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【MTG】謎デッキ紹介:単色コントロールの可能性

【はじめに】

 新スタンダードによる大会もチラホラと始まり、いよいよ本格始動してきたなと感じる今日この頃です。今のアリーナ環境は、つい先日の大会で結果を残したリアニメイト系が流行りつつあり、毒性のような最初期に流行ったデッキ達は下火になっているようです。また、ほとんど無編集のアゾリウス兵士や正統強化された白単ミッドレンジも根強い人気を誇り、その他のミッドレンジ系や新PWを搭載したコントロール、赤単アグロなども依然として活躍しているようです。多様性としては良い感じですね。
 リアニメイト系は《偉大なる統一者、アトラクサ》を墓地から復活させる動きが強力で、打ち消し等で出る前に対処しない限り、手札を完全に回復されてしまいます。とは言っても、リアニメイトのようなコンボデッキは対処法も明快で、個人的には長期に渡って環境を支配することは無いのかなと予想しています。

 このように、既に新環境で勝つための研究が進められている中、僕の方はというと相も変わらず謎デッキ研究に明け暮れていました。つぶやきの方でも挙げましたが、油で改善を稼ぐ《歩行する摩天楼》デッキや、何故か4枚あった《純潔の監視者、マルカトール》によるアゾリウス・アーティファクト・アグロのようなデッキもありました。しかし、それら全てが将来性が乏しいという評価をせざるを得なくなり、調整段階に進むことはできませんでした。ここに来て、謎デッキ初回のエスパー・多機能・アグロが稀少な成功例であったことを痛感しました。そこそこ勝てないと紹介しないという風に定義付けしてしまったことが悔やまれる中、今回はそんな狭き門を潜り抜けた謎デッキを紹介していこうと思います。

【設計段階】

 今回も出発点は誰も使っていないカードでした。

他の色にも同様のものがあります。

 この《ドロス窟》は球層サイクルの1枚で、黒以外の4色にも同様のものが存在します。タップインの単色土地ですが、2マナ+自身をタップの実質3マナで生け贄に捧げることで、カード1枚を引くことができます。これは長期戦を戦うデッキにとっては嬉しい能力ですが、逆に言えば序盤の動きを硬直化させ、加えて多色化にも向かないカードと言えるでしょう。
 そこで僕が考案したのは単色によるコントロールでした。土地基盤が盤石な現環境でも、白単ミッドレンジにおける《軍備放棄》や《骨化》のような単色だからこそ強く使えるカードがあれば、単色でも結果を残せるということは既に証明されています。そのため、今回は白以外でもその可能性が無いか模索するところから始まりました。
 白以外、つまり青、黒、赤、緑の4色ですが、まず青に関しては《知識の流れ》のような単色で強いドロー系が既に存在するため、球層を使う意味が無いという理由から却下になり、赤は《鏡割りの寓話》がどうしても入ってきてしまうため、謎デッキとしては却下になり、緑に関しては元からコントロールに不向きな色なので、これも却下。残ったのは黒、ということになりました。
 黒は除去が得意な色なので、除去コントロールという最終形は容易に想像できました。黒単には既に黒単ミッドレンジがありますが、そちらは球層土地を置く暇もサクる暇も無さそうなので、差別化も十分でしょう。あとは単色で強く使える黒のカードが問題です。

アグロを睨むカード

 球層と同じ新セット、ファイレクシア:完全なる統一からは《ファイレクシアの抹消者》が挙がりました。黒4シンボルという非常に強い色拘束を持ちますが、緑を絡めた格闘デッキにも使われている1枚です。今回はアグロに対する受け+フィニッシャーとして採用しました。

回復まで完備

 こちらは神河:輝ける世界から。手札から不要なカードを捨ててコストを軽くしても良いですし、コントロールということで長いゲームが予想されるため、普通に6マナ、7マナで撃つことも可能でしょう。また、ライフ回復はアグロ相手の場合、押し込みを回避する意味でも有意義です。

