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物語 bySTORY CAFE

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プードルの店員、クロとチョコが働くSTORY CAFE。ご提供している物語をまとめました。 カフェで本を読むように、ほっとひと息ついてもらえたら嬉しいです。 挿絵の勉強になったら…
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カフェ開店。コーヒーはございません。

コーヒーにまつわる物語を提供いたします ある町の片隅の路地の先に…STORY CAFEがある 店主はプードルの兄弟、クロ(男の子)とチョコ(女の子) ここのカフェ、普通のカフェに見えますが メニューにコーヒーが見当たりません あるのはコーヒーにまつわるストーリーだけ コーヒーのあるところに物語あり 美味しいコーヒーが一杯あったら、それだけで幸せになれる コーヒーが好きな人もコーヒーの苦手な人も こころがポッとする物語をご提供いたします 店主がいつでもあなたをお待

会社員ゆり子、カフェへ行く

ゆり子は今年の夏休みも海外旅行へ行こうと計画していた 1年に1度の海外旅行は、ここ5年ほど続けている 今年はフランス パリへ行きたい パリへ行ったら、何しよう ブーランジェリーで美味しいパンを買ったり、 ルーブル美術館やオランジュリー美術館にも行ってみたい 金曜日の仕事終わりに、そんなことを考えながら、駅へ向かった ところで、今日はどうしようか まっすぐ帰宅するのは味気ない デパートで洋服でもみて帰ろうかな? と歩いていると 銀紙通りの路地に置かれた小さな看板が目に

Un café s'il vous plaît

 パリのアパルトマンの階段はひんやりしていて、とても静か だから、誰かが階段を通ると、カツカツ、とかコツコツ、とか、カンカン、とか音がする フレンチラベンダーのウサーミは今日、とても悲しい出来事があった 悲しい気持ちのまま、階段を上るものだから、 革靴と階段が ごぞごぞごぞごぞ、 と音をたてる 上の階から、カロカロカロカロ、と音をたてながら、 パン・オ・ショコラのショコ太が下りてきて、 ウサーミとショコ太はすれ違った ショコ太が陽気に 「ボンジュール」とあいさつす

カフェ店員の1日bySTORY CAFE

マドラー駅から徒歩3分、銀紙通りの路地の先に STORY CAFE がある。 店員はプードルのきょうだい、クロとチョコ。兄がクロで妹がチョコ。 午後1時半頃、仕事始まり。 午後3時の開店を目指す。 クロはまず、店の入り口を掃除することからはじめる。チョコはトイレ掃除。 玄関とトイレは幸せを呼び寄せる大切な場所だから、お客様に幸せな気持ちになって帰ってもらうためにも、この2箇所の掃除はとても大切である。 終わったら、二人で店内の清掃。ハタキをかけ、テーブルを拭き、

この星のどこかにいると知っているだけでいい

風のたよりにきいた メークインのメー君が、フライパン地区の公園で、時々日向ぼっこしてるってことを ローズマリーのマリアは自宅のビーズクッションに寝転んで、スマートフォンとにらめっこしている SNSのおすすめに、メー君とおぼしき人物が出てきて、クリックしてしまった この投稿に写り込んでいるこの噴水は、もしかしたらあの公園の噴水かもしれない アプリのマップで写真を見比べてみる この呟きはメー君の呟きかもしれない この花木の投稿の仕方、この文章の呟き方、メー君だね

忘れるぐらい夢中にしてくれて

コーヒーにまつわる物語bySTORY CAFE ワレモコウのモ子は若者に大人気のフルーツぴゅーれらんどへ行くため、家事を前倒しにして、準備万端にするのに忙しい 一緒に暮らしている、ブラックベリーの黒子とラズベリーのきい子はまだ子どもだから、家事全般はモ子の役目で、正直支度は大変だけど、 二人がぴゅーれらんどを楽しむ姿を見るのはモ子にとっての楽しみでもあるのだ 前夜に洗濯を完了させ、いつもよりだいぶ早起きし、バタつきながらも、無事、開園前に到着できた ぴゅーれらんどで過

苦い水と甘い水、ホタルが好きなのはどちら

コーヒーにまつわる物語bySTORY CAFE まだ夜になると肌寒くも感じられる梅雨のころ。 ホタル見物を打ち出した温泉街へ山紫陽花の紅子はひとり、旅に出ていた。 宿は若者に人気のレトロな作りだった。年配のおじさま、おばさま方に言わせれば、老朽化して経営者の変わった冴えない旅館なのだけど。 紅子にとっては見るものすべて珍しく、宿の鍵が透明の細長い色のついた羊羹みたいなのを見て、テンションが上がるのだった。 大浴場のシャワーがレバーを押した時しか出ないこと以外に、特別