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「上げられた土俵」2021.06.13 FC町田ゼルビア vs ブラウブリッツ秋田 J2第18節マッチレビュー

前節の松本戦は前半に相手が退場者を出し、前半で勝ち越しに成功してからは得点ラッシュ。敵地アルウィンにて5-1で快勝した。しかし、水曜日に開催された天皇杯では、苦手な栃木にビルドアップのミスを突かれるなどして2失点で敗戦。天皇杯は敗退となった。

控えメンバー中心だったとはいえ、ボール保持には欠かせない選手を連戦にもかかわらず起用し、途中から平戸太貴や佐野海舟といった主力選手を出場させ、最後まで勝ちに行った試合だっただけに敗戦のダメージは大きいと想像する。

そんな中、中3日で対戦したのが、栃木同様守備に特徴があり、縦に速く強度の強いゼルビアの一番苦手なタイプの秋田だ。

試合は完全に強度負けし、前節5得点の攻撃陣は鳴りを潜め、ホーム2連敗となった。


スタメン

スタメン

ゼルビアは前節と同じスタメンだったが、水曜日の天皇杯での活躍を評価してなのかベンチに晴山岬と奈良坂巧が入った。

秋田は水曜に試合が無かったため、十分な準備期間を持って野津田へと乗り込んできた。秋田も前節と同じスタメン。


持たずして主導権を握った秋田

ゴールへ直線的なアプローチを試みるのは両チームの共通点だが、秋田にはボール保持へのこだわりがない。一方で、90分ほぼ変わらない強度で前線からのプレッシングで試合の主導権を握るのが秋田の特徴。

この90分ほぼ変わらない強度でのプレッシングを可能にしているのは、5人交代というコロナ禍特有のレギュレーションがそうさせているのかもしれない。秋田は2トップと両SHを70分までにすべて交代することで、1秒たりとも隙を作らなかった。

ボールを持って点を取ることに取り組んでいるゼルビアは、この試合でおそらく60%以上ボールを持っていたであろう。しかし、自分たちの思い通りにボールを持てた、動かせた時間はわずかしか無いのではないか。おそらく前半の飲水タイム明け、前半30分前後の時間だけではないだろうか。

ではなぜ自分たちの思い通りにボールを持てなかったのか。

それは秋田の入念なスカウティングにより、相手の土俵に挙げられてしまったから。

ゼルビアはボール保持時に最終ラインは両CBとCHの髙江麗央の3人になるというのが基本線だが、時折髙江が落ちずにGKの福井光輝が絡んで3人になることがある。秋田はここをプレッシングのスイッチとしていた。

なぜここが狙われたのかは単純だ。福井が極端に左足でしかボールを扱わないからだ。髙江の場合は左右で技術の差が出ることは無いし、プレッシングを剥がす術も持ち合わせている。しかし、福井は右足でのボールの扱いを苦手としていて、左足に頼り切っているのは明らかだ。そのため、秋田のFWは福井の左足を切るようにプレッシングに来て、右CBの水本裕貴、もしくは右サイドへのアバウトなロングボールを誘発させていた。

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GKがビルドアップに関与しないとき、すなわち髙江とCBの3人でビルドアップするときは、横に広がったCBに入った時がプレッシングのスイッチだった。基本はSHのけん制だが、タイミングが合えばFWと挟み込む。大外のSBにボールが入れば、SBが前に詰めてきて前を向かせないプレッシャーのかけ方をしてくる。

この福井狙いと両脇のCBへのプレッシングの2つが秋田が自分たちの土俵に上げる準備だ。

てか、そもそも秋田の土俵って何だよ、って話ですよね。それは秋田の土俵とは陣地回復のためのロングボールを誘発して、自分たちに有利な空中戦勝負に持ち込ませること。

ゼルビアの場合は、高さのあるFWを置いていない、11人全員を見ても高さに特徴のある選手がいないので、空中戦勝負に持ち込まれると分が悪い。

そもそも秋田は相手のことなんか関係ないくらい身長が高い、空中戦が強い。本当に奥羽山脈。

なので前からプレッシングに行って、追い込んでロングボール蹴らせればもうそれで秋田の土俵でサッカーをすることになる。

いや、でもロングボールでチャンス作ったよね?と思う人もいるかもしれない。

ロングボールでチャンスが作れた時間は、陣地回復のためのロングボールではなく、背後へのロングボールを使えたから。中島裕希の裏抜けと髙江が落ちて3人になり安定したビルドアップ隊の組み合わせが上手くハマった時間だったと思う。さらに、この時間は自らボールを回してアクションを起こすのではなく、秋田のプレッシングというアクションを待って、相手が前がかりになった瞬間を見逃さなかったというリアクションが生んだ時間だったと思う。

後半にもう一度この時間が来なかったのは、立て続けに先制されたことで秋田のプレッシャーラインが後退したこと。選手交代によって裏抜けする選手がいなくなったことが挙げられる。


じゃあ引かれた時にどう相手を動かすかに行きつくと思うのだが、後半は特に1人飛ばしのパスが少なかった印象だ。短い距離で繋げば、自分たちの移動距離は短くなるし、相手の移動距離も短くなる。

ワンサイドに寄る秋田の特性を考えれば、サイドチェンジを多用してもよかったかと思うが、スローインでサイドに密集ができたときなどサイドに押し込まれた時は背中で相手を背負った状態が多いため、バックパスが増えてしまった。

1人飛ばしのパスとサイドに追い込まれた時のサイドチェンジができれば、もう少し状況は変化したかもしれない。


試合結果

町田 0-2 秋田
得点者:51' 加賀健一
    65' 鈴木準弥

さいごに

ゼルビアの選手はまじめな選手が多いから監督やコーチに言われたことをちゃんと守るだけになってしまっているのではないかと思います。だから試合中の状況判断に時間がかかる、考えながらサッカーをしていないように見えてしまいます。

だから上手くいかない試合はとことん上手くいかないのではないかと思い始めています。


今節もお読みいただきありがとうございました。

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