黒単では不可避

 かなりポピュラーなカードですが、全盛期と比べるとやや下火になっているのと、流石に入れない理由が無かったので……。黒としてはエンチャントに触れる点も貴重です。

 このように、今回は単色というキーワードのおかげで比較的スムーズに採用カードを決めることができ、あとは優秀な除去やPWを足すだけですぐにでも結果を出しそうな感じでした。謎デッキとしてどうなのかという葛藤もありましたが、《ドロス窟》はアリーナでかなりチカチカ確認してもらえるので、それに免じてどうかご容赦を……。

【開発段階】

 まずは開発段階で抜けていったカードを挙げていきましょう。

《黙示録、シェオルドレッド》

 当初は4マナ域に《ファイレクシアの抹消者》と2枚ずつ採用されていましたが、最近のアグロはシェオルをかなり意識していて、赤単相手でも綺麗に対処される危険性があったため、クリーチャーは赤単に特効を持つ《ファイレクシアの抹消者》に限定する方針になりました。

《ファイレクシアの肉体喰らい》

 序盤の壁にもフィニッシャーにも成り得るため、コントロール的にも悪くないかなと思ったのですが、ほとんどの場合で「そんなことより除去が欲しい」となってしまったので、今回は入りませんでした。

 そして、これらが抜けた枠に除去やPWを加えることで、デッキとしての安定感は高まり、デッキとしての新しい道も拓けました。

PWとの相性抜群

 黒には《胆液まみれ》というPWと相性の良い除去があり、またPW陣も黒はコントロール向きが揃っています。

奥義も意外と出ます

 黒におけるコントロール的PWの筆頭となるのが新PW《裏切りの棘、ヴラスカ》でしょう。0の能力は増殖付きなので実質+1で、ほぼどんな時でも嬉しい1ドローをさせてくれます。また増殖で増えるのは自分の忠誠度だけではないため、一緒にPWを並べられると更に美味しいです。-2の除去能力はあらゆる耐性を貫通し、そもそも彼女が出る頃には多くの場合でマナよりもスペルの方が欲しい状況なので、宝物を有効活用されてしまうという場面も少ないでしょう。また、最後の奥義も《胆液まみれ》のようなサポートがあると意外と出番があり、フィニッシャーにも成り得ます。
 他にも黒には《不笑のソリン》や《ヴェールのリリアナ》のような強力なコントロール的PWがいるため、最終的にはそれらを並べることで逆転不可能な盤面を作ることを目指す形になりました。

【調整段階】

 では、現在鋭意調整中のデッキの紹介から。

黒単除去PWコントロール

デッキ
2 裏切りの棘、ヴラスカ (ONE) 115
2 不笑のソリン (VOW) 131
4 ドロス窟 (ONE) 251
4 絶望招来 (NEO) 101
2 ファイレクシアの抹消者 (ONE) 105
2 ヴェールのリリアナ (DMU) 97
4 不憫な悲哀の行進 (NEO) 111
4 胆液まみれ (ONE) 91
3 切り崩し (DMU) 89
3 喉首狙い (BRO) 102
2 シェオルドレッドの勅令 (ONE) 108
3 勢団の銀行破り (NEO) 255
2 陰惨な実現 (BRO) 103
19 沼 (THB) 252
2 見捨てられたぬかるみ、竹沼 (NEO) 278
2 悪意ある機能不全 (NEO) 110

サイドボード
3 強迫 (STA) 29
1 窃取 (DMU) 102
2 隠し幕 (VOW) 101
1 シェオルドレッドの勅令 (ONE) 108
2 窃取 (DMU) 102
2 梅澤俊郎の生涯 (NEO) 108
2 未認可霊柩車 (SNC) 246
2 墓地の侵入者 (MID) 104

これだとコピぺできないんですねぇ、何か方法は無いかな……?

