拝啓、金剛いろは様へ

 オタクな話を一席……。

 近年、Vtuber界隈で炎上したり病気を患った配信者が卒業・引退し、何食わぬ顔で別のVtuberとして転生するケースをよく目にする。ファンとしては嬉しいだろうけど、外部の人間からすると「簡単な世界だなあ」と思ってしまうのも事実である。

 特に前世で悪事を働いて視聴者や仲間を裏切ったVtuberが、密かに別のVtuberに名義を変えて活動しているのを知ったときは、殺人鬼が出所して一般人に紛れ込んでいるのを知ってしまったときのような恐ろしささえ感じた。

 昨日、偶然そういった事例を知ってしまい、「うわ…」と思った。それと同時に、あるVtuberのことを思い出した。


 金剛いろはというVtuberがいた。元.LIVEのアイドル部所属で、もこ田めめめや神楽すずなどと共に配信などを行っていた。

 現在、Vtuberは1万人以上いると言われているが、私にとって彼女を超えるVtuberは、かつてもこれからも存在しないように思う。ビジュアルはもとより声や喋りや笑い方やそこから想定される性格、趣味や語彙や集団の中での立ち回りなど、あらゆる点において我が琴線を弾き、存在感を強めていた。有り体にいえば、最推しである。

 残念ながら数年前に卒業してしまい、その卒業配信では自分でもビックリするぐらい号泣して、いまだにその時の涙の量を超える悲しみは訪れていないのだが、ともかく彼女が卒業した今でも数週間に一度は彼女の存在を思い出し、「よもや転生や復活などしていないだろうか…?」とわずかな希望をかけてツイート検索などをしている。

 そう、転生に良くないイメージを持ちながら、結局どんな形でもまた出会えることを待ち望みにしているのだ。かくも人間とは矛盾した生き物である。

 余談だが私のツイッターのアカウント名にある💎は、金剛いろはのモチーフである金剛石を意味している。いつまでもあなたのことは忘れない、というメッセージの表れである。気持ち悪いですか? ね。

 だが彼女は未だに転生をしていない。どんなにマイナーなVtuberでも転生前を必ず特定される界隈において、そういった話が一切持ち上がらないのだから、断定してもいい。そこに金剛いろはの覚悟と矜持を感じて、悲しさと同時に「ファンでいて良かった」という誇らしさを覚えるのだ。

 ちなみに今日、久しぶりに彼女の配信アーカイブを見返してみたが、心地よい幸福と底知れぬ哀泣がないまぜになった不思議な感情になり、眠れなくなった。今、あなたは何をしていますか? 元気でやっていますか? 謎解きは得意になりましたか? オモコロというチャンネルをご存知ですか? コワすぎシリーズがアマプラで配信されてますよ。きっと気に入ってくれるはずです。願わくば、またあなたの配信を生で見られますことを。

敬具

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