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GIVE & TAKEの要約と所感

アダム・グラント著

人はTaker, Giver, Matcherの3種類に分かれる。それぞれの特徴とGiveすることの大切さとかTakeし続けることの危険性とかを色々な事例を元にまとめた本です。とにかく事例が多くて、はっきりと明言しない箇所も多く、個人的には構成がうまくないと感じています。良書だとは思いますが、ちょっと読みにくいので、ここは大事だなというポイントのみに絞ってできるだけ短めに纏められるように頑張ります。

Taker, Giver, Matcherとは・・・?

Taker
与えるより多く受け取ろうとする。競争社会に生きていて費やした努力を認めさせる。自分中心の考え方。

Giver
受け取る以上に与えようとする。他人中心の考え方。

Matcher
与えることと受け取ることのバランスを取ろうとする。

上記3種類に分けられるけれども、人は時と場合によって、どのタイプになるかは変わってくるもの。給料交渉するときはテイカー、後輩に教えるならギバー、同僚に情報提供ならマッチャーみたいに、人はうまく使い分けている。

そして、研究によると、最もうまくいかない人はギバーで、最も成功する人もまたギバーである。

ギバーの特長

長期的にリターンをもらえるのが成功ギバー。成功ギバーは、人脈づくり、協力、人に対する評価、影響力、という4つの分野で独自のコミュニケーションをする。一方で、テイカーは仮面を被って近づいてくる。初対面で1番好感がもたれるのは権利意識が強く人を操作したり利用したりする傾向のある人であるという説もあるくらいで、テイカーはここがうまい。テイカーを見抜く方法は2つあって、1つは評判を確認する、2つはSNSの写真が盛ってるかどうかである。

ギバーの特長①人脈: しばらく連絡をとっていないような休眠状態の友人関係や繋がりが誰しもあると思うが、これをうまく活用できるのはギバーである。休眠状態でも信頼関係は残っているし、より多くの新しい情報をもたらしてくれる。ギバーはこのつながりを存分に活用できるが、テイカーは相手からの信頼がなく活用できない、マッチャーはギブアンドテイクが前提の考え方なので助けを求めることにも居心地の悪さを覚えてしまう。

ギバーの特長②影響: 5分間の親切をする。5分でできるようなことなら誰であってもしてあげる。これは、自分のネットワークの人たちがギバーになるように後押しする、ペイフォワード(受けた恩をくれた人に返すのではなく、別の誰かに何かをしてあげること)を浸透させる。ギバーの与える姿勢は伝染していく。

ギバーの特長③ギブの量と生産性の相関関係: 他者へのギブばかりをしてるとは生産性が落ちるのではないかと思うかもしれない、結論、ギブが少なければ生産性が落ちて、ギブが圧倒的に多ければ逆に生産性があがる。ギブが多い方が信頼関係が多く築けて助けを得やすくなるから。

ギバーの特長④チームでの結果を出せる: クリエイティブな人にはテイカーが多い。実際テイカーは人の意見に耳を貸さずに自分のやりたいことを押し進める特徴があるのでマッチしている。でも本当にいいアウトプットを出すにはチームの力が必要、つまり周りで支えてくれる人が必要。優秀な外科医も慣れているサポートスタッフと一緒じゃないと手術成功率が下がる。ではなぜギバーがチーム力を引き出すのがうまいのか。1つは、周りから感謝されているから。一般的に、才能のある人は嫉妬されやすく、嫌われやすい傾向にあるが、ギバーはグループに献身的に貢献しているため、嫉妬されるどころか、むしろ周りから感謝されている。2つ目は、信用貯金があるから。たいていの人はマッチャーで心に信用口座を持っている。ギバーとして振る舞うと心に信用貯金がたまっていくので、規範や期待に外れることをたまにしても大丈夫になる。なので信用貯金が溜まっていれば、大胆で挑戦的なアイデアでも認めてもらうことができる。3つ目は、安心感を作れる。安心感をある環境では人は学習意欲が高まり新しいことにチャレンジしやすくなる。この環境をギバーは作り出せる。

