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鬼畜王アンブレラ──2023年6月14日

・人生で傘を買った本数なら、世界の誰にも負けない自信がある。傘の卸問屋には負けるが、業者を抜きにすれば他の追随を許さない。

・私はよく傘を失くす。というより忘れる。雨の日に店に入り、店から出たら雨が止んでいた。そんなとき、私は決まって傘立てに置いた傘を忘れてきてしまう。そして次に雨が降った時に傘を探して、そこでようやく傘を忘れてきたことに気付くのである。

・しかも運の悪いことに、傘の紛失に気付くのはたいてい、少し遅く起きた平日の早朝だから、コンビニで傘を買う時間的余裕もなく、結局自宅から最寄り駅までの道のりを雨に打たれながら駆ける羽目になる。「アメリカ人は傘をささない…俺はアメリカ人だ…I'm singing in the rain…」と思い込んでいつも気持ちを落ち着かせているが、落ち着かせたところで全身はびしょ濡れである。

・また、折りたたみ傘も失くす。普通の傘よりこぢんまりしている分、目を離した隙にどこかへ行ってしまうのだ。親の監督責任が問われる。しかも折りたたみ傘は値段が高いから、失くした時のショックもより大きい。仕舞ったと思っていたカバンの中になかったときの絶望たるや。

・ただ、Air Tagなどの紛失防止タグで対策するほどでもないなと思う。最近は失くしすぎて、もはや傘を使い捨てとしか考えなくなっている。「失くしたなあ」と嫌な気持ちになった数秒後には「まあ、また新しく買えばいいや」とケロッとしている。女を取っ替え引っ替えしている軽薄な男みたいだ。傘の遊び人。足を組んで偉そうに玉座に座る俺の周りを、色とりどりの傘たちがうっとりとした顔で囲んでいる。

・かくして、この世界には俺の手垢がついた傘がそこかしこに転がっていることだろう。見つけたら教えて下さい。持ち手のビニールを半分ぐらい剥がして、その剥がし損ないがピランっ、となってるが俺のです。無限にあるか、そんな傘。

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