見出し画像

整備は続くよ何処までも

【文字数:約1,000文字】

 通勤に使っている自転車のメンテナンスをしていて、それにおそろしく時間を取られている。

 理由は単純で、数年ぶりに全体メンテをしているからだ。

 整備士の資格を持っていることもあって、1年ごと、数年ごとでメンテナンスの上位版となるオーバーホールをしている。

 例として次に示すような、車輪中央部にあるハブのオーバーホールを行う。

中に見える銀色はベアリングボールと呼ばれる鋼球

 メンテナンス全般の落とし穴というか陥りがちな罠で、予定していたよりも時間や手間がかかり、楽しさより面倒くささが勝ってしまうときがある。

 まさに今がその状態で、だからこそ数年に1度しかやらず、次のときには都合よく忘れている。

 歴史は繰り返すということらしい。

 あれこれ交換用の部品類を買っているし、面倒くささの先にある喜びも知っている。

 自分でメンテナンスしたものに乗る瞬間は、いつでも少しの緊張と興奮があって、そこまでに至る苦労を忘れさせてしまう。

 汚れた油でドロドロのグチョグチョなものを綺麗にして、新品と同じとまではいかないけれど、より長く使えるようにする。

 安いものを数年ごとに使い潰したほうが、きっと時間の節約になって経済的な気さえする。

 前は興味の向くまま3台を所有していたから分かる。

 同じ自転車に乗っていると現在の価値観とズレるし、ある段階で試行錯誤も止まってしまう。

 今は停滞に安住している自覚があり、以前のように新製品をチェックしていた貪欲さは失われている。

 とはいえ悪いことばかりでもなく、少しずつ増えていく擦れや傷を見ると、おそらく愛着などと呼ばれるものが湧いてくる。

 それらとメンテナンスにより輝きを取り戻した部品が、同じ自転車の中で共存しているのは、まったくの新品には宿らない美しさだろう。

 例えば次のような状態にできると、やって良かったと心から思う。

後輪の中心にある多段ギア歯

 写真のギア歯だと5年以上は使っているし、少なく見積もっても走行距離は5,000kmを超えている。

 もちろん新品と比べれば削れているし、ここまでにする時間と手間を考えれば、数千円で新しいものを買ってしまったほうがいい気さえする。

 だからメンテナンスも趣味の1つなのだろうし、自分ではやらない人もいると聞いたことがある。

 どちらがコスパに優れるかなんて考える必要もなく、人それぞれ好きなように楽しめばいい。

 そんなことを趣味の整備士は思うのだった。


なかまに なりたそうに こちらをみている! なかまにしますか?