1.実際の試合

VS赤単 相性:○
 《ファイレクシアの抹消者》や《悪意ある機能不全》が刺さるかどうかにが大きいですが、上手く捌くことも可能です。

VSアゾリウス兵士 相性:△
 赤単よりも息が長いため、コントロール的にはやりにくい相手にはなりますが、それでも完全な不利ではありません。

VSミッドレンジ系 相性:○
 相手の大型クリーチャーや《鏡割りの寓話》に対して《絶望招来》が効果的に作用してくれます。相手も長いゲームを想定しているため、先に《不笑のソリン》や《裏切りの棘、ヴラスカ》を立てることができれば、ゲームの流れを終始支配することができるでしょう。

VSコントロール 相性:×→○
 メインは除去コントロールなため、対コントロールでは不利を被ることが多いですが、サイド後は《強迫》や《窃取》を利用することで若干有利に立ち回ることができると思います。また、最近のコントロールはPWが多く採用されているため、《シェオルドレッドの勅令》も効果的です。

VSリアニメイト 相性:×××
 お恥ずかしい話ですが、現在進行形で流行っているリアニメイトデッキに対して、このデッキは恐ろしい程に結果を出せません。除去コントロールという性質上、クリーチャーは出た後に処理することになるため、一度でも出てしまえば圧倒的なリソース差を作る《偉大なる統一者、アトラクサ》は天敵と言えるでしょう。恐らくBO3では50%ぐらいの確率でストレート負けします……。

2.試合を通じて

 デッキ自体が調整中なため、詳しい勝率は出していませんが、感触としては五分五分でしょうか。それでも現環境で作った他のオリジナルデッキ達と比べれば優秀な方というのが……早くも限界が……。
 理由と致しましては、まず対応力不足が挙げられるでしょう。新PWを利用したコントロールには既にエスパーがありますが、そちらは白による置物破壊や青による打ち消しの恩恵も受けられるため、対応力という面で死角がほぼありません。今回の黒単コントロールは、単色で強く使えるカードの採用でハマれば多色系コントロール以上のパフォーマンスが可能ですが、相性に左右されてしまうという弱点も否定できないでしょう。
 かつての白単ミッドレンジにもPWに対処しづらいという弱点がありましたが、《骨化》の加入で弱点らしい弱点が無くなっており、現環境での活躍の裏にはそういった理由もあるのではないでしょうか。
 サイド後のハンデス戦術は思っていたよりも効果があり、これには《ドロス窟》が大いに貢献してくれました。また《ヴェールのリリアナ》によるハンデスも、ソリンやヴラスカによる継続ドローのおかげで、こちらは特に痛みを感じずに運用できます。
 また、今回は特に不利な相手はいても特に有利な相手はおらず、勝ち方についても辛くも勝利というのがほとんどでした。使っているカード自体は黒系ミッドレンジで良く見るものばかりなので、構築のハードル自体は低そうですが、頑張って組む必要性は皆無です。
 最後に将来性ですが、これからもしばらくは多色環境の継続が予想されるため、逆に単色推奨カードもまだまだ現れると予想しています。その場合は更なる強化を受けられそうですが、現時点でデッキが大きく改良される余地は無さそうです。

3.まとめ

謎指数:6(10段階評価)

★単色推奨カードで差を付けろ!
★サイド後の奇襲性は上々!
★勝てるかどうかはランナー次第だ。
★リアニメイトと当たったらリアル絶望招来としか……。

【さいごに】

 今回も前置きが長かったからか、かなり読み応えのある内容になってしまいましたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
 実は既に紹介を控えている謎デッキがもう1つあるのですが、そちらは今回のデッキ以上の問題児なので、もう少し調整してから記事を書き始めようかなと思っています。
 それにしても《ドロス窟》って能力もアートも地味で主役には全く向いていませんね……。ちゃんと読んだ方ですら表紙が《ドロス窟》だと気付かないんじゃないかこれ……。コメントもお待ちしてます。それでは、また。

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