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人類が〇〇サーバーで生きるとき

【文字数:約1,000文字】
お題 : #好きな番組

 2006年4月から放送されていたアニメ『ゼーガペイン』が好きだ。

 ある日、世界の崩壊を知った主人公が立ち上がり、ロボット型の兵器に乗って戦う、という流れは基本そのものだ。

 この作品を思い入れ深くさせているのは、人類が量子コンピューター内のデータとして保管されており、本来の生きるべき現実世界が崩壊しかけている点だろう。

 コンピューターの保管されている場所により、「〇〇サーバー」と名付けられたうちの1つが主人公の暮らす「舞浜サーバー」であり、内部では現実とは異なる平和な日常が過ぎていく。

 けれどもそれは時間制限のある日常で、西暦2022年の4月5日から8月31日までしか続かずにリセットされ、サーバーに暮らす人類は何度も同じ歳月を繰り返している。

 いわゆる「ループもの」ではあるけれど、いくらサーバー内の世界で足掻こうとも、コンピューターに格納されたデータに過ぎない人類は、リセットの宿命からは逃れられない。

 しかし、崩壊しかけた現実世界で活動する資格を得た主人公は、人類が血肉を伴う本来の姿へ戻るべく、ガルズオルムとの戦いに身を投じるのだった。


 『ゼーガペイン』は単純に世界を救うため、ある日を境にヒーローとなる物語でないのも印象的だ。

 そもそも主人公は人類復興のために戦っていたのだけれども、そのときの負傷から回復するために記憶を失っており、共に戦ったパートナーのことも忘れてしまう。

 新たなパートナーと組んだ主人公を別の不幸が襲うけれど、それにも負けることなく戦い続け、最後には本来の肉体を得て蘇る結末には胸が熱くなった。


 本作が今の映像技術からすれば、「ショボい」と感じるのは仕方がない。

 ただ、コンピューター内で作られた架空の世界というのは、現在でいうところのメタバースに相当する。

 さすがに人類をコンピューター内に退避させることは難しいけれど、肉体的な再現と同じように、精神を再現および保存する技術も将来、開発されるかもしれない。

 惑星間の移動にロケットを使わず、光の速さで精神を転送するなんてSFな夢物語も、だれかが考えて実現するかもしれないのが人類だ。

 本作が放映された2006年において、webが今のように発達すると予想した人は多くなかっただろう。

 それでも未来は現実の先にあることを、『ゼーガペイン』は教えてくれたような気がする。



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