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2020.10.11 FC町田ゼルビア vs ツエーゲン金沢

チームの成長を感じた試合でした。もちろん、前半の試合運びは最悪でしたが、ここで崩れずに後半に同点まで持って行けたことに成長を感じました。

まだギリギリ走れる時間に1点返せたこと、それもチームを支え続けた中島裕希の今季初ゴールだったことが後半の猛攻を作り出したと思ってます。それだけ中島裕希はすごい男なんだ。まだまだやってくれるはずです!!

それでは試合内容に参りましょうか。


スタメン

スタメン

ゼルビア
4-4-2
前節から2人変更
平均身長(GK除く):176.0㎝
金沢
4-4-2
前節から変更なし
平均身長(GK除く):178.3㎝

「寝ていた」前半

試合後の会見では両チームの監督が前半の町田は元気がなかったと言い、ポポヴィッチ監督は「寝ているような状態が続いていた」と表現しました。

試合開始直後はいつものように前線からプレッシングに行くことでパスコースを制限し、狙った場所に相手を追い込みボールを奪う。ボールを奪ったら縦に速く人数をかけた攻撃をするということができていました。

ですが、徐々に相手を誘導してボールを奪うということができなくなりました。その理由としては2つ。ツートップの関係性と最終ラインの関係性から生じた問題です。

ツートップの関係性

リーグ戦の中断期間に安藤が加入してから平戸ー安藤のツートップが定着し、この2人が連動してプレスに行って相手を誘導してボールを奪うということができていました。もちろんそれが上手くハマらない試合もあって、そういう試合がここ数試合続いていて勝てていないということだと思います。

ですがその安藤は累積警告により出場停止に。代わりに平戸とツートップを形成したのはステファン。加入時は「元セルビア代表」に肩書きもあり期待値が高かったものの、現状その期待に見合う活躍が出来ていません。

当然言語の壁があって、意思疎通が上手くいっていないことも関係しているのでしょう。この言語の壁に起因したであろう問題が前半に見受けられました。

それはプレスに行く時、行かない時の判断です。平戸や両SHがスイッチ役となってプレスに行こうとするものの、ステファンがそれに連動して動かないため、ズレが生じ簡単に中央へパスを通されてしまうことが序盤から何度かありました。そのため、平戸はSHがプレスのスイッチを入れてもあえてプレスに行かないという判断をしました。要するに一番危険な中央にパスを入れさせないようにするために自分からはアクションを起こさないということです。

あえて動かないという判断をしたため、金沢はノープレッシャーで自由にボールを回すことができ、簡単にサイドに起点を作ってチャンスを作ったり、思ったところにロングボールを蹴ったりとやりたい放題でした。

ノープレッシャー

またこれがチームとしての判断であれば、中盤以降の選手もそれに合わせて動くことができたと思いますが、これが平戸の個人の判断だったため、SHの選手がプレスに行ってしまい、そこでスペースが生まれてそのスペースを使われて疑似カウンターのような状況が生まれていたりもしました。

さらに前線からプレスに行って相手を誘導してくれないと奪いどころが定まらないため、中盤以降の選手はどうしてもリアクションになってしまい高い位置でボールを奪うことができず、縦に速い攻撃をすることができませんでした。

ピッチ内での判断も必要であると本ブログでは何度も言ってはいますが、あくまでもその判断はピッチ内の11人で共有すべきであり、個人の判断ではただのサボりと見なされてしまいます。だから、深津からお怒りの声が飛んだのです。


最終ラインの関係性

金沢はチームとしてゼルビアの最終ラインの背後を狙うための設計をしていました。FWが引いてゼルビアのCBを引っ張り出してから、その空いたスペースにSHの選手が走り込んで背後を取るという仕組みです。もちろんFWとSHの関係が逆になることもあれば、単に裏に走るだけという場合もありました。

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この背後を取られることを警戒して、あえてリスクを取って最終ラインを高く設定しようとした深津と背後を取られないようにスペースを消そうとして最終ラインを低く設定しようとした水本のところでズレが生まれてしまい、オフサイドトラップがハマらず、背後を取られるという時間が続きました。

もちろん前線がプレスに行かず、制限を設けることができなかったということもありますが、チームとして最終ラインの設定をどうするかという決め事がなかったため、このようなことが起きているのだと思います。