ギバーの特長⑤認識のズレを補正できる: 責任のバイアスというものがあって、人は自分の貢献を過大評価し、他人の貢献を過小評価する。マッチャーやテイカーがこれを乗り越えるには、してもらったことをリスト化する。ギバーはこれを当たり前にやっている。
医者はたいてい患者の痛みを軽く考える。自分自身が辛い目にあっているわけではないから。こういう自分の観点からしか物事を見ずに、相手の心理的状態を想像できていない状態を「視点のズレ」といって、テイカーは視点のズレがあって、ギバーは視点のズレを修正することができる。簡単にいうと相手の立場たって考えられる。

ギバーの特長⑥人を育てるのがうまい: 自己成就予言という理論があって他人から期待されるとそれに沿った行動をとり期待どおりの結果を実現する。つまり成績の悪い生徒を良くするには、教師がその生徒に期待することが重要。この育て方ができるのはギバーで、テイカーは人を信頼することができないのでできない。マッチャーはその人に見込みがあるとはっきりわかるまで育てようとすることができない。
ちなみに、この特性だと、ギバーは人に投資しすぎそうだが、実はそうではない。多くの人は投資の選択を失敗したとき、諦めずさらに投資して負けを取り戻そうとする。ギャンブルにしても事業投資にしても失敗しても投資を諦めない人たちがそれだ。これはつまり自分の非を認めないことが起因していて、関係者全体の利益よりも個人のメンツを優先して投資を止める判断を先送りするテイカーの特徴。ギバーは全体を優先するので進んで失敗を認める。

ギバーの特長⑦目先のプライドより長期的なメリットを選べる: テイカーは批判されているとわかったら忠告を受け入れなくなる。受け入れないことでプライドを守る。ギバーはその逆。ギバーは長い目で見てより良い選択をすることが重要で目の前のプライドや評判は気にしない。例えば、弱点が強みにすることができる。吃音でうまく話せない弁護士が陪審員の同情を買って味方につけることができたり、年配でキャリアもある生徒に講義をする講師が若さを過度にアピールして自分を下げることで話を聞いてもらえるようにするなど、つまり自分の弱みを見せることで周りを味方につけていい結果に結びつける。ギバーはこれができてテイカーはできない。注意点は弱みを見せても効果があるのは周りに優秀と認められている場合に限る。

ギバーの特長⑧控えめで相手目線でのコミュニケーション: ギバーは相手側の視点でコミュニケーションを取ることができて、質問を多くする。そして「かもしれない」とか「良くないかもしれないが、〇〇はどう?」とか「どちらかといえば」とか控えめな話し方をする。これはチームでコミュニケーションを取る際には有効だが、面接などの一階勝負だと頼りないというふうに判断してしまう人もいる。
アドバイスを求めるという方法も有効だ。情報を得て、自分ごとになってもらえて、相手との関わりをもてて、ごますりになる。また、人には自分の時間エネルギーを投資して助けた人を、それに値する人だと信じようとする、という特徴があるのでアドバイスを求めるやり方は実に巧妙。ただ、普段からゆるいコミュニケーションをしっかり取っていることが大事で、そうじゃないと相手から下心があってアドバイスを求めてきてる、媚びてきてる、と悟られる。

