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津軽ならではの食材を活用したオリジナル芋煮会を開催

冬の気配が近づく11月下旬。弘前市石川地区にて、東北で唯一芋煮会のない青森県に芋煮文化を作り出そうと、芋煮体験会が開催されました。
この記事では、芋煮体験会のようすについて参加者目線でレポートしています。
ぜひ読んで楽しんでみてください。

「青森にはない芋煮文化を作りたい!」から始まった
津軽オリジナルの芋煮会

11月26日(土)、「酒池肉林檎サークル」の主催で、津軽に芋煮文化を作り出す芋煮体験会が開催されました。

弘南鉄道石川駅から徒歩5分にあるヒビノス林檎園。その地の利を活かし、「りんご畑で何か楽しいことをする」ということを軸に、これまで棒パンやBBQ、流しそうめん、屋外ライブなどを開催しているのが「酒池肉林檎サークル」です。
酒池肉林檎サークルについて、詳しくはこちらをご覧ください。

ヒビノス林檎園を運営する株式会社Ridun代表の永井温子さんが芋煮の本場である南東北・福島県出身ということもあり、「青森県に芋煮文化を創出しよう」ということで企画された今回の芋煮体験会。
芋煮会の参加者(モニター)は弘前市のローカル線である弘南鉄道大鰐線を使用して、「ヒビノス林檎園」がある石川駅まで向かいました。

「りんご畑鉄道」に乗って、石川駅へ

弘南鉄道株式会社(こうなんてつどう)は、青森県弘前市を中心として弘南線(黒石駅-弘前駅間16.8km)・大鰐線(大鰐駅-中央弘前駅間13.9km)の2つの鉄道路線を運営する鉄道会社で、日本国内で最北の私営の電気鉄道会社です。

この大鰐線は、沿線に高校や大学が多くあり、学生たちの通学手段として利用されています。また、大鰐線は別名「りんご畑鉄道」とも名づけられており、りんごが赤く色づく季節になると、列車の両脇にりんご畑の風景を抱えながら走る絶景列車でもあるのです。

乗車した11月下旬は「りんごねぷた列車」というイベント列車が運行していて、乗車した列車内にもかわいらしい「りんごねぷた」が飾られていました。このりんごねぷたは、津軽藩ねぷた村の職人の皆さんによってひとつひとつ手作りで製作されたものだそう。
沿線のりんご畑は収穫が終わっていましたが、列車内でもりんごのある風景を楽しめました。

弘南鉄道では今回の「りんごねぷた列車」のようなイベント列車が季節ごとに企画されていて、ローカル線を使って移動することでよりローカルを深く楽しめるような取り組みがされているそうです。乗ってみたら、いつもの風景が違った視点から楽しめるかもしれません。

さっそく芋煮づくり開始!
りんごジュースの飲み比べでは好みが分かれる結果に

さて、中央弘前駅から「りんごねぷた列車」に揺られること約20分、石川駅に到着しました。本来であればりんご畑で芋煮会を開催予定でしたが、この日はあいにくの雨だったので、徒歩圏内にある「石川町民会館」へ向かいます。

今回集まった参加者のみなさんは、永井さんが運営する株式会社Ridunでインターンをしている留学生やその友人、以前も酒池肉林檎サークルの活動に参加したことがある大学生など、30名程度。青森県出身や海外出身の方が大多数だったため、本場の芋煮会を知らない方ばかりです。今回の芋煮体験会を主催する永井さんから、今回の芋煮会について説明がありました。

【解説】芋煮会ってどんなもの?
芋煮会(いもにかい)とは、日本の山形県や宮城県など南東北を中心におこなわれる季節行事で、秋になると河川敷などの屋外にグループで集まり、サトイモを使った鍋料理を作って食べるイベントです。芋煮は地域によって味の付け方(しょうゆベース・味噌ベースなど)や入れる具材が異なり、地域の食文化が反映されています。

今回の体験会では、スタンダードな山形市の芋煮と、今回のためにレシピ開発されたオリジナル芋煮「津軽の芋煮」が振舞われました。

調理を担当してくださったのは永井さんの母、美智子さん。そして、株式会社Ridunのインターン生である留学生の皆さんです。美智子さんは、学生時代は山形県で暮らしていたこともあるため、本場山形市の芋煮の作り方を知っている貴重な方です。
美智子さんの指示のもと、津軽の芋煮に入れる鶏肉やせりなどの具材を包丁で切り、大きな鍋でじっくりと煮込んでいきます。

インターン生が芋煮を作っている間、参加者の皆さんはヒビノス林檎園で製造・販売しているりんごジュース10種の飲み比べを体験しました。
留学生に人気があったのは酸味のある「紅玉」のりんごジュース、日本人に人気があったのは、甘みがしっかりと感じられる「ジョナゴールド」や「トキ」、「北斗」のりんごジュース。参加者は飲み比べを体験して、りんごの品種がこれだけあることや、りんごの品種によって味に明確な違いが出ることに驚いていました。

完成した「津軽の芋煮」には津軽ならではの食材がたっぷり

そうしている間に、待ちに待った芋煮が完成です!