これはポポヴィッチ監督が深津をディフェンスリーダーに任命し、ラインコントロールも彼に一存しているからこそ起きている問題ではないかと思います。昨年までのハイライン癖が抜けていない深津とそれに合わせることができる既存戦力の奥山、自身のスピードの無さに起因する怖さによってラインを下げたがる水本、ただボールしか見ていない小田のこの4人の最終ラインの編成がベストなのか、ライン設定を1人の選手に任せることがベストなのかどうか判断が分かれることでしょう。


このツートップの関係性によって相手を誘導することができなくなり、後手に回った中盤の守備とラインコントロールが上手くいかずに裏を取られることが多かった最終ラインと、守備がぐちゃぐちゃでカオスだったため、良い守備から良い攻撃というサイクルが成立せず、前半は「寝ていた」と両監督が述べたのでしょう。


狙いを明確にしたことで出た勢い

ハーフタイムにジョンと酒井を投入し、より全体のベクトルを縦に向けるという意思表示をしたゼルビア。

左サイドでジョンが裏を狙う動きをすれば、右サイドでは酒井がとても高い位置をとって相手SHを押し込み、攻撃に人数をかけていました。それが功を奏し、後半開始直後には決定機を3度ほど作っていました。噂のスローイン戦術も見られましたね。

このゼルビアの縦に速く、裏を狙う動きをするという変化に加え、ステファンが最前線に張り続けていたのも前半との違いです。ステファンが最前線に構えることに金沢の最終ラインの選手たちは付き合ってしまったので、CHの選手たちと最終ラインの間に広いスペースが生まれ、ここを平戸が使ったり、海舟や髙江がリスクを冒して侵入してきたりしていました。

ステファンのポジショニングに付き合っていなければ、ここまで金沢は押し込まれることもなかったと思いますが、前半に2点取ったことから気が緩んでしまっていたような気もします。前半はゼルビアが球際の勝負で負けることが多かったですが、後半は金沢が球際の勝負で負けることが多かったです。

そして66分により効果的に裏のスペースを使っていくために、中島裕希とマソビッチを投入しました。

投入直後の67分には中島がカウンターの起点となるポストプレーを見せたと思えば、そこから最前線までスプリントしてフィニッシュするという彼の器用さ、試合を読む力を改めて見せられたゴールで1点差に迫ります。

そしてそれ以降は何度もサイドの深い位置を狙い、そこを起点にしてペナルティエリアに侵入しようとしていました。どこか昨シーズンの得点力不足に喘いだ攻撃を思い起こさせる感じはしましたが、利き足と同じ右SHに入ったマソビッチは左SHのときよりもプレーの幅が広がり、先ほど述べた金沢の最終ラインとCHの間のスペースに侵入した髙江がいい位置でFKを獲得。これを平戸が直接決め同点に追いつきました。

今のゼルビアが2点差を追いつくことができるようになったことは少し感慨深いですね。もちろん追いつきたかったですが、さすがに金沢の選手たちも目が覚めたのか反撃開始。ここからは割とオープンな展開になりましたが両チーム決め手に欠け試合終了。

自作自演の2-2と言われればそこまでですが、ハーフタイムで気持ちを入れ替えて同点に追いつけたのは大きな成長です。


試合結果

町田 2-2 金沢
得点者:38' 島津 頼盛
    45' 加藤 陸次樹
    67' 中島 裕希
    77' 平戸 太貴

さいごに

後半の攻めに関しては昨シーズンの香りと中島頼み感は否めませんが、2点差を追いつけるようになったことは大きな成長でしょう。

前線のプレッシングに関しては組み合わせの問題で、安藤が戻ってくれば心配はいらないと思いますが。最終ラインの関係性の方は、そこまで競争もなく選手の入れ替わりは無いと思うので、今後も心配が続くと思います。特に水本は自身のスピード不足に相当ビビっている感じがします。スピードのないCBはオフサイドトラップに逃げる選手や最終ラインを下げてスペースを消す選手がいて、水本はおそらく後者なのでしょう。

大谷やエリック、もしかしたら奈良坂君も試合に絡んでこれたらもっといいチームになれるのではないかと思います。


今節もお読みいただきありがとうございました。


参考文献


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