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脱・駆け抜けて性春──2024年1月2日

・毎年1月2日は祖父母の家に集まるのが恒例になっている。小田原のお刺身や祖母手作りの煮物を食べながら、話の流れで祖父母の馴れ初めのエピソードを初めて聞いた。

・夜、仕事を終えた祖母が帰路を歩いている様子を祖父がいつも下宿の2階の窓から眺めていて、ある日、屋台のラーメン屋さんで祖母が食事しているのを見つけて意を決して声を掛けたのが始まりらしい。何それドラマじゃん。その時代を生きたこともないのに懐かしい気持ちになってしまうのが不思議だ。

・そんな酒の肴を提供されては、と日本酒を700mlぐらい呷ったので今現在へべれけで頭が痛い。助けてくれ。


・押見修造の『おかえりアリス』がとても面白くて昨日深夜に一気に全巻読んでしまった。そして価値観を一気に覆された。

・数年ぶりに出会った男友達が、絶世の美少女になっていた、という出だしから物語は始まるのだが、これはただのTS(性転換)ものではない。

『おかえりアリス』第一巻 P.143

・『僕は男を降りただけで、女になりたいわけじゃないから』というセリフからも読み取れるように、本作のテーマは「性からの解放」である。男だとか、女だとか、そういった性別の檻に閉じ込められて苦しむ高校生たちの物語だ。

・詳しい内容は実際に読んでもらうとして、性別に付属する本能に苦しめられるというのは確かにあるなと思った。

・男は性器に脳味噌がある、という揶揄のとおり、自分含め男はとかく性欲でものを考えすぎる。生殖本能にもとづくものなのだろうが、そういった自分に嫌気がさすことが多々ある。みすぼらしくて、汚らしくて、情けない…。

・いっそのこと男という性別から脱却できたらいいのかもしれない。かといって女性にも女性特有の悩みというのは必ずあるだろう。本能に限らず、「男なら(女なら)こうあるべきだ」という社会通念には少なからず苦しめられる。いたちごっこだ。

・またSNSを見ていると、女性を見下す男性の発言や、行き過ぎたフェミニズムに辟易とすることがある。LGBTの問題も根深い。それもすべては男・女という区分の存在に端を発している。

・そう考えると、"性別"という壁を取っ払って"ただの人"としてひとつに溶け合おう、という性の人類補完計画も、ある意味で理想郷なのかもしれない。そうすれば全員が平等だし、心と肉体の違いに悩むこともない。

・こんなこと、今まで全く考えたことがなかった。与えられた性別を「しゃーない」と甘受していたから、その価値観をわしづかみにされてぐいっ、とひっくり返されたような衝撃を、本作で受けた。


『おかえりアリス』第二巻 P.118

・ただ、本作で女の子になって戻ってきた幼馴染・室田慧は確かに容姿こそ可愛いものの、「でも元男なんだよな…」とやはりどこかで抵抗感を抱いてしまう自分がいる。そういう点で自分もまだまだ男・女というものに拘泥しているのだろう。生涯、性別の檻からは抜け出せない。そう思うと少し悔しかった。

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