最初に振舞われたのは、弘前市にある市場「虹のマート」考案のオリジナル芋煮「津軽の芋煮」です。鍋のふたを開けると、ゴボウのような土っぽい香りがあたりに広がります。最後に散らされた食用菊の黄色とせりの黄緑色が見た目にも鮮やか。出来上がるのを待っていた参加者からも「美味しそう」という声が聞こえてきます。

「津軽の芋煮」は、醤油味をベースに、鶏肉、ゴボウ、にんじんなどを煮込んで作られる津軽のお雑煮をベースに考案されたものだそう。今回はメインの食材にキクイモを使っていて、このほか凍み豆腐、塩抜きした干しぜんまい、一町田せりなどが津軽らしい具材として入っていました。

レシピ開発を担当した、弘前市にある市場「虹のマート」の浜田さんによると、今回キクイモを使ったのは津軽地域ならではの旬の食材を使用したかったからだそう。
キクイモはイタリアではフライにしたり、薄くスライスしてポテトチップスのようにしたり、蒸かしてクリームのように煮て、煮つぶしたものをソースにしてグラタンにしたりと、さまざまな調理方法で食べられている食材だそうですが、津軽では昔からキクイモが栽培されているわりに、漬け物以外の食べ方や調理方法があまり知られていないそうです。食物繊維が豊富で、健康効果も高いスーパーフードであるキクイモは、ゴボウみたいに汁物や炒め物に入れても美味しいそうですよ。

酒池肉林檎サークルの宮﨑先生によるご挨拶のあと、シードルで乾杯して、早速「津軽の芋煮」を食べてみました。キクイモは思いのほかホクホクの食感で、あっさりとした鶏がらの醤油スープによく合います。スープにはキクイモのだしがたっぷり出ていて、飲む込むとキクイモの独特な香りが鼻に抜けるようでした。一町田せりや干ししいたけなどの旨みと相まって、とても美味しかったです。

2つ目の鍋で作られた山形のスタンダード芋煮は、牛肉のだしが効いた醤油ベースで甘みのあるスープです。ちぎった角こんにゃくとサトイモがゴロゴロ入っていて、ボリューミーな一杯でした。
残った山形の芋煮にはカレールーとうどんを入れて、〆のカレーうどんに。煮込んだ野菜の旨みが凝縮されたスープをカレーうどんにするので、美味しくないわけがありません!

弘前市百石町にあるシードル&カフェ「POMME/MARCHÉ(ポム・マルシェ)」による、およそ15種類シードルの試飲体験もありました。青森県で醸造されているさまざまなシードルを飲み比べながら芋煮とのマリアージュを各々が楽しんでいました。芋煮とシードルのマリアージュは、りんごの産地である津軽でしかできません。

参加したモニターから、今回のイベントについて感想を聞いてみました。

【寄せられた感想】
・弘前市に来て数年だけれど、弘南鉄道に乗るのは初めてだった。お金の払い方、切符の買い方が変わっていると思った。電車からだと普段見ている景色が違って見えた。
・列車でイベントをやっているのが面白い。ライトアップしている列車にも乗ってみたい。
・石川駅を降りて見える景色(畑と線路と岩木山)がすごいと思った。
・芋煮のことを初めて知った。キクイモは初めて食べたが美味しかった。
・食用菊が美味しかった。中国には花を食べる文化があまりないので、彩りがよくて驚いた。
・キクイモは漬け物で食べたことはあったが、煮て食べたのは初めて。ホクホクしていて美味しかった。
・山形の芋煮は、肉じゃがみたいで美味しかった。
・山形の芋煮はすき焼きとか牛丼に煮ていると思った。
・キクイモの芋煮は津軽らしい味付けで美味しかった。もっと具だくさんで食べたい。
・次回はりんご畑で実現してほしい。

〆のカレーうどんまで食べきって、最後に参加者全員で記念撮影をして芋煮体験会はお開きとなりました。
芋煮とシードルで心も身体もぽかぽかになり、参加者の皆さんは初めての芋煮を存分に満喫できたようです。帰りにはヒビノス林檎園のりんごのお土産もいただきました。

今回の芋煮体験会の反省を踏まえて、来年度以降は石川地区の地域住民にも参加していただけるような芋煮会にしていきたいと永井さん。これを機に、弘前市石川地区から津軽独自の芋煮文化が醸成されていくことでしょう。

(写真/文:鈴木 麻理奈)

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