見出し画像

ルールとご自愛。旬を楽しむ着物との付き合い方。

旬を楽しむ食いしん坊はいつも季節を感じている

量を食べる人、価値を求める人、旬を楽しむ人など、食いしん坊にもいろんなタイプがあります。私はどちらかというと旬を楽しむタイプ。「そろそろあれの季節だな」と思い巡らす私の顔は、随分と嬉しそうなことでしょう。

旬を楽しむというのは季節を楽しむことでもあります。
たとえば桜のシーズン。三寒四温で揺らぐ日々のなか少しずつ春に向けて季節が動いていきます。木には小さな蕾。晴れの日が多くなり、気持ちがふわふわと浮遊するような、軽やかな感覚。あっという間に4月がやってきて、桜も満開を迎えます。桜餅やお団子を食べて気分を上げながら、ピンクに染まる景色を目に焼き付けるために公園へと出かけます。

スーパーに行くと春キャベツや新たまがフレッシュな輝きを放ち、少し旬をすぎつつある菜の花が名残惜しそうに本格的な春の到来を教えてくれます。田舎の産直市場では、つくしやたらの芽などの山菜が並ぶなか、立派な筍が王者の風格で鎮座しています。この春という短い季節を五感全てで味わいたいと思っているうちに少しずつ花は散り、新緑が芽吹いてくるといよいよ初夏の始まりです。春が去っていく寂しさを感じつつ、心では初夏を先取りしたくてうずうずしてしまうのです。

"旬の味わいを楽しむ"ということには、季節を少し先読みして心を躍らせたり、今のその瞬間を楽しんだり、名残惜しく去っていく季節の余韻を味わうことも含まれていると思うのです。そしてその感覚こそ、私にとっての着物の楽しみ方そのものだったりします。

旬を楽しむ私だからこその楽しみ方

冬の終わりを感じた時には、柔らかな春らしい色の着物を着ることを想像し心おどらせ、少しずつ肌着の厚みを薄くしてサラリと身軽に着られるように整えていきます。春の芽吹きを感じたら、ウールのコートや冬らしい素材のものから、羽織と薄手のショールで暖を調整するように。
色や素材だけでなく、着物の柄や小物でも春らしいモチーフのものを手にとります。桜が咲いている数週間でも、いつの間にか気温が変わっていくので、より快適に過ごせるように自分の身体と相談しながら着るものを調整していきます。

花が散り始める頃、桜の柄のものを箪笥にしまう方もいれば名残を楽しむべくもう少しだけとあえて着る方もいます。旬の楽しみ方は人それぞれ。それでいいんです。(桜は国の花なので基本通年柄ですが、桜の季節にはとくに着たくなりますよね。)

そうしてまた少しずつ強くなっていく日差しの元、素材を調整し色柄で遊び、着物と相談しながら過ごしていきます。そうやって自然と結びつけながら着物を楽しむのは、自分の心と身体を喜ばせようとしているからかもしれません。私にとって"旬のもの"というのは、なぜだか心地よくて触れると心が潤うものだから。ご自愛の先に辿りついたような気がします。

自分のための着物はあなたらしくあれ

着物にはいくつものルールがあります。だけどそれはあくまで人のために着る時。結婚式や七五三、入卒式など、自分以外の人が主役のときはできるだけその方々を立てるようにあまり奇抜なことはしません。季節に合わせた色柄で、そっと花を添えるように正しい着付けで挑みたいと思います。それは敬意と感謝の気持ちだから。あなたのためにきちんと学び、整えた自分で会いに行きたいのです。

それでも身体がしんどくなるようなことはしません。見えないところで調整してできるだけ楽に挑みます。袷の季節でも、暑ければ長襦袢を夏物にしたりします。汗を流しながらしんどそうにお祝いするのもいやですから。自分が楽しそうにしていることも、相手にとっての思いやりだと思うのです。

だけど自分のために着る時、自分へ敬意と感謝を示すのであれば、それは自分が心地よく心躍るものを身につけることではないでしょうか。
まるで旬のものを食べた時のように、今その時心弾むもの、安らぐものを手にしてみてください。そう思って選ぶと、着物は自由なものになりますよ。旬が毎年少しずつずれるように、かつてのルールが今に全て当てはまるわけはないと思います。そのときそのときの自分との対話を大切にすれば、その先に心地よい着物との関係が築けるのではないでしょうか。

もちろん食いしん坊にいろんなタイプがあるように、憧れの名品を夢見て目を肥やす人、とにかく好きなテイストで楽しみたい人、和洋折衷テイストも自由自在にファッションとして楽しんでいる人、いろんな楽しみ方を持った人がいると思います。

私が暮らしの先にある着物を求めて、旬を楽しむ食いしん坊な性格にあう楽しみ方を見つけたように、あなたにぴったりな楽しみ方が見つかりますように。誰に決められることもなく、自分の心に正直にいてください。

着物の世界って案外自由で楽しいですよ🌼



おわりに: このnoteについて

ここまで読んでくださりありがとうございます。
このnoteがどんな目的で書かれているかについてはこちらの記事に書いていますので、初めてお越しの方はぜひ読んでみてください。

サポートいただいた分は、気になるアイテムの購入費用や、着物の産地への交通費など、知識と経験のために使わせていただきます。それらをレポートとして皆様に恩返しできるように努めます。よろしくおねがいいたします🌸