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「早もぎ」は生産者の責任なのか?

9月に入り、りんご園地の作業も忙しい時期になりました。
りんごの着色管理や収穫など秋が一番忙しい季節となります。

毎年あがる問題として、「りんごの早もぎ」というのがあります。
この「早もぎ」とは、りんごが熟す前に収穫することを言います。

もちろん、熟す前に収穫するのですから、食味はよくありません。
では、なぜ熟す前に生産者は収穫し、出荷するのでしょうか?

理由は簡単です。
早く出荷した方が高く売れる
からです。

すべてとはいいませんが、青森のりんごの市場ではその品種の「はしり」が高く競り落とされる傾向にあります。
食味の良し悪しが競りの価格に反映されるわけではありません。

熟す前に収穫したものが高く競り落とされ、旬の時期に収穫したものは再生産価格ギリギリ(あるいは下回る)で競り落とさせる場合もあります。

生産者として、美味しいものをつくり、旬の時期に収穫・出荷したいという気持ちは誰しもあると思います。
ただし、生産・栽培はボランティアではなく、事業・仕事として行っています。

いくら美味しく作っても、高く売れないのでは意味がありません。
高く売れる時期に出荷するのは、プロの生産者としては当たり前の行為です。

では、この「早もぎ」、生産者スタートなのでしょうか?
答えはNOです。
高う買う人がいるから、出荷するだけです。

「ニーズに応えているだけ」なんです。
本気で「早もぎ」を止めたいと思うのであれば、買わなければいいだけの話なんです。

それを
「生産者が早もぎするから、美味しくないりんごが出回る」
と、生産者責任にしようとする傾向があります。

生産者はあくまで「作るプロ」であり、出回らせるのは流通業者なんです。
どんなに発信力のある生産者だとしても、流通を変えることはできません。

業者が買わなかったり、安く買い叩くだけで、生産者はすぐに「早もぎ」をやめます。

生産者に「早もぎはやめましょう」と声高々にいうのであれば、
同じ声量で業者にも「早もぎりんごを買うのをやめましょう」というべきなのです。

あと、旬の美味しい時期の生産物が適正価格で取引されることも大事です。

そういったこともあり、生産者の中で
「美味しいりんごつくってたら、儲けられないよ」
と言われちゃうのです。

旬の美味しいりんごをつくって、貧しくない生活を送れるのであれば、だれも「早もぎ」なんてしないのです。

いつもこういった記事を読むたびに、
「指摘する方向と順番が違うんだよなぁ」
と思っちゃいます。

ちなみに。
もちろん、自分のお客様には「美味しい旬もぎりんご」をお届けしていますよ。

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