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わたしは地球の小さな細胞

明け方、飛行機から見下ろした初めてのドバイには、太いオレンジ色の線がすぅーっといくつか通っていた。マグマのようだわ、とわたしは思った。

朝焼けを見た。大好きなあの人を思い出して、彼のようにうまく写真を撮ろうとしてみたけれど、機内の明かりが窓に反射して、思うようにいかなかった。諦めてぼうっとしていると、そのうち朝焼けがだんだんぼやけていった。飛行機が雲の中に少しずつ入っているのかしら、と思った。

行先はまだ暗い。夜に向かって進んでいるものだから、いつまで経っても同じような段階の朝焼けが続く。

朝と飛行機、どちらが先にドバイに着くのかしら、なんてぼんやりと考えた。

―――ふと気が付くと朝だった。

朝の勝ちね、と一人で頷く。

オレンジ色の線は、さっきよりずっと増えていて、太いものから細いものまで様々だ。まるで血管のようだわ。すると、道路を走る車たちが細胞のように思えてきた。赤血球が酸素や栄養を運び身体に影響を及ぼしているように、車は人や荷物を運び、この世界を回している。人々はまるで細胞のように関連し合って生きていると、ジョン・デューイが言っていたっけな。思い出してしまったら、卒論のことが少し心配になってきた。

。o ○

ちなみに、わたしがドバイだと思っていた土地から海を渡った場所に着陸したから、あの土地はきっとドバイではなかった。どこの国だったのかしら……。地図を開けばすぐにわかる、と知っているから、なんとなくまだ確認していない。わたしが夜の終わりを見たあの場所には、細胞のように関わり合う人々がいたけれど、それはなにもそこだけに限ったことではない。

日本で暮らす友人の友人の友人、イタリアへ旅行に来ているわたし、そして、飛行機から見下ろした小さな人々……。てんでバラバラなようで、きっとどこかで繋がっている。同じ星で生きている。

わたしたちはみんな、この地球の小さな細胞なんだなあ。

そんなことを想った。

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