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声を出さずにニャーと鳴く #1 我が輩は梵太郎

この家に引っ越してきてから半年は経つだろうか。以前の家に比べたら部屋数は少なくなり、2/3程度の広さになったリビングにもようやく慣れてきた。友達とも離れ、走り回るスペースがなくても大きなストレスなく暮らしていられるのは、主が設置してくれたキャットタワーとソファのお陰かもしれない。自己紹介が遅れた。我が輩は梵太郎(ぼんたろう)、猫だ。物心ついた時から10数頭の猫と暮らしていたのだが、そこの主が身体を壊したとかで猫カフェに渡り、この家に辿り着いた。今はこうして、キャットタワーの最上部から窓の外を眺め、主たちが座っているソファで爪を研ぐのが日課だ。ダンボール製の爪研ぎもいくつか用意してくれているが、どうもしっくりこない。ダンボールなんかでは、我が輩の心は満たせないようだ。初めこそ怒られたものの、今は「梵太郎、毎日爪を研ぐなんて大変だな。このソファ、何ヶ月持つだろうな」と我が輩よりも主の方が楽しんでいるように見える。今の主は、これまでの主とは異なる精神を持っているようで少し心配になるが、まぁいい。甘えておこう。我が輩がやりたいことを許容してくれるのは、精神衛生上とても重要である。

さて、この物語は主の愚痴などを毎日聞かされる我が輩が、我が輩の視点からその話に対する意見を綴った物語である。我が輩の戯れ言と思ってくれてもいい。興味があれば、どうぞご自由に。

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