成功ギバーと失敗ギバーの違い

ただただ自己犠牲的なギバーと自己と他者両方の利益を考えるギバーがいる。もちろん、自己と他者両方の利益を追求できるのが成功するギバー。
両者の1つの大きな違いはモチベーションである。ギバーのモチベーションには、他者への利益が大切になってくる。単純に高給のコールセンターをやらせると、テイカーよりパフォーマンスは悪い。だが、そのコールセンターで獲得した寄付金が奨学金に使われて学生の人生を変えていると知ると、途端にギバーのパフォーマンスがテイカーに追いついた。ギバーは与えすぎて燃え尽きるのではなく、与えたことでもたらされた影響が確認できないときに燃え尽きる。つまり、ギバーとしてのモチベーションを保てる環境でギブをすることが、成功ギバーにつながる。コツはまとめてギブする。その方が幸福感が増す。
失敗ギバーは三つの罠(信用しすぎる、相手に共感しすぎる、臆病になりすぎる)にはまる。人を食い物にするテイカーを見分ける力が必要。ギバーは共感する力があるのでテイカーを切ることが難しい。切られた側の気持ちを推察してしまう。切るにしてもテイカーは利己的なので、切ることでのテイカー側のメリットを用意してやるのがいい。または、テイカーに対してはマッチャーとして接する。最初はギバーとして接して、相手がテイカーだとわかったらマッチャーとして接する。3回に1回はギバーとして接してテイカーに名誉挽回のチャンスを与えるのがいい。
ギバーは自分を犠牲にしがちなので、給与交渉が苦手だ。自分の利益のために交渉するのは難しいので、家族を代表して交渉するという考え方をすればうまくいく。また交渉は勝ち負けではなく、パイを大きくする、全員勝たせるが基本。

ギバーを増やす方法

フリマアプリみたいな仕組みは、価値の「交換」なので、テイカーやマッチャーが好む。自分がもう使わないものなど無料で誰かにあげることができるフリーサイクルというシステムは、ギバーに使われる。この仕組みではテイカーやマッチャーもギバーとして振る舞う。理由はおそらく「共通点」が人の行動に多大な影響を及ぼすから。共通点、つまりフリーサイクルコミュニティへの所属意識があり、愛着が湧いているから。フリマアプリは価値の交換なので、そこへの所属意識や愛着は湧きにくい。でもフリーサイクルは贈り物なので、思いやりや好意が価値に上乗せされる。その付加価値をコミュニティ内でペイフォワード(恩送り)していくため、自分が得た利益をコミュニティのおかげだと感じ、愛着が湧く。
また人は特異な共通性により引き付けられる。人は人と同化したいという欲求とユニークな存在になりたいという欲求を両方抱えている。これを叶える一般的な方法が、特異なグループに所属するということ。

成功の定義が、個人の業績+他人への貢献度、になれば職場にもテイカーとマッチャーが増えるかもしれない。

【所感】
書き方がまどろっこしくて長ったらしいのですが、書いてある内容は要所要所、刺さるポイントがある良書でした。きっと読む人はみんな自分の会社にいる人を想像しながら、テイカー、ギバーと頭の中でカテゴライズしてしまうと思います。やっぱり自分はギバーでありたいなと思いますし、ギブする習慣を、本書で紹介されている纏めてギブするというコツを取り入れながら、実践していきたいと思いました。

結局、テイカー対策がきちんと詳細には書かれていない気がしますが、というか最後の方はテイカーに対してはマッチャーで接してとか、結局自分がギブしたことを見返りを期待するなら、ギバーって何なんだろう、という矛盾を感じてはしまいます。ちょっと哲学的になってくるので、ここはあまり深く考えないようにして、ギブしていくことが成功するために大事であること、にフォーカスすべきかと思います。まずは自分に無理のない範囲で、ギブをしてくことが大事なのかなと思います。使い古された言葉ですが、Win-Winというところに繋がってくるかなと思っています。ギブを通して、全員勝たせる、という仕事の仕方が必要なのだろうなと私は読み取りました。

最後のコミュニティの話も面白いと思いました。強い組織を作るには、(強い組織の定義にもよりますが)メンバーそれぞれが愛着がある組織という意味では恩送りを浸透させることが大事なのかもしれないですね。新卒で入った古い会社では、入社した頃、会社への恩があるからとか、先輩に受けた恩を今度は自分が後輩にしてあげたいとかで、同じ会社で働くことを選んだという話を何度か聞きました。ここだけ切り取るとすごく古臭いけど、恩送りというのは重要なポイントなのかもしれないと思いました。このコミュニティでは与えることがメリットになる、という仕組みにできれば、所属する人が愛着を持っていて、チームとして結果を出せる、とても強いチームになる気がします。


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