表紙のベニテングタケがすべてを語る
『どく・どく・もり・もり』背川 昇
読了レビューです。
文字数:約1,100文字 ネタバレ:一部あり
・あらすじ
とある森の奥深く、キノコの妖精たちの住む村がありました。
そこにある日、毒キノコの「ツキヨタケ」が現れます。
村の全員を殺され、1人だけ生き残った食用キノコ「タマゴタケ」は復讐を誓うのですが──?
・レビュー
キノコ好きなら問答無用で読め! 話はそれからだ!
というくらい趣味がキノコ探しの人間にとって、「待ってました!」と喝采を上げる作品。
表紙の超有名な毒キノコ「ベニテングタケ」が目を引くけれど、幼菌の姿だと食用キノコ「タマゴタケ」に似ているのは、多少のキノコ愛があれば周知の事実だ。
また、主人公の「タマゴタケ」の村を襲うのが「ツキヨタケ」であり、その姿が膝くらいまで伸びた長髪、ロングコートなのは擬人化としてGoodだし、ちゃんと暗闇で光るそうな。
キノコ知識がないと楽しめないかと思いきや、「ツキヨタケ」が実は、という流れは面白く、旅の仲間が何かしら訳ありなのもドラマ性があって良い。
もちろん興味があれば、森の掃除屋として現れる「キツネタケ」が愛しくも恐ろしい存在だと分かるし、「ドクササコ」からあのようなキャラが生まれて感涙にむせび泣くだろう。
ちなみに表紙で主人公が持っているナイフ状のものは、元は母親からもらったガラスのおはじきであり、覚悟を決めた彼女がそれを砕いて作ったものだ。
この場面は亡き母親から精神的に離別する意味合いもあるだろうし、思い出を武器とする二面性は主人公にも当てはまる。
そうした武器が必要になるということは、森が基本的に戦いの繰り返される場所であり、他者の死が別の生へとつながる循環を描いた場面もあって、まさしく「キレイゴト」で済まさないのが良い。
ちょうど先日、一般社団法人 きのこマイスター協会の公認キャラクターとして「奇ノ駒たんご」というVTuberが就任したそうな。
これはゼヒ確認しなければと動画を視聴したら、たしかに公認されるだけあって広く深い知識を有しておられるようで、当たり前のように「ホコリタケが~」などと言ってて尊敬するしかない。
細胞分離とかの単語も出た気がするから、たぶん中身は研究職とかに関連した方なのかもしれない。
日陰者と言われがちなキノコが、今まさに市民権を得ようとしている。
このビッグウェーブに、正しくは胞子の大拡散に乗り遅れるな!
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2023/11/12 追記
2次創作小説を書きました ↓
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