『大阪』岸政彦 柴崎友香 共著

大阪についてお2人の感じておられることが交互に書かれている本。読んでよかった。読むきっかけを下さった方に感謝いたします。
 
 
〔本は岸先生の文章から始まる----岸先生〕
先生の思いが切なくてジーンとします。
奥様のおさいさんとのこと、子供のこと、大阪への気持ち。人たちへの気持ち。
 
  淀川、友人が上新庄に住んでいたので、彼女と淀川沿いを歩き、堤防の傾斜のところで川を見ながらお弁当を食べた日を思い出しました。岸先生は今もあのあたりを歩かれているのだろうな。
 
〔柴崎友香さん〕
彼女が大阪に居た頃に観た映画や美術展の年代ごとの表があり、わたしが行ったのがいくつもあり、どこかですれ違っていたんだろうと思いました。
彼女はアセンスの美術書フロアが好きだったと書かれていますが、わたしにとっては河原町通りにあった京都書院がそうでした。美術書のフロアには、たくさんの画集と写真集、そして学生演劇を含む舞台のチラシが置いてあり、それをいつも何枚か持ち帰って、行ける舞台は観に行っていました。

阪神淡路大震災について書かれているところは、関西人のあの時の思いが語られています。あの時はテレビで新聞で大変なことが起こった。と、たくさん言われていたけれど、首都圏の東京の、東京の人たちの(関西に家族や友人がいる人は違うでしょう)他人事のような、軽さを、ごめんなさい感じていました。
それはアメリカで湾岸戦争のニュースを見た時にも感じた気持ちで、ニュースを見るアメリカ本土の人たちには、中東で起こっていることがどこか他所事のような感じに見えました。
その後、東北の大震災があり、東京でも震度6あったことや距離的に近いこと、原発のこともあり様変わりしました。
わたしは東京に住んだことも、そこで長く仕事をしたこともありませんので、間違っている所はあるだろうと思いますが感じたことがあります。

3年ほど、何回も東京に出張に行き、いくつかの会社の方たちと会い話をし仕事をした中で感じたのは、東京(関東)の人との方が、わたしは気持ちがよく楽ということです。スムーズなの、通じやすいの、仕事もしやすい。
でも、何回かふっと感じた、もちろん一部の人で意識もされていないかもしれない「関西や地方への優越感」それはモヤっとしてザワザワするのです。それから、「関西や地方のことはなんとも思っていない」という蔑視に近いものも感じることもありました。。柴崎さんも感じておられるような…。
といっても、わたしは東京は好きで、一緒に仕事や食事をし、いい時間を過ごさせてもらいました。
 
[岸先生の文章]
「この感覚、この気持ち、胸が痛くなり、頭のなかが静かになる、この気持ち(中略)これといって変わったものもない大阪のふつうの住宅地を、足を痛めるほど時間も歩き続けると気に感じるこの気持ちは、他者に対してのみ持ちうるものである。」
[柴崎さんの文章]
「人の暮らしがあるから好きだ。道端でほんの数秒だけ隣合った人の存在を感じるのが好きだ。誰もいないベンチや階段にも、人の感じが残っているのが好きだ。」どうにかその日その日を生きている人たちが、歩く道、住む部屋、待っているバス停、無数のそれらが集積して、その隙間に自分もいていい気がする、そんな場所が好きだ。そこで生きている人のことを考えるのが好きだ。」
 
わたしはお2人の、人を感じることを愛おしく思っておられる所が好きです。
 
 
表紙の絵と見返しに使われた絵は、アメリカ村にあった「楽天食堂」の店主さんの絵だということです。楽天食堂の担々麺はおいしかったなあ。
 
(岸先生は、立命館大学での講演会に行かせてもらったことがあるので、「先生」とさせてもらいました。)
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