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「ここから何を学ぶ」2021.05.09 FC町田ゼルビア vs SC相模原 J2第13節マッチレビュー

引き分けは負けも同然か。ゼルビアを追い始めたのはここ6年くらいの私ですが、山雅と相模原との試合はJFL、J3時代から観に行っていたので、この2チームとの対戦は特別な感情を抱いてしまう。両クラブがもう「武相決戦」とこのカードのことを呼ばないと決めたのにも関わらず、ぼんやりとしたダービー煽りをしていたのがどうも納得いかない。どうせ煽るなら武相か相武なのかかけて戦えばいいのに。

という訳の分からん感情を文字にすることで昇華しようとしているが、ダービーに引き分けるということは負けも同然だと思っている。異論は認めるけど。でもやっぱり悔しい。だってあの選手が球際の勝負に負けてるのだから。「際」にこだわり続けたあのサッカーとは別のサッカーをしているとはいえ、サッカーを細分化すると行きつくところは1対1の勝負だし。

以下ではなぜここまで相模原にゼルビアの攻撃が封じ込まれてしまったのか。そしてあの失点はなぜ生まれてしまったのかを振り返っていこうと思う。


スタメン

スタメン

ゼルビアは右SHを太田修介から吉尾海夏に変更。それ以外は変更なし。
相模原は前節から4人変更で、GKアジェノールとCBクンデはこの試合がJリーグデビュー。


封じられた攻撃

相模原が自陣に引きこもったことで、ゼルビアがボールを握り続ける展開。速報の段階だとボール支配率は60%を越えていたと思う。この試合に関してはボールを相手から取り上げることに成功したというよりボールを持たされた。そして相模原はピッチに水を撒かず、ボール回しをスムーズに行わせないようにしてきた。これぞアウェイの洗礼。そのため、パススピードが落ちてボール回しのテンポが上がらず、ゼルビアが得意とするワンタッチで繋いで素早くシュートまで持ち込むのが難しかった。

ピッチに水を撒かないだけではなく、相模原は極端なまで自陣に引きこもり守備ブロックを作っていた。この守備ブロックの形は5-3-2。後ろの5枚でスペースを埋め、中盤の3枚は最終ラインとの間を狭くし、縦パスを入れさせないようにする、縦パスが入った場合はボールホルダーに前を向かせないよう厳しく強く行くというような約束事があったように見受けられた。前線の2枚は最終ラインからの縦パスを警戒し、背後へと伸びるパスコースを消すような動き方をしていた。

特に今のゼルビアの攻撃の出来を左右する長谷川アーリアジャスールへの縦パスに対しての警戒はすごく、2人がかりで前を向かせず奪いきる徹底ぶりだった。アーリアがたいていの縦パスを受ける場所がDFラインと2列目の間なのだが、先ほども述べたように、ここのスペースをなるべく狭くなるように意識的にラインコントロールをしていた。逆に2列目がDFラインに吸収されてしまう展開であれば、髙江麗央などののミドルシュートが活きる展開になっていたと思う。

そして相模原にしてやられたと思ったのが、守備においての中切りの徹底ぶり。中切りをしてサイドラインへと誘導するのはセオリーだが、これを3人で協力して中央へとカットインするコースを消し、圧力をかけてボールを後ろに戻させていた。

そもそもゼルビアのSHは逆足配置で左サイドに右利きの平戸太貴が、右サイドに左利きの吉尾がいるということで、サイドをそのまままっすぐ突破してクロスという展開にはなりずらい。必然的にカットインの回数が増える。しかし、この相模原の中切りにより、カットインからのシュートや決定的なパスという選択肢を取ることは難しく、攻撃が上手くいかないことの原因になっていた。

そのため、ゼルビアは後半の頭から右SHに右利きの太田を入れ、サイド攻撃を活性化させた。後半途中には素早くボールを持ち替えることができる岡田優希を入れたことで、多少の改善は見られた。

しかし人を変えただけで、攻撃の形の大枠に変化は見られなかった。それは今のゼルビアの引き出しの少なさを物語っていると思う。アーリアや高橋祥平の加入で質が高まり、やりたいことはできるようになってきた。だがプランAが完成に近づいただけであって、相模原のようにこのプランAを対策してくるチームは今後増えてくるだろう。

じゃあプランBを今から用意するのか、それとも太田と三鬼海のワンツーからの高速クロスのようにパターンAに新たな攻撃パターンを組み込んでいくのかは現場の監督はじめコーチたちの腕の見せ所だと思うが、この引き分けを無駄にせずに進化していってほしいと思う。


油断が生んだ失点

自陣に引きこもった相模原の攻撃の形は、ロングボールを蹴って平松宗に競らせてセカンドボールを回収するところから始まる。この平松が深津と競り合って五分五分のボールにするのがゼルビアの守備陣を悩ませた。

そして失点シーンも深津と平松が五分の競り合いをして平松が勝ったというところが決定的だった。相模原の狙いはゼルビアのCBをサイドに引っ張り出すもので、これがハマったとも言えるだろう。

しかしこの失点にはゼルビアの油断が詰め込まれていた。まずセカンドボールを相模原の舩木翔に拾われたところで吉尾と三鬼のどちらがプレスに行くかが曖昧だった。そして曖昧なままフリーでCBをサイドに引っ張り出すようなパスを出されてしまった。ゼルビアの選手は当たり前のように深津が競り勝ってマイボールにしてくれると思っているから、足が止まって守備へと戻らなかった。

この失点が良い例だが、この試合は完全にセカンドボールを拾い負けていて出足が悪かった。ポポヴィッチ監督が「眠っていた」と表現したのもこの試合に関してはうなずける。このチームの生命線であるところで負けてしまえばこの結果になってしまうのも致し方なかったと思う。


試合結果

町田 1-1 相模原
得点者:20' オウンゴール
    34' 清原翔平

さいごに

やはり悔しいですね。別に負けた訳じゃないんですけど。珍しく全体的に足が止まっていたし。引かれるのは分かっていたんだけど、やることは今までと変わらずにというゲームプランだったのか気になるところではあります。

次節が無敗で首位を走る新潟ということで、琉球戦のように無敗を止めるとこができるのか、それとも他のチーム同様に勝てずに終わってしまうのか。どっちにしろ今のチームの現在地が分かる試合になると思うので楽しみです。もちろんバックスタンドが解禁されるのもバクスタ民としては楽しみです。

今回もお読みいただきありがとうございました。


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