蒸しカキよフォーエバー―2022年2月8日

昨晩、生牡蠣を食べたところ、明け方にとんでもない腹痛に襲われた。寝ぼけ眼でトイレに駆け込む。喉に詰まりを覚え、唇もちょっと痺れている。

苦しみに喘ぎながらこれが食あたりか…?と思ったが、風聞で聞きかじった牡蠣の食中毒に比べると症状が軽い気がする。もっと上からも下からも大暴走ドキドキパニックみたいな感じだったはずだ。そう思い調べてみると、俺の患っている症状は牡蠣アレルギーのそれっぽかった。たしかに今思えば生牡蠣を食べるたびにお腹を壊していた気もする。俺は牡蠣アレルギーだったのか、と26年越しに気づく。

幼い頃からカービィのように何でも食べてきて、嫌いなものはないと思っていた。だが牡蠣に関してのみ、「俺」は好きでも「俺の身体」が嫌っていたのだ。ひとつの食べ物を巡って心と体が葛藤する。食いしん坊の二元論か?

ともあれ、牡蠣アレルギーが発覚してグルメレースを辞退しかけた俺だったが、冷蔵庫にはまだ250gほどの生牡蠣が鎮座ましましている。アレルギーだからと放置して腐らせてしまったら事だ。フードロス削減を掲げる非営利団体に目をつけられ、講演会のモニターに☓を付けられた俺の顔がデカデカと映し出されてしまう。

だから今日は酒蒸しにして食べることにした。火を通せば何かそういうウイルス的なのは全部死ぬと周富徳も言っていた。

「カキを塩水で洗う」
「酒に10分ほど漬ける」
「フライパンで酒を熱しカキを入れて蒸し焼きにする」

と生でいただくより工程が増えて面倒だったが、たった数工程で夜中に冷や汗をかきながらトイレに駆け込むことがなくなるかと思えば、なんてことはない。娘を守るお父さんと同じぐらい、何だってやってやる境地だ。

そして嬉しい誤算だったのが、酒蒸しにしたカキは生牡蠣より美味しかったことだ。あたたかく、じゅんわりと濃厚でホロホロな感じがたまらない。

それに火を通しているという安心感が、食事の本来の楽しさを思い出させてくれる。そもそも食事をしながら食中毒の恐怖に怯える状況がおかしい。私達はただ美味しいものを味わいたいだけであって、ロシアンルーレットのスリルに興じたいわけではないのだ。

そんな当たり前のことを思い出させてくれた蒸しカキに、感謝。

明日はカキフライとかにもできたらいいなと考えながら、床につく。

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