少し散らかっている。 まさか家に来るとは考えていなかったから、彼の暮らしぶりを想像したことはなかったけれど、部屋は現実で溢れかえっていた。 家庭はないようだ。本当に。 『上品な部屋じゃなくてごめんね、そこの

15. 午前4時、私たちの時間

≪ 14. 私を見つけて。 ハル(海/尊)|女風で出会った私のパートナー。 シンジ|パーティーの主催者。作曲家。 かほちゃん|シンジのパートナー。職業女王様。 セナちゃん|ボーイッシュな赤髪の女の子。自傷癖あり。 シンジとかほちゃん、セナちゃんはよくパーティで一緒になったが、それ以外のメンバーは1度きりの人も多かった。 メンバーの1人がバルコニーから戻ってきたので、入れ違いで煙草を吸いに出る。普段は一切吸わないが、こういう時は吸うと気持ちが安らぐ。銀座の画廊にいた頃、オ

8. 水の中の、非現実。

8/29、尊の仕事仲間の誕生日会兼納涼会に誘われた。 仕事終わり、時間に間に合いそうになく新橋でタクシーを拾う。 船乗り場につくと、すでに尊と仕事仲間がいた。 あちら側がの声をかけたであろう女性2人は、浴衣を着てめかし込んでいる。 私はと言えば、職場から着の身着の儘、大焦りで来たからなんだか気まずい。 尊がこちらに気づいて手を振る。 「あっ!葵!間に合ってよかった!」 私も友達を数人呼んでいた。 知り合いが屋台船を貸し切るので、暇だったら来ないか、と。 尊のことは何も

4. 花火の中で、光る海。

私は薔薇を受け取った。 お金で男の人を買って、ごっこ遊びできると思っていたんだ。 賢いふりをしていたけれど、どうやらもう、そうはいかないらしい。 今思い出すと、海とのセックスは面白みに欠けていたと思う。 海が私を誘った世界は、深く、暗く、痛々しく刺激的で、他の全てをつまらなく思わせた。 皮肉なことに、海の世界に引きずり込まれるほど、私は海の欠点に気づいていった。海が本気になっていくのを感じるほど、私の気持ちは冷めていった。 でも当時の私は、この男が横にいればそれだ