カムバック世紀末―2023年3月1日

花粉症がつらい。有り体にいえば地獄にございます。目はかいーし鼻は詰まるし鼻水とくしゃみが止まらんし。顔面丸ごとパカッと外して裏側をケルヒャーで洗いたい。杉の木を根絶する政策を立てたらたぶん支持率上がりますよ、岸田さん。


『電気サーカス』という小説を読んでいる。2000年代初頭、テキストサイトの全盛期におけるネット界隈の人々の交流や私生活を描いた作品。

その中に、テキストサイトの管理人を集めて開催されたクラブパーティのシーンがあり、それに参加した主人公の心理描写があまりに自分過ぎて胸が痛くなった。


集団の中にあって、誰にも話しかけることができず疎外感に苛まれる苦痛。

知り合いがいても、別の友人と楽しく談笑していて話しかけられないもどかしさ。

周りが盛り上がれば盛り上がるほど冷めていき、でも帰るとバツが悪いからそこに留まるしかない息苦しさ。

で、目の前の現実から逃れようと酒に頼り、頭痛と吐き気をこさえて帰路を歩いているときの、何とも言えない虚しさと自罰感。


およそプライドと自尊心だけは立派なコミュ障が陥りがちな思考回路、心理的状況が精緻な文体で余すところなく描かれるものだから、高校時代、大学時代の嫌な記憶を思い出し、電車の中で読んでいてすっかり落ち込んでしまった。


あと、劇中でデパスクッキー(抗不安薬デパスをすり潰して生地に混ぜて焼いたクッキー)というとんでもない代物が出てきて驚いた。他にもハルシオンやサイレースなど、依存性の高さから悪名高い薬剤の名前が平気で出てくる。

確か作中とほぼ同時代にオーバードーズで命を落としたネットアイドル・南条あやの日記の中にも、そういった薬剤を精神科で大量にもらう描写があった。あの時代はいろいろな意味で奔放かつ闇深い時代だったのだなあ。

そう思うと同時に、それでも、いやだからこそ、今の時代よりは楽しかったのかもなあと頭の隅で羨ましがる自分もいる。カムバック世紀末。



【好きな小説の描写】

「ぱたぱたと駆け寄ってくる」

選定理由:可愛らしいから


【苦手な小説の描写】

「そういって彼女は、無い胸を張った」

選定理由:下品だから

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